勇者と魔族のお買い物 2
聖職者からツミナとロマが逃げている時。
聖職者たちは魔族であるロマを追っていた。
「魔族が出た! 全員、必ず捕らえろ!!」
「「「はっ!」」」
神官やら神父やらがそこには集まっており、命令を下され捜索を開始する。
ダダダダダ・・・
走り去っていく音。
狭い路地裏に隠れていたツミナとロマはほっと息をはく。
「とりあえずどこかに隠れましょう。孤児院へ戻るのは逆に危険かもしれない」
「そうだな」
ロマが頷く。
「ちょっと失礼」
ツミナは自分が来ていたローブをロマに羽織らせ、ロマを抱き上げる。
ロマの身長ではローブを引きずってしまうからだ。
「なっ、なにをする!」
「少しの間我慢してください。私が泊まっている宿まで行きます」
ツミナは自分が泊まっている宿へと歩を進めた。
1
「ありゃ、お客さん、どうしたんだ?」
「知り合いの子供と街を歩いていたんだが、少し具合が悪くなってしまったようです。軽い貧血なので休ませておいたら治るでしょう。私の部屋で休ませます。できれば静かにしていただきたいのです。誰かが来ても通さないようにしていただけますか?」
「あ、ああ。わかりやした」
宿の店主は心配そうにロマを見たが、静かに、という言葉を聞いて何も言わなくなった。
バタン
ツミナが自分の部屋のドアを閉め、ロマをおろす。
「追われているとはいえ、無礼者め」
「緊急時だったので。すみません」
別にロマも本気で怒っている訳ではないのだ。ツミナも軽く謝罪する。
ロマはただ、恥ずかしがっているのだ。
「どうぞ、休んでいてください。座るところは・・・ベッドくらいしかありませんが」
一番安い部屋をとっていたため、あるのはベッドだけ。
ロマはためらったあと、渋々といった様子で座る。
「お、おい。お前は座らないのか」
「はい。もしも誰かが来た時に対応できるように」
ツミナは壁にもたれかかっているが、座りはしなかった。
「・・・私を、教会に差し出さないのか」
「教会に、ですか? 貴方が望むのなら、そういたしますが・・・」
「そんな訳なかろう! だが、お前は教会寄りの人間だ。神父や、シスターも。どうして、私になぞ構うのだ」
ロマは裏切られるのを怖がっている。だから、理由を聞きたがっているのだ。
「私たちから見れば、貴方は、困っている子供だ。困っている人がいるなら、助ける。それは勇者の務め。たとえ、それが魔族であったとしても」
ツミナは、ロマの瞳を見つめながら言った。決して、目をそらさずに。
「・・・そうか」
ロマはぱっと目をそらす。その頬は少し赤くなっていた。
コンコンコン
部屋の扉がノックされる。
『お、おいおい、やめてくれって言っているだろう。今ここには具合が悪い子が休んでるんだ』
『その子供の顔は?』
『み、見てないよ。フードを被っていたからね』
『では確認しなければ』
扉の向こうから少しぐぐもった声。
神官だろうか。
とにかく、ここもでなければ。
「ロマさん、移動できますか?」
「あ、ああ」
ロマは少し顔を青ざめて頷く。
ツミナは窓から顔をのぞかせる。
前のように窓からでようとしているのだ。
「ちょ、ちょっと待て。お前、ここは2階だぞ? 飛び降りたら音でばれる」
ロマはツミナを止める。
ここの宿、1階は酒場で、2階が宿となっているのだ。
そして、ロマが心配したのはツミナの身ではなく、ばれる可能性。どこかずれている。
「大丈夫です。壁を蹴って衝撃を少なくします。音も極力でないように気をつけます」
「だ、だがな・・・」
ロマは渋るが、あまりぐずぐずしていると中に神官たちが入ってくるかもしれない。
「行きますよ」
「えっ、ちょ、待てっ」
ロマはツミナに捕まれて、心の準備をするまもなく2階から飛び降りる。
「ひ、ひやぁぁぁぁっ」
ロマが悲鳴を上げる。
(しまった、声が・・・)
ロマが気づいたときにはもう遅い。
ダダダダダと神官たちが声を聞き駆けつけてくる。
「ここを出ます! 顔を見られないように!」
ツミナがロマに叫ぶ。
ロマはツミナに抱きかかえられながらもツミナのローブのフードを目深にかぶる。
そして、対称的にツミナの顔は丸見え。
ダッ
ツミナは大通りへ出る。
人の間を駆け抜けて追って来る神官から逃げる。
部屋から逃げたのをみてあやしまれたのだろう。
「待て! 止まれ!」
神官が叫ぶ。
ツミナはそんな声を無視して走り続ける。
他の神官を呼んできたのか大勢でツミナたちを追って来る神官たち。
「っ!」
角を曲がったところで、前に神官たちが迫ってきているのを見て止まるツミナ。
だが、後ろからも神官たちが。
別の分かれ道へ行こうとするとそちらもふさがれている。
(八方ふさがりか・・・)
ツミナが立ち止まったまま考える。
神官たちはじりじりと近寄ってきてツミナたちを囲む。
「その少女の顔を見せていただけるか」
すると1人の聖職者が話しかけてきた。
「断ったら?」
「強制的にでも」
微笑んで会話する2人だが、その瞳は笑っていない。
「・・・お断りします」
ツミナが断った瞬間。
ジャキッ
全員が構えた物は。
「おとなしくその少女の顔を見せていただけるかな?」
銃。
「ふ、・・・はは、はははっ!」
ツミナが急に笑いだす。
神官たちは怪訝な顔をしながらも警告を続ける。
「恐怖におかしくなりましたか? おとなしく、その子の顔を見せてください。我々も貴方のことを撃ちたくはない」
「聖職者が一般人に銃を向けるとは・・・。教会も終わりだな」
嘲るようにツミナがいう。警告を無視するその姿に、聖職者は怒鳴った。
「一般人だったらの話です。その娘は魔族の可能性がある。はやく顔をみせてください」
「私は一般人のはずだが?」
「魔族の手先は信用できませんからなぁ」
ツミナは魔族の手先、という言葉に驚き、かたまってから、またくつくつと笑う。
「魔族の手先、ね。ああ、私はそのような認識か」
「っ、もう警告は最後です。その娘の顔をみせなさい」
最後の警告さえ、ツミナはけった。
「断る、と言ったはずだ」
きっぱりと。ツミナは断った。
聖職者が怒鳴る。
「撃てぇッ!!」
それと同時に神官たちが銃を発砲。
民間人が音に悲鳴を上げる。
「な、そ、そんな、バカな・・・」
発砲を終えた神官たちが見たのは。
ツミナたちの足元に落ちる無数の銃弾。
「結界を張れば銃など効かぬな」
ツミナはさらりと言ってのける。
「次はこちらの番かな」
そう言ってツミナが相手に向けたのは。
〖聖弾〗
勇者の武器は、教会関係者であれば知っているはずだ。実物でなくても、姿くらいは知っている。魔術式がかかれ、神秘的な光を生み出す銀色の銃。それが全てを物語っていた。
驚き、恐れおののく聖職者たちなど気にせず、ツミナは冷酷に告げる。
「さぁ、反撃しよう」




