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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~迷子は魔族のお姫様~
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火の中の孤児院

 長くなっています。

 一瞬、ツミナは、呆然と立ち尽くした。


「まさか、こんな、っ―――」


 絶句。


 目に映るのは、


 火に包まれる建物。


 たくさんの野次馬。


 周りには聖職者の制服を着た神官たち。達成感を見せる表情。



(こんな、こんな横暴なことがっ! まかり通ってなるものかッ!!)



 歯を食いしばったツミナは、火の中へ―――。



 数日前。


 教会本部では、会議が開かれていた。


「魔族の小娘はまだ見つからんのか!」

「それよりも問題は教会の状態だ!」

「いや、勇者様の機嫌を損ねたことである!」

「全部に決まっておるだろう!」


 騒ぐ人々。全員聖職者だ。


「魔族について報告がある」


 ひときわ大きな声。

 全員がその声の人物に振り返った。


「どこだ!」

「居場所はつかめたのか!?」

「対処はどうなっている!?」


 そんな言葉に応えた神官は――


「門近くの、孤児院と並立している教会だ」


 神官長・パルマ、その人だった。



 ツミナは路地を歩く。


 いつかもこんな事があった。と、思い出すツミナ。


 カランカラン


 ドアを開けると、ドアについていた鈴が鳴った。


 中には顔を隠した人々が席に座ったり受付で話したりしている。


 リンデル王国で見た光景だ。王女の居場所を突き止める為に王国で訪れた場所と同じ。


 情報屋。


 ツミナは開いている受付に向かった。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」

「情報をもらいたい」

「何についての情報でしょうか」


「少女誘拐事件について」


 その言葉に、店内の様子が一変。凍り付いたような空気が漂う。


「少々お待ちください」


 受付係は一礼してから奥に下がった。

 ツミナはその間受付を離れずにその場で待つ。



 奥では。


「あ、オーナーですか。はい、はい。それが・・・」


 コールをかけた受付係。かけた先はオーナーだ。


『どうした? 非常事態以外はかけんな、っていってるだろ?』

「その非常事態ですよ。最近起きている少女を誘拐している情報が欲しいってやつがいてですね・・・」

『・・・あれは無理だろ。断れ。()()()側からストップをかけられているからな』

「わかりました。お断りします」


 そして受付係がコールを斬ろうとした瞬間・・・


「そこを何とかお願いしたい」


 声が響いた。

 受付係が驚いて振り返る。


「こ、ここは関係者以外、立ち入り禁止です。今すぐ出てください」

「今コールをかけているのはオーナー、だったかな?」


 それを聞いて受付係が焦る。


「い、いつから聞いて・・・」

「最初からだ」

「そんな気配はっ」


 なかった、と言いかけて、受付係が口をつぐむ。

 ツミナが殺気で威圧していたからだ。


「オーナーとのコール、繋がせてもらっても?」


 受付係は威圧されながらも必死に話す。


「お、オーナ、に、きょ、かを・・・」


 途切れ途切れになっているが、そう告げた受付係にツミナは威圧を解く。


「うっ・・・」

『おい、どうした!?』

「お、オーナー、少女、誘拐についての情報を欲しいというお客様、が、オーナーにコールをつないでほしいと・・・」


 途切れ途切れに冷や汗をかきながら告げた受付係の言葉に、オーナーは事態を察したのか許可を出す。


『わかった。つなげ』

「許可が、とれました」

「ありがとう」


 ツミナは受付係とオーナーのコールを繋ぐ魔力に干渉する。


「どうも、少女誘拐について情報をいただきたいのですが」

『悪いが、それはできねぇ。事情ってもんがあるからな。それに、従業員に乱暴するやつには情報は売れない』

「・・・少し威圧しただけなのですがね」


 ツミナは少しため息をついてから続けた。


「オーナーさん? お久しぶりでよろしいですよね」

『は? なにを・・・』

「王国での王女誘拐の件ではお世話になりました」


 微笑んでゆっくり告げれば、相手が息をのんだのが分かった。


『あんた、あの時の客か・・・』

