表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~迷子は魔族のお姫様~
76/89

突然の訪問

 更新できていなくてすみません・・・

 いつもよりすこし長めの話になってます

ツミナは、少女が目覚めたその日から孤児院をでて宿に泊まっていた。

せっかく来てくれた客人が出ていったことと、その原因である魔族の少女のことで、孤児院の子供たちの雰囲気は暗かった。


「ツミナ、もうこないのー?」

「もっとあそびたかったよぉ」

「ゆうしゃのけん、みせてほしかったなぁ」


子供たちが口々に文句をいっている。

ドルとミリアは困ったように眉を下げ、苦笑している。

少女は皆と顔を会わせたくないというので、ご飯などは診察室にドルもしくはミリアが持っていっている。


「入りますね」


 ノックをしてから部屋に入るミリア。


「お食事、お持ちしました」


 微笑んで会釈するミリア。少女は相変わらず無表情で、食事を運んできたミリアに礼も言わない。


「調子はどうですか?」

「・・・問題ない」

「では傷口に塗り薬だけ塗っておきますね」


 ミリアが棚から薬を取り出し、少女に近寄る。


「かせ。自分で塗る」

「いえ、遠慮なさらずに」


 少女に言われてお気遣いなく、と言葉を返すミリア。


「自分でやると言っているだろう!」


 少女は自分に薬を塗るために伸ばしたミリアの手を振り払った。


「いたっ」


 ぺしっとはじかれる音。

 少女はさほど力を込めたつもりはないのだろうが、小さい子供でも魔族の力は強い。制御できていないから尚更だ。


「っ、・・・」

「すみません。無神経、でしたね。どうぞ」


 触られるのが嫌なのだ、と思ったミリアは無神経だったと謝り、薬を少女に渡す。

 少女は、申し訳なさそうな顔をしたが謝りはしなかった。タイミングを見逃した、というかなんというか。


「塗り終えましたらお声かけください」


 ミリアはドアを開けて外に出ていった。ドアの近くで待っているつもりだったが、何やら外が騒がしい。

 様子を見に行こうかと一歩足を踏み出したところで、孤児院の扉がバンっと開かれる。


「失礼する!!」


 大きな声を張って、男が入ってきた。その後からぞろぞろと人が入ってきた。だが、全員が聖職者の服を着ている。


「どなたでしょうか」


 ミリアはパッと少女のいる部屋から離れて男の前にでる。

 男たちは聖職者だ。魔族の少女を見つけたらすぐにとらえにかかるだろう。ドルとミリアが特殊なだけで、普通、聖職者は魔族を嫌悪し、存在を悪としている。

 ミリアが魔族を嫌悪しないのはドルの影響でもあるが。


「私たちは魔族を発見し、捕獲の為追いかけてきたのだが・・・こちらに魔族は来ていないだろうか。もしくは目撃したなどは?」

「さぁ。聞いていませんね」


 男に聞かれて、ミリアは知らない、と答える。

 男たちは少女を追ってきたようだ。


「そうか。近くの森を捜索したいと思っている。ここに泊めてもらうことは可能か」


 すると森で魔族を探すという。だが、問題はここに泊まる、ということだ。少女がいるというのに、彼らをここに泊めることはできない。


「少々お待ちください。神父様に聞いてまいります」


 ミリアはドルに相談しようと思い、隣の教会に向かおうとするが、自分が孤児院に残った方が良いことに気づきランを呼ぶ。


「どうかした?」

「ラン、この方たちが魔族を探しているようなの。森を捜索する間、ここに泊めてほしいとのことなのだけど、神父様に許可をとってきてほしいの」


 ミリアはなるべくあやしまれないように言葉を選んで説明する。

 ランはそれで理解した。魔族とは少女のことで、泊まられたら面倒なことになるから、許可ではなくドルを呼んできて、ということだ。

 ランは頷いて教会へと走っていった。


「・・・シスターは行かなくてよろしいので?」

「・・・ええ。子供たちだけを残すわけにはいかないので」


 やはり、自分が残ってよかったと思うミリア。きっとミリアが教会に行っていたら彼らは勝手に孤児院の中を見て回っただろう。

 疑われているのだ。


「念の為だが、孤児院を見て回ってもよいか?」

「申し訳ありませんが、散らかっているところもありますので、後日でよろしいでしょうか」


 男たちはミリアが断ったのを見てますます怪訝な顔をする。


