第13話 見敵
最新話の更新と共に第1話及び第10話について若干の追加編集を行っています。
とは言え、描写的には大して変わってないので、読み返すとかはしなくても大丈夫です(多分)
一回で完璧に書ければ良いけど、中々難しい。ホンマすいませんけど、宜しくお願い致します。
「じゃあ、行くわよ」
一言口にした麗佳は先に更衣室のドアを開け周囲を伺うと、そのまま付いてこいとのジェスチャー。
それに従いそのまま更衣室から脱出する事のできた俺。
ひとまず事なきを得た事にほっと胸を撫で下ろす――――暇もなく、麗佳の背中を追う。
麗佳はどこに向かっているのか、スタスタと歩き続ける。
とてもじゃないが、「どこに向かっているのか」などと聞く気にはなれない。いや、普通に怖いし。なんだったら今の麗佳の戦闘力なら俺、瞬殺できるだろうし。逆らえない。
そして、辿り着いた先は校舎から離れた先にあるクラブ棟――通称、文化部棟だった。
ここは主に文化部の部室が集まっており、今は人気が少ない。
……俺、すっごい悪い予感がビンビンに働いているんですけど。
そんな俺の胸中など他所に麗佳は文化部の四階までスタスタと登る。
そして、
「あーもう! ムカつくんじゃい!!!!!!!!」
という裂帛の叫びと共に後ろ回し蹴りを放つ。
その威力は最早笑うしかないとでも形容すべき、信じられないものだった。
事実のみを淡々と述べると足先にあった部室が上下に”割れた”。
……いや、威力おかしいんじゃない? 神話かよ、これ。まあ神の力借りてる時点でそれも正しいが、人間大の、それも少女が放つそれとしては信じられないものだった。
そんな人間兵器もかくやと形容すべき存在となった麗佳は一言、
「……ごめんなさい。やっちゃった」
「いや!! やっちゃったじゃねぇけど!!!!!?????」
何でお前「ちょっとやらかした」程度の態度なんだよ! なに舌出してウィンクとかかましてんだよ、殺すぞ!!!
今のお前がそんなぶりっ子感出したところで何にも可愛くないわ! どっちかって言うと抱いた感情は恐怖だわ!! だってこいつもう爆撃機が可愛らしい皮を被っているみたいなもんだろ、これ! 生物界で擬態って言われてるそれだわ! 油断させて殺しに来る新手のモンスターにしか見えねぇぞ!!!
「そのね、円城瓦君。魔が差したの、ホント。つい、ね」
「ついのレベルでやるにしてはスケールがおかしいだろ!!」
ノリで人類の災厄クラスの状況起こしてんじゃねぇぞ!!
そして、周囲に物凄い音が響き渡る。そりゃ、まあ建物一つが真っ二つに割られでもしたら、ただじゃ済まない音がなるだろう。
「な、何が起こったぁ!?」
騒ぎを聞きつけたのか、どこからともなく人が集まってくる。
「あーもう! ひとまず隠れるぞ!!」
俺達は姿を発見される前にたまたま鍵の空いていた部室へと飛び込む。
そして、気配から察するにさっきまで俺達のいた場所には幾人かの生徒や教師が集まっているようだった。
……これ、マジでどうなるの。と俺が心配したの束の間、
「……さっきの音、大体ここから聞こえていたはずだが。…………特におかしなところはない、な」
と集まってきていたうちの一人が呟く。その後、何事か会話が交わされた後、徐々に気配は消えていった。
どうやら神様による”修復”が行われた事で、事なきを得たらしい。実にデタラメだな、ホント。
「あー、びっくりしたわ。危なかったわね」
たはは、とバツの悪そうな表情を浮かべる麗佳。
……こいつ、さっき自分の事を『学校ではクールで颯爽とした格好良い女の子』とか言ってたよな? よくそんなとんでもウソ付けたな、ぶっ飛ばすぞ。
「……まぁひとまず事なきを得たし、さっきの事もある。今の失態は大目に見るよ」
「さっきの?」
「更衣し――――なんでもない」
口が滑ったが時すでに遅し。
「やっぱ……見てたんだ。ホント、……スケベ」
麗佳はジト目でこちらを見遣る。
いや、結構頑張って視線外したよ!? ……まぁ、麗佳からしてみれば、見た時点で同罪だろうが。
「…………、どこまで?」
「キャミソール」
「……まあ元々は私の失態だしね。そこまでなら……まあ」
そう口にする麗佳は「……でもなー」と懊悩している様子だった。それでもこちらに怒りをぶつけてくる様子はない。
……キレられたらその理不尽に応戦しようかとも思っていたが、話せる奴だ。少なくとも暴力系ヒロインじゃなくて良かった。そしたら多分死ぬ。絶対死ぬ。
「まぁ、さっきの事なんだけど」
未だほんのりと頬の赤い麗佳に対して、俺は話を切り出す。
一方の麗佳もこちらに向き直り、話の続きを待つ。どうやら俺の行いは許されたらしい。
「さっきの奴は、知り合いか?」
その質問に麗佳は少しだけ迷いつつも、最後には頷いた。
「知り合いって言うと語弊はあるかもだけど、まあ、顔見知りってところかしら?」
「それ、知り合いと何が違うんだよ」
「……えっと、好感度?」
「まあ言いたい事は分かるけど。……それで? 何であんなに嫌われてるんだ? みんな大好き麗佳詩羽なのに」
こいつにファンがいっぱいいる事はフォロワーからして間違いない。アンチなんてそれこそ人気の裏返しに生じる、ごくごく一部の変わり者くらいだろう。
それがあいつ……なのか?
