マリ帝国
「ランちゃ~ん、無事でよかったよぉ」
ツミナがランを連れて馬車に戻るとトーリがランに抱き着いた。半泣き状態のトーリにランが苦笑いしながらも心配してくれたことを理解し、嬉しそうにしている。
「皆さんお待たせしました。出発しましょうか」
ツミナは馬車の運転をする為に御者台に移動する。
そして馬車を動かす。
後ろからランがトーリを慰める声が。
(普通は逆だろうに)
苦笑しながらツミナが思う。本来なら連れ去られたランをトーリが慰めるはずが、トーリがランに慰められている。
少ししてランが御者台の方へやってきた。
「ツミナ」
「あれ、ランさん? どうやって来たんですか・・・」
「荷台の横をつたってきた」
また苦笑してしまうツミナ。数センチの足場を使いわざわざ御者台までやってきたのだ。
「それで、どうかしましたか?」
「別に。ただ、助けてもらったのにお礼言ってなかったなぁ、って」
ランがツミナの隣に座る。御者台は3人くらい座れるスペースがある。
「もとはといえば私が注意を怠った結果なので、お礼など・・・」
「1人でなんでもできたら苦労しないって」
ランがツミナの言葉を否定する。だが、その声は優しい。
「ありがとうくらい言わせてくれって」
「・・・では、どういたしまして」
ランが微笑む。
「あーあ、こんなことになるのなら護身術、習っとけば良かったなぁ」
「護身術? 孤児院では護身術を習うことができるのですか?」
「ううん、たまに来てくれる冒険者の人がいて。その人だったら頼めば教えてくれるんじゃないかな」
孤児院のことを思い出しているのか、ランの頬が緩んでいる。
「皆、その人になついててさぁ」
孤児院に来る、ということは、寄付をしているということだろうか。
「・・・きっと、ランさんがいなくなって孤児院の人たちは心配しているでしょうね」
「・・・どうだか」
肩をすくめるラン。
「あ、私も孤児院にいたんですよ」
「えぇ!? うっそだぁ」
「いや本当ですって」
そんなこんなでツミナとランはかなり打ち解けていた。
「むぅ、ランちゃんばっかりずるい」
後ろでトーリがすねていることを知らずに。
1
「あ、あれが門だよ!」
ランが御者台で声を上げる。
「やはりそうですか」
「やっと、帰ってこれたんだな」
マリ帝国の門が見えてきた。後は一本道を進むだけでマリ帝国の門につく。
ランがしみじみ言うのを聞いて、ツミナはほっとする。皆を無事に届けることができそうだ、と。
ヒヒーン!
手綱をひくと、前足を上げると同時に馬がなき、馬車が止まる。
止まったのは勿論門の前だ。
「身分証明書を確認させてください。あと、荷台の荷物も」
門番にそう言われて、冒険者のギルド登録カードを出すとともに、少女たちのことを話そうとすると。
「おい! 中に女がいる!」
他の門番が荷台を確認していて、声を上げた。
「なんだと!? お前、奴隷商人か!?」
「奴隷の売買は禁止されている! おい! こいつの身柄を確保しろ!」
「はっ」
上官の命令で、他の門番たちがツミナを捕まえようと槍を向けてくる。
「話を聞いてください。私は奴隷商人ではありません」
「その話は後でじっくり聞く。我々と共に来てもらおう」
後で、とは牢でだろうか。話が通じそうにはない。
「ま、待ってくれ! そいつは奴隷商人から私たちを助けてくれた奴だ!」
そこでランが叫んだ。
「なに? だが、お前も商人の可能性があるではないか」
御者台に座っていたからか、ランも奴隷商人の可能性を疑われている。
「その人の話は本当です! 彼は私たちを助けてくれたんです!」
すると荷台から降りてきたトーリが門番に向けていう。他の少女たちも同じように証言する。
流石にそれを信じない訳にはいかず、門番達は槍を下ろした。
「す、すまない。早とちりだったようだ」
「いえ、わかっていただけたのなら」
だが、勿論理由説明はいるので、ツミナは門番たちについていくこととなった。
2
門番たちに説明を終えたところで、ツミナはやっと入国した。
門を越えると、ランが待っていた。
「お、きたきた」
「すみません、お待たせしたようで」
「いや、いいよ。仕方ないし」
他の皆はそれぞれ帰ったようだ。
「トーリは孤児院に明日あたり来るって。場所は教えておいたから大丈夫だろう」
「そうですか」
それから孤児院に泊めてもらうつもりのツミナは、ランに案内されて孤児院まで向かった。




