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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~迷子は魔族のお姫様~
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いざ、教会本部へ

 ツミナとトーリが神官たちに囲まれて、教会本部へ入ると、案内されたのは「神官長室」と書かれたところだった。


「ようこそお越しくださいました、勇者様。私はこの教会本部で神官長をしております、パルマと申します」


 ぺこりとお辞儀をするのは神官長の男・パルマ。


「もう帰っていいですか?」


 そして、それにツミナが返した言葉は、自己紹介でも挨拶でもなく、そんな言葉だった。


「そうおっしゃらずに。今日はおもてなしさせて頂きます。ここにお泊りください。もちろんお金はとりません」


 神官長は笑みを浮かべたまま話し続ける。


「大勢で少数を囲みこみ、連行されるように連れてこられて、ここにいたいと思いますか?」

「それはそれは、部下が失礼を。申し訳ありませんでした。部下にはよくいっておきますので」

「貴方の監督責任でもある。私たちはこれで失礼するよ」


 ツミナはトーリを連れて、強引に来た道を戻ろうとする。

 その道を神官たちがふさぐ。


「今日はもう暗いですし、今夜だけでも泊まっていかれてはいかがでしょうか」

「・・・」


 帰すつもりはないようだ。それもそうか。無理矢理にでも同行させ、連れてこさせたんだ。ここで帰せば探し出した苦労も水の泡というもの。


「朝一番にここを出ます。おもてなしも必要ありません。部屋だけ用意してください」

「・・・おい、勇者様をお部屋に案内しろ」


 神官長は神官に命令する。「こちらへどうぞ」と神官がツミナとトーリの案内を始めた。



 ツミナとトーリの部屋は隣同士だった。教会側のせめてもの配慮だろうか。


(神官たちは、『勇者』をここに泊めて、教会に箔をつけたいだけだろう)


 神官長の態度もそうだ。勇者だけをみて、トーリを相手にしようとしていなかったし、知ってはいるだろうがツミナの名さえ聞かなかった。


「――、―――」


 その時、声が聞こえた。何を言っているのかはわからないが。

 隣から聞こえてくることから、トーリの部屋か。

 少しすると、聞こえなくなった。


(まさか・・・)


 ツミナはコンコン、と壁をノックする。壁の薄さはわかっているため、恐らくはあちらに聞こえる音だ。だが、返事はない。

 やはり・・・


「いない・・・」



 コンコンコン


 ドアがノックされた。ぱっと振り返る。


(誰・・・?)


 部屋の中にいたトーリは、そおっと扉を開ける。


「休憩中に失礼します。神官長様がお呼びです。神官長室までお越し頂けますか?」

「え・・・で、でも・・・」


 扉を開けたそこにいたのは神官だった。

 どうやら、神官長がトーリを呼んでいるらしい。だが、1人で行くのは気が引けた。何の用かわからない怖さもある。


「少しですみますので、お願いします」


 神官にお願いされ、しぶしぶトーリは神官についていった。



「失礼します」


 神官長室にきた神官とトーリは、中に入る。


「ご苦労。戻っていい」

「失礼しました」


 神官長に命令され、神官は部屋を出た。


「どうぞ、おかけください」

「は、はい・・・」


 神官長はトーリに椅子に座るように言った。

 トーリは神官長が苦手だ。トーリを見るときだけ、張り付けたような笑みになるからだ。


「な、なんの御用でしょうか」


 トーリは意を決して自分から神官長に問う。

 神官長は笑みのまま、言い放った。


「貴方には、勇者様から離れていただきたい」

「え――」


 トーリがかたまる。思考や、体の動きもとまる。


「それをお伝えしたかったのです」

「どう、して・・・?」

「どうして、ですか? 勇者様は神聖なお方だ。本来、このような街におりてはいけない。普通の人がみてはおこがましいのです。わかりますか?」


 正直言って、トーリは神官長の言っている意味が全くわからない。


(ツミナさんが街におりちゃいけない? 普通の人がみちゃいけない? おこがましい?)


 ツミナだって人だ。人に指図されるだけの「モノ」ではないのだ。神官長の話は、ツミナの自由を奪うものだった。

 ふつふつと、怒りが湧いてきた。


「それ、ツミナさんの意思じゃありませんよね」

「意思? 彼は神に選ばれた存在だ。彼の意思も同じでしょう」

「本人に聞きましたか? まさか妄想でいってるんじゃないですよね?」

「なっ、妄想だと!? そんなわけなかろう!」

「じゃ、本人が言ったんですね?」


 強気になったトーリに、言葉をつまらせる神官長。


「そ、そのようなもの、聞かずともわかる」

「では聞いていないんですね」

「っ、とにかくっ、勇者様から離れろ。わかったな!?」


 言い返せなくなった神官長は、本題に戻る。


「ぜっっったい、嫌です!!」


 そんな神官長に、トーリは大声で返した。

 トーリの大声に驚いた神官長だったが、すぐに要求を拒否されたことを理解する。


「これは勇者様の為だ! 離れるんだ、勇者様から!」

「ツミナさんの為、ツミナさんの為って言ってますけど、結局自分たちの為ですよね!? 話を聞いていればそうとしか思えません!」

「そのようなことはない! つくづく失礼な女だ! これは勇者さ――」



「失礼なのはそちらだ」



 凛とした声が響く。いつの間に入ってきたのか、ツミナがいた。ツミナの後ろでは神官たちが顔を真っ青にして慌てている。


「ゆ、勇者様・・・こ、これは、違うのです」

「違うとは?」

「こ、これは勇者様のことをおもい・・・」


 ドゴンッ!!


 大きな音が響く。ツミナが拳を壁にたたきつけたのだ。砕けた壁から砂埃のようなものが待っている。


「あ、あわわ・・・」


 神官長はそれに驚いて尻もちをつき、口をわなわなと震わせている。


「教会本部がここまで無礼だとは思わなかったぞ、神官長殿。次このような真似をしたときには――」


 一旦言葉をきるツミナ。神官たちがごくりと生唾を飲む。


「つぶす」


 怒気を含ませた顔や殺気を含んだ目が、それが本気だと語っていた。


「私たちは帰る。失礼したな」


 ツミナはトーリの腕をつかみ、連れていく。

 ドアの近くにいた神官たちは顔を青くしながら、ツミナが近くにくるとサッと道をあけた。


 暗い中、2人は神官本部をでて帰路につく。

 後々、神官本部から怒りをみせながら出てきた2人の噂がひろがり、教会本部の信用や社会的地位がどん底におちたのは仕方がないといえることだろう。

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