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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~迷子は魔族のお姫様~
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魔族の姫

 孤児院に帰ると、トーリがいた。そういえば来る、と約束して別れたのだった、と思い出す。


「初めましてー」


 トーリは孤児院の子供たちにも挨拶している。


「ランちゃんとツミナさんに会いに来ちゃいました!」


 笑顔で言うトーリに、微笑ましくなるツミナ。


「お前の場合私が2でツミナが7の比率だろ」

「え、そんなことないよ。ねぇ」

「何故目をそらす」


 ランがトーリをいじっている。そんな様子を傍目に、ツミナは少女の様子を見に行こうと診察室へ。

 すると扉を開ける前に声が。


「触るなっ!!」


 小さな女の子の声。

 バンっと扉を開ける。


「っ・・・」

「神父様!」


 手に引っかかれ、血を流すドルにツミナは駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」

「え、ええ。それよりも、あの子を・・・」


 苦しそうに顔をゆがめるドル。

 傷は深い。何か爪のようなものでひっかかれた跡。そう、()のような。


「神父様、ツミナさん! どうなさいましたか!?」


 すぐにミリアがやってきてドルの怪我を見て処置をしようとする。ランや他の子供たち、トーリまで声を聞いてやってきた。


「ど、どうして、どうして、お前が、ここにっ・・・」


 肝心の少女は、意識が戻ってベッドの上に立って、わなわなとツミナを見て震えている。その姿は、爪は長くとがっており、背中には黒いコウモリのような羽が生え、額には小さな2本の角。額にあった紋様は赤く光っている。この姿は、どこからどうみても――――


「「「魔族!?」」」


 ランとトーリ、そして子供たちの声が重なる。


「どうしてこんな場所に魔族が・・・ひ、人を、人を呼びに行かなきゃっ」


 魔族は殲滅され、1匹たりとも生きていなかったはず。その認識を持っている一般人は、魔族がいることに慌てている。

 ミリアはツミナに聞かれたことの意味を理解して真剣な顔をしている。ドルも状況を理解したようだが、慌てふためいたりすることはなく、冷静だ。


「人を呼びに行く必要はありません」


 透き通った声が全員の耳に届く。皆が動揺する中、その声は耳にスッと入ってきた。


「で、でも、魔族・・・」


 ランは反論しようとするが言葉が見つからないらしい。


「大丈夫です。一旦任せてください」


 ツミナに有無を言わせぬ様子を見せられ、ランは一度大人しくなる。


「何故お前がっ、ここにいる!!」


 すると少女が叫んだ。ツミナは静かにそれを見つめ返している。


「勇者っ!!」


 ツミナをおびえるような目で見て、彼女は叫んだ。



「逃げるのに失敗したのか?」


 ツミナはドルに言って診察室で少女と2人きりにしてもらった。


「・・・力尽きただけだ」


 少女は正直に答える。


「そうか。・・・生きていて、良かった」


 ツミナが本音を呟く。


「どの口がほざく! お前は私から父を奪い、仲間を奪い、家も奪った!! そんな奴が、私が、生きていてよかっただと? ふざけるなッ!」


 目にうっすらと涙を浮かべた少女は、ツミナに憎しみのこもった瞳を向けている。


「・・・わかっている。資格がないことなど。言い訳をするつもりはない。ただ、人は、俺みたいな奴だけじゃない。神父様やシスター・ミリアがいい例だ。だから――――」

「だから信じてくれ、とでも? 私はそこまで心が広くない。人を、許すわけがない。それに、お前をけしかけたのも人間だろう。誰を信じろというんだ」


 何もかも、諦めた目だった。

 少女をこの状況に陥れたのは自分であることを、ツミナ自身がよくわかっていた。


「・・・せめて、怪我治るまで安静にしていてくれ。俺は会いに来ない」

「・・・怪我治らなければまた力尽きるだけだからな」


 少女はキッとツミナを睨んでからそう言った。



 診察室から出ると、ツミナはランとトーリ、子供たちから質問攻めにされた。


「どういうことだ!?」

「勇者、って、本当ですか?」

「勇者様なのか!?」


 ツミナはいつもの様子とは打って変わって、真剣な様子だ。それを見て、ドルとミリアが静かに言った。


「お話を、聞かせていただけますか?」


 頷いたツミナは、孤児院の椅子に座って、話を始めた。



「魔王の、娘・・・」

「実際には魔王の後継者です」


 少女は魔王の娘であり後継者、だった。


「魔族は全て殺しました。()()()()は。ですが、彼女だけは、逃がしました」


 ツミナが語る。実際にあった話を。


「勇者様だったとはつゆ知らず、失礼を」

「いえ。言っていなかったのはこちらの方だ。申し訳ない」


 ドルと話すツミナ。


「それで、彼女を、おいてやってほしいのです。彼女がでていく、という時まで」


 話を聞いていたランと子供たちが不安そうな顔をする。


「・・・はい。そのつもりです」

「神父!」


 ドルが頷いたと同時に、ランが叫ぶ。


「何言ってんだ! 相手は魔族だぞ!?」


子供たちも怯えている。だが、ドルは意見を変えなかった。


「もし、自分だと考えてみてほしい。ただ、角や羽があるだけで、悪いやつだ、と言われる気持ちを」

「っ、でも・・・」

「一度一緒に暮らしてみて、悪い子だったら、もう一度考えてみよう。それでどうかな」


ドルの説得で、皆がしぶしぶ頷く。

普通の神父なら、魔族を庇うことはしない。どころか殺そうとするだろう。こんなに優しい神父に、少女が出会えて良かった。ツミナは心からそう思った。

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