そこまで考えて少し違和感を覚える。
リア充である事の証明とも言うべきあの更衣室を使用している事に加え、舞島は数人の女子を引き連れていたばかりか、雰囲気的にきっとグループの中心。きっとリア充の中でもさらに華やかな奴なのだろう。
俺の経験上、そう言う人気者タイプは人気であるというだけで忌避するような捻た視点は持たない。むしろそれに乗っかるのが自然なように思う。
いや、人気に嫉妬しているならあるいは……? どうだろうか。麗佳は世間での有名人だが、舞島はきっと校内での有名人に留まる。
嫉妬は同グループに存在する事で成立するのが多い。そう考えれば、活躍の場が違っている麗佳を舞島が妬むだろうか。
「もしかしてお前、あいつになんかした? 靴隠したとか、歩くたびに足引っ掛けて転ばせたとか、わざと聞こえるように陰口言うとか、そういう奴」
「やるわけないでしょ! そういう生々しい虐めのレパートリーがよくすんなりと出るわよね」
「まあ実体験だからなぁ」
「……自虐レパートリーには事欠かないわね」
「人間、ネタにできると思えば以外と何されても我慢できんだよ」
「そういう後ろ向きに前向きなのは見習いたいところよね」
存外、麗佳は俺の哀しい発言を評価してるらしかった。
まあウケたなら良かったか。
「じゃあなんであんなに嫌われてんだ? いや、普段からそう言う奴なのか」
別グループに片っ端から喧嘩売る奴ってのは、たまにいる。
あいつもその類なのだろうか。
「うーん、どうなのかな。前、友達に聞いたけど、少し生意気なところはあっても、基本先輩達からの評判は良いらしいわよ。ダンス部らしいけど、すっごく上手いし、努力家だし、人間関係も良好なんですって」
「……お前、友達いるのか?」
「そこは引っかからなくて良い! あれよ! 教室内では私だってちょいちょい喋る事くらいあるわよ!」
「マジかよ、すげぇじゃん」
「いや、感心されてもそれはそれで困るんですけど……」
「だって俺、クラスメイトに名前呼ばれた事すらないぞ。『おい』とかでしか呼ばれないから、そういうあだ名が付いてんのかと一時期誤解してたわ」
「……私、あんたの前で『ぼっち』とか言うの心痛くなってくるんですけど。もう少し一般的なぼっちレベルに合わせたエピソードくれないかしら」
「ぼっちレベルとかよく分からない謎基準作るのやめろ」
まあ話を戻して。
「舞島って奴が先輩からも基本嫌われていないとか、いよいよお前がなんかやった説が濃厚になってくるな」
「えぇ!? でも、私、ウソとか吐いてないわよ! ホントに知らないもの」
「それは分かってるけどさ」
そうは言っても悪意無しに人間関係こじれる事なんて、そう少なくない。
さらにどちらかが能力が高く、人気者ならなおさらだ。
光があれば影ができるように――――往々にしてそういう事は起こり得る。
まあ俺かしたら温厚っぽいこいつが、あんなにもわかりやすくキレた事の方が意外だったけど。
その原因らしい事については――――まあ触れない方が良いか。
俺はわかりやすく地雷を踏むほどアホじゃないし、それに――――
触れられたくない事はやはり理由なしには触れられたくない。
俺とこいつはどうやらそういう傷を持つ者同士であるらしい。それ故、踏み込むのは止めとこう。
「それにしても」
と麗佳は話のトーンを変えて、切り出す。
「今までは私もただただいちゃもん付けられるばっかりだったけど、……ようやく少しだけ溜飲を下げられるかも知れないわ」
麗佳は不敵な笑みを見せる。
次に麗佳が言う事を俺は分かっていた。
神様がいるとして、そいつが人の注目度を集める為に”神事”を開いているとするならば――――
その参加者として、人気者を外すとはとても思えなかった。
その想像通り、麗佳は言う。
「さっきの舞島ちゃん――――肩に幾何学模様があったわ。あの娘、バトルロイヤルの参加者よ」




