閑話・真面目な聖職者と女魔族
お久しぶりです。
かなり遅い更新になって申し訳ないです。
これは、ドルがまだ駆け出しの神父だった頃の話。
まだ魔族との戦争中。
魔族たちはいろいろな街や村を襲い、たくさんのけが人を出していた。
治癒魔法を使える神父たちがそこへ遠征に行くことが決まった。
「神父・ドル。遠征へ行くことを命じる」
「承知しました」
ドルもその一人。ある村へ遠征に行くことになった。
ドルは比較的小さな村へ行くことになっていたため、1人だけで村へ向かった。魔族が既に退いている、という理由も含めて。
村へドルがついたとき、村はひどい状態だった。
血が飛び散る地面に、倒れる人々。初めて見たときは思わず口元を抑えたほどだった。
「せめてまだ助かる人たちを手当しなければ・・・」
ドルは気を取り直し、手遅れの人はもう救えないが。まだ息のある人々の手当に励んだ。
ドルのおかげで数人は回復した。村として機能する人数ではなかったが、これからまた諦めずに頑張るそうだ。
「ふぅ、・・・」
やっと一息つけたドル。
夜の散歩に出かけたのは、ただの気まぐれか、それとも必然なのか。
「う、あ、ぅ・・・」
か細い声が静かな森に響いた。
きょろきょろとあたりを見渡すドル。
(まさか、まだ村人が・・・!?)
ドルは慌ててそこらじゅうの草木のあいまを探す。
「ッ!」
だが、そこで見つけたのは―――
「く、うっ」
人間ではなく、角の生えた魔族だった。
「ま、ま、ぞく・・・どうして、こんなところに・・・」
ドルは戸惑うが、魔族は瀕死の状態。襲われることは万一にもないだろう。
(どうしたら・・・)
村人のことを思い浮かべる。
魔族に襲われた人々の顔が浮かぶ。
「っ・・・」
殺す、べきなのか。
ドルの中で、何かが黒くうずめいた気がした。
1
「ん、うぅ」
小さなうなり声を上げて目を覚ましたのは、地面に横たわっていた女性。
「わた、しは・・・」
そしてこの前の記憶を思い出し、はっと体を起こした。
「っ、い、たい・・・」
だが、体に走った激痛。怪我が完治していないのだ。
「これは・・・?」
だが、自分ではやった記憶がない包帯やらが巻かれている。
首をかしげていると。
「おき、ましたか・・・?」
声をかけられ振り返る。
それが人間の男だとわかると、彼女は臨戦態勢をとろうとする。
が。
「いっ」
痛みがまた体をこらしめた。
「だ、大丈夫ですか!? て、敵意は、あ、ありません。その包帯を巻いたのも私です。信じてください」
彼女は疑いながらも渋々座った。
「私はドル。教会で、神父をしています」
「・・・ポムだ。私が魔族であることはわかっているのに、どうして助けた」
ポム、と名乗ったのは彼女。ドルと名乗ったのは勿論手当をした男。
「・・・助けるか、迷いました。ですが、魔族も人間と同じ、生物です。命は、大切にしなけばなりません」
「――――」
ドルの言葉に、ポムは信じるかどうか迷っていた。
「取りあえず。怪我が治るまではこの洞窟で休んで下さい」
そう言われてあたりを見回すと、確かに洞窟だった。森の中だろう。
「村の人にだけは見つからないようにしてください。彼らはきっと、貴方をみつけたら―――」
言葉を濁すドル。
ポムは理解しているといったように頷いた。
「わかっている。だが、お前にも警戒を解いてはいない。それを忘れるな」
キッと睨みつけるポム。
ドルは曖昧に頷いた。
2
ドルがポムの看病をしてかなりの時間がたった。
ポムの深かった傷も、治りかけている。
その頃には2人も警戒を解き合っていた。
そんなときだった。教会から戻って来いと命令が来たのだ。
「すみません。貴方の様子を、もう見に来ることはできない」
「・・・いや、いい。元々、関わることのなかった私たちだ」
ポムは、あっさりとしたようにいった。
その様子に、ドルは少なからず傷ついた。
どうして傷ついたのかわからずに。
「では、お気をつけて」
「そっちもな」
それが最後の会話かと思われた。
だが、村から帰るとき、思わぬ襲撃があったのだ。
魔族はたった一人。だが、村人数人を守りながらドルが魔族を倒すことは不可能だった。
「早く逃げてください! 避難を!」
ドルは村人らに声をかけるが、彼らは恐怖から動けない。おそらく、襲われた時の事がフラッシュバックしているのだ。
「ほら、はやくっ」
神父様っ、と村人の声が聞こえた気がした。
何かが、背中や首にまとわりつく感覚。
「え・・・」
振り向いた先にいたのは、血を流した魔族。その血が、ドルの背にはべっとりとまとわりついていた。
けれど、血を流した魔族は襲ってきた魔族ではなく―――
「ポムさん!!」
慌てて彼女を抱えるドル。
「どうしてここに・・・」
そういったところで、相手の魔族も倒れた。切り傷がみれることから、ポムが傷を負わしたのだろう。
「早く手当をしないとっ」
ドルが動こうとしたところで、ポムが引き止める。
「助けてくれて、ありがとう・・・」
かすれた声で言われ、ドルは何と声をかけていいかわからなかった。
助かると信じたかったのだ。
「つたえ、られて、良かった。それだけ、心、残りだった」
弱弱しく笑った彼女。
そんな彼女の頬に、ドルの涙が落ちた。
「ポムさん・・・」
そこで息を引き取ったのを、ドルは確認した。
魔族が決して悪いヤツだけだとは限らない。
ドルが学んだことが、この後ロマを救う事となったことは、言うまでもないだろう。




