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第43話 途中経過


 少しだけ、ほんの少しだけだけど乃雪と、そして麗佳のお陰で前向きになれた俺はすぐさま行動を開始する。


 と言うよりも、行動をせざるを得なくなった。


「『グループ』からの呼び出し、か……」


 昼休み。人気のない校舎裏で俺は溜息交じりに事実を口に出す。


 炎動光輝を倒したのが昨日の事で、今日にはもう俺は『グループ』に目を付けられていた。


 まあ当然と言えば当然だ。脱落したと言え炎動光輝は俺が参加者だと知っているし、その情報を『グループ』に流さない訳がない。それに諦めの悪い女である姫崎もいる。実葉に働きかけて俺への復讐を企てていた事から考えるに、俺の状況が悪くなるような事は進んでやってくるだろう。


 つまり、俺は既に『グループ』との全面抗争が避けられない状態にあった。


 また、先の戦いによって生まれた悪影響はこれだけではない。


「まさか私を通して、円城瓦君への呼び出しが掛かるなんてね」

 嘆息しつつ、麗佳がそう返す。


 あの日、麗佳は視聴覚室に向かう途中で、どうやら視聴覚室から逃げ出していた姫崎に姿を目撃されていたらしい。


 そして、麗佳を通して『グループ』からの呼び出しが俺へとかかった。これは『グループ』側から見て俺と麗佳が協力者である事がバレた事に他ならない。


 これは恐れていた事態の一つだ。学園中の嫌われ者である俺と、麗佳が知り合いである事がバレるのはあまりよくない。下手を打てば麗佳のフォロワーが下がりかねないからだ。


「どうだ? 今のところ、フォロワーに変化はあるか?」

 俺の質問に麗佳はかぶりを振る。



「そうか。まだそういったうわさは広がりきっていないらしいな」

 こうなった以上、『グループ』側は麗佳のフォロワーを下げる為にこの事実を噂として流す可能性は高い。


 芸能活動を休止中の麗佳にそんな噂が流れれば、下手な誤解をするものがいてもおかしくはない。そうなれば麗佳の人気が下がってもおかしくはないだろう。


「私が円城瓦君と個人的に親しくしていたとして、何で人気が下がるのかはあまりピンと来ないけれど……」


「前にも言ったが、うんこを突くアイドルの評判が下がるのは当然で――――」


「はいはい、以前も言ってたから、分かっているわよ。……はぁ、乃雪ちゃんのお陰で少しは前向きになったと思ったのにこれだもんね」

 麗佳には既に先の一件と共に、心境の変化を報告してある。勿論、お礼と一緒に。


 とは言え、俺の自己肯定感がどれだけ改善されようとも、俺が学園中の嫌われ者である事は変わりない。事実は事実として受け止めなければこのバトルロイヤルには勝利できないだろう。


「まぁ、私と貴方でこれからはもう少し表立って行動できると思って前向きに捉えましょうよ。もうバトルロイヤルも終盤に近いらしいし」


 昨日、以前と同じ神様が夢に出てきた。麗佳も同じ夢を見ていたそうで、これはバトルロイヤルにおける正式な事実として捉えていいのだろう。



「皆々の働きによって私への信仰は溜まり続けている。この力があれば、私も存在を守る事ができる。ひとまずそれに感謝を述べたい」


 以前と同じ真っ白でだだっ広い空間の中、黒々としたナニカが頭を下げるのが何故か分かった。


 しかし、以前と違うのは黒々としたナニカの中に光りが帯びていて、それが神様の持つ力の一端が漏れ出たものであると、俺はなぜか知覚できていた。


 神様は言葉を続ける。


「また、皆々を呼び出したのは神事の途中経過を報告する為だ。この神事の参加者は既におよそ九割が脱落していて、残りは十一名となった。今後の神事にも期待している」


 夢にも関わらずこの内容を俺はすぐにでも思い返す事ができる。麗佳も同じ意見であるらしく、確かな情報だと捉えて問題ないのだろう。


 先の夢の内容を踏まえ、俺は改めて情報を整理する。


「――――十一名か……、俺とお前で二名だとして残りが九名。しかも『グループ』がいる以上、残りの参加者殆どがそいつらだと見て間違いないだろうな」


 ネットを介して情報の収集を行っていた乃雪によれば、『グループ』の残り連中は十名前後。炎動含め幾らかは既に脱落しているだろうが現在の情報と合わせても、それほど間違ってはいないだろう。


 さらに乃雪は連中のリストアップもほぼ済ませており、彼女の弁によれば元より存在が発覚していた冷泉玲奈以上のフォロワーを持ちそうな奴はいないそうだ。


 冷泉玲奈相手にしても、麗佳のフォロワーには及ばないと既に精査は済ませている。



 つまり、『グループ』に勝利すれば必然、俺らの勝利がほぼ確定する訳だ。


 …………いや、まあ懸念事項が無い訳でもないのだが。とは言え、これは考えるだけ無駄だ。



「けれど、このタイミングで呼び出しね。まさか昼休み中に戦闘を起こすとも思えないけれど……」

 昼休みである現在、俺と麗佳の二人は『グループ』とやらに視聴覚室へと呼び出されている。


 現在、視聴覚室近辺の人払いは済ませているらしいが、学園中には多くの生徒がいる。麗佳や冷泉と言ったレベルの高いフォロワーの連中が戦闘を起こせばその騒ぎは確実に外へと漏れ出る。


 複数人の仲間がいる事から、やけは起こさないとは思うが……。油断はできない。


 とは言え、今日のところは交渉がメインになるのだろう。恐らくは何らかの交換条件を提示してくる筈だ。


 だが、こちらは譲る気はない。何があっても。



 その意思を確認しつつ、俺と麗佳は視聴覚室へと向かう(勿論、麗佳とは一緒に歩かず、少し距離を取ってだが)。


 


 視聴覚室の近くには人気がなかった。昼休みである事も勿論だが、『グループ』が人払いを済ませているというのは嘘ではないのだろう。


 俺は距離を取っていた麗佳と合流して、警戒しつつ視聴覚室の扉を開けた。



 視聴覚室の中を覗いた瞬間、俺は目を疑った。



「……あ、……がぁ、ま、まさか、そんな」

 視聴覚室にいた少女の一人が、声にならない悲鳴を上げながらやがて気を失った。


 気を失ったのは色素の薄い髪色をしたショートヘアの少女――間違いない。冷泉玲奈だ。



 見れば冷泉玲奈の周囲には複数人の男女が気を失っていた。一……二、…………合計で八人か。


 そして、冷泉玲奈達を気絶させた者が、視聴覚室の中でただ一人立っていた。


 どうやら考えても仕方がなかった筈の懸念事項が、現実となってしまったようだった。


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