孤児院
「ただいまー!」
ランが勢いよく孤児院の扉を開く。
「お邪魔します」
ツミナもランに続いて中に入る。
「ラン?」
すると司祭服を着た30代と思われる男性が、呟いた。
中には他にも小さな子供から成人前の子供までいる。
「ああ、神父。ただいまー」
彼は神父らしい。ランがのんきに話す。
つかつかとランに歩み寄る神父。
ゴツッ!
「いってぇ!?」
げんこつを落とされたランが身もだえる。
「お前はっ、今まで一体どこに行っていたんだ!! 急にいなくなるなんて――」
怒鳴っていた神父は、途中で言葉を途切れさせてから、ランを抱きしめた。
「皆、心配していたんだぞ」
「神父・・・」
ランが呟いてから、一筋の涙をこぼす。
「私だって、怖かったんだよ、頑張ったんだ・・・」
気丈に振る舞っていたランだったが、家族に会えてほっとしたようで緊張の糸が切れたかのように泣き出した。
中にいたたくさんの子供たちは、同じように泣き出したり、ランに抱き着きに行ったり、冷やかしたり。だが、とても暖かく見えた。
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「見苦しい姿をお見せしてしまったようで申し訳ありません」
神父がツミナに向かって頭を下げる。
「いえ、そんな。ランさんが安心できてよかったです」
ランは子供たちと話している。少し離れたところでツミナは神父と話していた。
「私は隣の教会で神父をやっているドルと申します。今回はランがとてもお世話になったようで。本当にありがとうございました」
深々と再び頭を下げる神父。
「頭を上げてください、神父様」
「いいえ、いくらお礼申し上げても足りません」
気持ちはわかるが、いつまでも頭を下げられているとツミナも困ってしまう。
「おい、神父。ツミナが逆に困ってるよ。私もお礼を言ったし、その分帝国にとどまる間ここに泊まってもらえばいいだろ」
するといつの間にか来たランがドルに言う。
「ああ、そうなんです。実は、帝国に少しの間とどまりたいのですが、どこが良いのかわからなくて・・・ランさんのご厚意で泊めていただく、という話をさせていただいていて・・・」
「そうでしたか! ぜひ! 狭いところではありますが、おもてなしさせていただきます」
「そんな、泊めていただくだけで十分です。ありがとうございます」
と、一旦話がまとまったところで、子供たちがツミナの方へ寄ってきた。
「ねぇ、あそぼうよ!」
「おにごっこしよ~」
「に~ちゃんがおに!」
なぜか鬼ごっこをすることに。
急にやってきた子供たちにこら、とドルが怒るが、ツミナは特に気にした様子はなく一緒に遊ぶことにした。
「わー、にげろ!」
「きゃははっ」
子供たちが逃げる。ツミナは10数える。そして、子供たちを追いかけようとした時。
「神父様!」
若い女の声。
振り返った先にいたのは、修道服を着たシスター。
「どうしました?」
ドルが穏やかに聞く。
「あの子の様子が・・・!」
「!」
あの子、と聞いた瞬間、ドルの顔色が変わった。
「すぐに行きます!」
ドルが駆け足になる。
「あの子、とは?」
「私も知らないな・・・」
ツミナがランに聞くが、ランも知らないらしい。
すると子供たちが教えてくれた。
「ランがいないあいだに、しんぷさまがつれてきたこだよー」
「なんか、たおれてたんだって」
どうやら体調がすぐれていないらしい。
「それでねー、そのこ、おもしろいんだ!」
「おでこにね、なんかもようがあるの」
「模様?」
ツミナが聞き返す。
「うん! ハートみたいなので、クルンってしてて・・・」
「ちがうよ! つるみたいになってるんだよ!」
「それで、よくみたらどーぶつの絵みたいなんだ!」
ハート、つる、動物。
ツミナははっとしてその子の居場所を問う。
「その子はどこに?」
「えーと、しんさつしつ!」
「ありがとう。ランさん、案内してもらえますか」
「え、ああ、いいけど」
ランに案内をしてもらい、、診察室へ。
「失礼します」
ツミナが中に入る。
「つ、ツミナ様!?」
ドルが驚いて振り返っている。
だが、知ったことじゃない。
ドルとシスターの近くのベッドを除く。
ベッドにいる少女は、とても苦しそうにうめいている。
「治療法は?」
「ち、治癒魔法を・・・ですが、体調は戻らず、日に日に悪くなるのです」
ツミナの問にドルが返す。
やはり、と思ったツミナは解決法を口にする。
「この子に治癒魔法は毒と同じだ。いくら治癒魔法をかけても効果はないでしょう」
少女の額にある紋様を見つめて、ツミナはため息をついた。