「ええ。・・・情報、わたしていただきたい。受付係の方に無理強いするのは忍びないですし」

『・・・クソが。情報屋を脅す客なんて聞いた事ねぇぞ』

「ふふ、ありがとうございます」

『ほめてねぇ』


 オーナーはぽつりと情報を話し出す。


『少女誘拐の首謀者は、いや、首謀団体は教会本部だ』

「・・・・・・」


 内心驚くツミナだが、声には出さない。


『教会本部は奴隷商会と繋がっている。わざわざ奴隷をさらわせて、買っているんだ』


 ぐ、と握っていた拳に力が入る。爪が食い込む。


『情報はここまでだ。これ以上はわからない』

「・・・そうか。感謝する」


 ツミナは受付係に金を渡す。


「10万イームだ。足りるか?」

『あ、ああ』


 オーナーが額を聞いて驚く。受付係もだ。


「では、今回も世話になった」


 ツミナが情報屋を去ったあと。


「じゅ、じゅ、十万、イー、ム・・・」

『ほんと、あいつ何モンだよ』


 驚きすぎてあきれた声を出すオーナーと、震える手で金を支える受付係がいた。



 情報屋へ行った後、いつものように孤児院へ向かったツミナ。

 ざわざわと孤児院の近くに人が集まっているのを見て何事だと思う

 そして、見たのは。


「なっ!!」


 それらをみて、驚愕をあらわにするツミナ。


「どうしてっ・・・」


 近くに教会の聖職者たちがいて、教会には火が。

 

 情報を得たツミナからすると聖職者たちが火をつけたようにしか見えない。


「中の子供や神父様たち、もう助からないかも・・・」

「おい! 縁起でもないこと言うな!」


 野次馬の会話が聞こえる。


 つまり、皆は火の中。


「っ!」


 ツミナは飛び出す。

 野次馬をかき分け、聖職者たちを振り切って中へ入った。


「お、おいっ」

「あいつ、中にはいったぞ!?」

「死ぬぞ!」

「どういうつもりなんだ!」


 ざわざわと野次馬が騒ぐ。


 聖職者たちは青ざめていた。

 勇者が火の中へ。もし死んだりしたら物理的に首がとぶ。生きていても自分たちの悪事がばれる可能性がある。



 どちらにしろ最悪の事態だ。




「皆さーん! いたら返事をしてください!」


 ツミナが火の中で叫ぶ。少しせき込んでいる。

 結界を張っているとはいえ、火の中に入っているのはつらい。


「ランさんっ、神父様! シスター・ミリア! ロマさん!」


 皆の名を呼ぶが返事はない。


「いたら返事を、っ、ゲホッ」


 せき込むツミナ。

 あまり長くいるのは得策ではない。

 皆も救出しないと。


 バンっ、と扉を開ける。


「どこですか!?」


 寝室のドアを開けたところで、皆を見つける。


「大丈夫ですか!?」

「つ、ツミナ様!」


 ミリアがツミナに応える。


 そこではロマが結界を張ってねばっていた。火から皆を守っているのだ。


「ロマさん、大丈夫ですか!?」


 ツミナがロマに駆け寄る。


 ロマは汗を流し、顔色は青。魔力の使いすぎだ。

 そこまでして皆を守ってくれていたのだ。


「よく持ちこたえてくれました。ここからは私が結界を張ります」


 ツミナがロマの頭に手を乗せる。ポンポン、と軽く。


 ロマは安心したように意識を失った。


「シスター・ミリア、皆さんの状態は?」

「子供たちはロマさんのおかげで無事です。ですが、神父様が、皆を誘導する間に煙を吸い込んだようで・・・」


 ミリアがドルを見る。

 ドルは壁にもたれかかりぐったりとしている。


「子供たちは動けますね。シスター・ミリア、貴方もよく持ちこたえてくれましたね。感謝します」

「そんな、助けに来てくださり、私の方こそ感謝しかありません」


 ぺこりと頭を下げるミリア。


 子供たちは泣いている子もいる。ランがなだめているが。


「とにかくここから出ましょう。ランさん、子供たちを外まで連れていってください。結界を張ってあります。火に焼かれることはありません。シスター・ミリア、ロマさんをお願いできますか」

「ああ、わかった」

「はい。任せてください」


 ツミナの指示に頷く2人。


「私は神父様を背負って後ろを行きます」

「お願いします」


 ミリアが頭を下げた。

 腕の中にはロマがいる。


 ツミナはドルを背負い、皆の後ろをついていく。


(教会本部・・・罪のない子供たちや神父様、シスターまで・・・腐っている。もう許すことはできない)


 冷酷な表情と無感情のような眼。

 ツミナが教会本部に鉄槌を下すときは近い。

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