「何か隠しているのではあるまいな」

「そのようなことはございません」


 きっぱりと言い切るミリアだが、内心はかなり焦っている。

 もし少女が見つかったら自分たちはただではすまないし、更に少女はもっとひどい目にあうだろう。


「おい、調べろ」

「はっ」


 だが、男たちはミリアをいぶしかんで、調べようと孤児院の様々なところに押し入ろうとした。


「おっ、お待ちください!! 私たちを信用なさっていないのですか!?」

「信用するために見せてもらうのだ。やましいことがなければ問題ないだろう?」


 ミリアが慌てて止めようとするが、邪魔される。言い返せないのも確かなので言葉に詰まってしまう。


(どうすれば・・・もう、少女を引き渡すしかないのでしょうか)


 そんなことはしたくない、とぐるぐると考えが頭の中に巡るが、もう彼らを止める方法はない。


「っ」


 諦めかけて、最後の悪あがきをしようと男たちを力ずくで止めようと動き出したとき。


「待て」


 孤児院に響く声。自然と耳に通る声だった。

 皆が孤児院の入り口を振り返る。


「孤児院の捜索をやめろ」

「ツミナさん!」


 ミリアが彼の登場に思わず声を上げる。

 ツミナが来たのだ。その後ろではトーリが息を切らしている。たまたま孤児院に来ていたトーリが呼んできてくれたようだ。ランの指示だろうか。


「誰だ? 私たちに命令する権利はお前にはない」

「あるさ」


 すると外で遊んでいた子供たちがツミナの近くに寄ってくる。


「ゆうしゃさまだぁ」

「きてくれたの?」

「あそぼー!」


 子供たちの言葉を聞いて、男がはっと鼻で笑う。


「勇者様だと? 見栄っぱりなただの男ではないか」


 彼はツミナが勇者だと信じていないようだ。それもそのはずだが。勇者の顔を見たのは少数だけだ。


「私は《勇者》ツミナだ。聖職者ならば《勇者》の命令はきかなければならないはずだ」


 ツミナが男に言う。教会は悪を払う勇者を神の使いのように考えている。神に仕える聖職者にとって、勇者は神の次にえらい存在だ。


「お前が本当に《勇者》ならばな。《勇者》だというのなら〖聖剣〗を出してみろ、ほら」


 男は嘲りを交えてツミナを見る。


「〖聖剣〗」


 ツミナが呟くと、彼の手の中にパッと剣が現れる。

 神々しい光を放つのは本物の聖剣。


「なっ!?」


 男たちが驚愕の声を上げる。まさか本物だったとは思わなかったのだろう。


「さて、随分と疑ってくれたものだが・・・」

「もももっ申し訳ありませんでした!! まさかご本人だとは知らずっ」


 ツミナがため息をつくと、男はすぐさま謝りだした。頭を下げて必死に謝る姿はもはや滑稽だった。


「それは地位で人によって態度を変える、ということか。下らないな」

「そ、そのような、ことは・・・」


 身に覚えがあるのか、男は目をそらして言葉尻を小さくする。


「とにかく、このような者たちをここに置いていくわけにはいかないな。自費で宿にでもとまれ」

「は、はっ。承知いたしました」


 ツミナは男たちに命令すると、すぐに孤児院を出ていった。


「ふぅ、間に合ってよかったです」


 〖聖剣〗をしまってからツミナがミリアに話しかける。

 〖聖剣〗を見たがっていた子供たちからはぶーぶーとブーイングが来るが気にしない。


「来てくださったんですね。ありがとうございます。トーリさんも、ありがとうございます」

「あ、いえいえっ。ランが呼んでくるように言ってくれたんです」


 お礼をツミナとトーリに向けて言うミリア。トーリがぶんぶんと胸の前で手を振る。


「ランにもお礼を言わないといけませんね」


 ふふっとほほ笑んで答えるミリア。

 そこにやっとランとドルがやってきた。


「悪い! 遅くなって・・・あれ、あいつらは?」

「ツミナさんが追っ払ってくれたんですよ」

「あ、そっか。サンキュ、ツミナ」

「いえ、彼女を置いてもらうよう頼んだのは私なので」


 ランがお礼を言う。ドルも重ねて礼を言った。


「とにかく、良かったです。何もなくて」


 ツミナがそう漏らしてほっとため息をつく。


「・・・」


 そして、その時診察室のドアが少し開いていて、そこから少女が顔をのぞかせていたことを誰も気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