勇者と魔族のお買い物 3
「さぁ、反撃しよう」
冷酷に言ってのけたツミナに、聖職者たちは慌てる。
「おっ、お待ちを! ま、まさか勇者様だとは知らず・・・」
「知らない? 前に教会本部に赴いたではないか。あぁ、顔を見せる間もなく帰ったな。実に失礼な態度だったものだから」
くつくつと笑うツミナ。
「は、はっ。申し訳ありませんでした!」
頭をさげる聖職者たち。
「この無礼、どうしてくれようか」
「そ、それは・・・ど、どうかご慈悲を・・・」
聖職者が頭を深く、深く下げる。
「慈悲、慈悲ね。前に、次はないと言った記憶があったが・・・記憶違いだったかな?」
「そ、そのようなことは・・・」
聖職者たちは冷や汗が止まらない。勇者に無礼を働いたとなれば物理的に首が飛ぶ可能性もあるのだ。
「どんな約束だったかな・・・あ、そうそう。教会本部をつぶす、って約束だった。さっそく連れて行ってくれるかい?」
「っ、それは・・・それは・・・」
聖職者たちは言葉に詰まる。
するとツミナはつかつかと聖職者に近寄る。
そして、耳元で囁く。
「今度こそ、次はないよ。次は〖聖剣〗で皆さんもろとも斬るから」
ぞっとするような声。
ツミナはそれだけ言い残してでは、といって去っていった。
残された聖職者は、力尽きたように膝をついた。
1
「ふぅ、何とかやり過ごせたか」
「・・・そう、だな」
孤児院に戻ってロマをおろすツミナ。
実際、分が悪かったのはツミナ達の方だ。ロマの顔を一目でも見られたら、魔族に通じた者として処刑されてもおかしくはない。
勇者の権力でごり押しできたからよかったが。
「当分は孤児院から出ない方がいいでしょう」
「・・・ああ、わかった」
ロマはツミナの言葉に頷く。
そして、孤児院の扉を開ける直前。
「おっ、おい!」
ロマがツミナを呼び止める。
「こ、今回のこと、か、感謝するっ」
必死に引き絞った声。うつむいたロマの顔は見えないが、耳が赤くなっているのがわかった。
きっと魔族を殺したツミナのことを許してはいないが、今回世話になったからには礼を言わなければ、と必死に考えた結果なのだろう。
「・・・いえ。当然のことをしただけです。それに、これは私の、叶わぬ罪滅ぼしですから―――」
先に許さなくて良い、という意味を込めて『叶わぬ』罪滅ぼしと告げるツミナ。
ロマはその言葉に、何も、返さなかった。
いや、返せなかった。
2
中に入ったツミナは、先ほど起こったことをドルやミリアに告げた。
やはり、この教会の方へも教会本部から神官がやってきたらしい。
「すみません。私がおつかいを頼んだばかりに・・・」
「いいえ、そのようなことは。気を抜いた私の責任です。・・・ですが、少しの間外出は控えさせてもらう必要があるかと」
「はい・・・わかっています」
うなだれるドル。
ツミナは自分にも責任がある、と言うが、ドルは納得しなかった。
「教会本部から何かされたときは言ってください。トーリさんとのことで、忠告はしてありますから」
ツミナはドルたちにそれだけ言ってから孤児院を去った。
ロマは、ずっと浮かない顔のままだった。
3
夜。
今は皆と一緒に大部屋で寝ているロマ。
「・・・・・・」
一人、起き上がって開いている窓のふちに腰かける。
(『叶わぬ』、罪滅ぼし・・・)
ずっと引っかかっていたツミナの、勇者の言葉。
外から吹いてくる風が、ロマの心を揺るがせる。
(勇者は、何を思って、我らを滅ぼしたのだろうか――――)
罪滅ぼし。
罪。
ツミナは、勇者は魔族を滅ぼしたことを、『罪』だと考えていたのだろうか――――。




