第48話 突如
「申し訳ありません。少し失礼しても宜しいでしょうか」
そんな中、少女の透き通るような声で現実へと引き戻される。
振り向くと、驚きのあまり「へぁ」と情けない声を上げてしまった。
存在感が服を来て歩いているかのような、無視できない神々しさを纏った少女。
「天城、生徒会長……どうして、ここに?」
俺達に突然、声を掛けてきたのはあの天城麗だった。
「すいません。実は貴方に用があったので、追いかけて来てしまいました。お取込み中なのも分かっていたのですが……大丈夫ですか、心香さん」
「え、は、あ、はい……支障ありません」
あまりに突然の事で上がり症が戻ってきてしまったのか、わたわたとした反応を見せる実葉。
と言うかやはり実葉の事も知っているのか、この生徒会長。どこまで知っているかは定かでないが……、やはりほとんどの事を見透かされてそうで恐ろしい。
俺達の無駄に青春オーラが出ていた空気の中であっても何の気遣いもなく声を掛けられる辺り、空気を読む気は更々ないようだが。……いや、良いけどね、別に。
「それでは参りましょうか。まずは駅前まで行って心香さんを送ってさしあげないと。ふふっ、太一さんも男の子なんですねぇ」
「…………」
そんな風に俺達の返事も聞かぬ内に天城はさっさと先を歩いていく。
今は学校敷地内の外だ。フォロワーの力がない以上、天城と居たところで俺に危険はないのだが……。
俺に用事? 一体どういうつもりだ?
そんな疑問も分からぬまま俺は実葉と一緒に天城についていくしかなかった。
※※※
俺たちはまず予定通り実葉を駅前まで送り、そこで実葉とは別れた。
別れ際に「もう少し円城瓦さんを独り占めしていたかったですけれど、貴方はまだ戦っているのですから仕方のない事ですね。頑張ってください」と実葉は言い残していた。照れた。
「それで、俺に用事ってなんだ? 今更、どうするつもりなんだ?」
天城と二人きりになった後でそう問い掛ける。
「いえ、ちょっと二人きりでお話したい事がありまして」
「交渉ならもう終わった筈だろ」
「そういう事でもありません。もう条件は整っておりますから」
そんな風に余裕を見せる天城。実際、現状では天城のフォロワーは半端ない数字になってそうだ。対策を練らなければ麗佳と協力したところで一蹴されるのがオチだ。
「ですが、私は個人的に貴方に興味があるのですよ。だからこうして会いに来た。いけませんか?」
「お前が? 俺に?」
何を言っているのか全く分からなかった。
例えば過去、実葉と同じような接点がこいつにも合ったのだろうか。
いや、こいつは中等部時代から既に雲の上の存在だった。こいつと何かしらあれば流石の俺も忘れはしないだろう。
では何だろうか。現状、それは全く思いつかなった。
「それでは落ち着ける場所……、あそこのファミレスなんてのはどうでしょうか」
天城は近くにあった某チェーン展開しているファミレスを指さした。
まあ落ち着いて話のできる場所と言えば、妥当なところか。
「……まあ、少しだけなら構わない」
俺は仕方なく了承する。と言うより了承せざるを得ない空気を既に作られていた。
そういう流れに乗せる巧みさに屈してしまったと言い換えても良い。
「それは重畳です。では、家でお待ちの乃雪さんにご連絡を。それとも詩羽さんと、この後ご予定はありましたか?」
「……お前はもうツッコむ気すら失せるな」
何で知っているのだろうか、とかもうこいつには詮無き事だ。
それに今日は元々、実行委員で遅くなる事を乃雪に伝えている。それに伴った麗佳との話し合いは明日、改めて行う予定だった。
「それでは参りましょう」
先程と同じく先を歩く天城。俺は乃雪に追加の連絡を入れつつ、溜息を吐いたのだった。




