捕まった少女たち
夜。さすがに半日で帝国につくわけもなく、野営となった。ツミナが見張りをしている。
トーリとランは、自分が見張りをするといったが、敵が来たとき撃退できるのは自分だから、と言って1人で見張りをしている。
(それに、奴隷商人たちが追ってくる可能性が捨てきれない)
届く予定だった奴隷が届かなければ奴隷商会も勘付くだろう。
(追手は始末、か)
たき火を焚いている前に座っているツミナ。無機質な目に映る炎。乱乱と燃えるそれは、狂気――
「いやあぁぁぁぁぁ!?」
叫び声。近くで聞こえたそれは、荷台の中。
すぐに荷台の中に入るツミナ。
「いやぁっ、こないでぇ!」
中には叫ぶ少女が。
トーリとランも起きていて、だが暴れる少女に手の付けようがないのか何もできずにいる。
「つ、ツミナさん・・・」
トーリがツミナに気づく。
ツミナは少女に近寄っていく。
「おい、ツミナ。ケガするぞ!? 一旦様子を・・・」
ランがツミナを止めようとするが、視線を送ると黙った。
「大丈夫。ここにはあいつらはいない」
「嘘よっ! そうやってまた騙すんでしょ!?」
ツミナが言葉をかけるが否定してパニックを起こしている。
「本当だ。あいつらは私が追い払った。もういない」
「来ないでぇ!」
人ひとりが入るくらいに近寄るツミナ。だが、その時暴れる少女の爪がツミナの頬を掠る。うっすらと血がにじむ。
「ツミナ・・・」
ツミナはそれでも前に進んだ。
「大丈夫」
そして、ふわりと少女を包み込んだ。優しいツミナに、少女は少しずつ落ち着いていく。
「――すぅ、すぅ」
安心して力が抜けたのか、少女は寝息を立てて眠った。
ツミナが優しく少女を座らせる。
「ツミナ、大丈夫か?」
ランがツミナに聞く。頬の傷だろう。
「ん? 大丈夫。healing」
ツミナは治癒魔法で頬の傷を治す。少女が起きた時に気にしないように、という配慮もある。
そして、先ほどの騒ぎで他に眠っていた少女たちも起きたようだ。
「はじめまして。私はツミナといいます」
礼をするツミナ。まだ少し少女たちは警戒しているようだ。
「この人は攫われた私たちを助けてくれたんだ」
ランが話す。実際さらわれたランが話すほうが信ぴょう性は増す。なので少女たちも信じやすい。
「あ、ありがとうございます」
少女たちがツミナに対して礼を言う。
「今、私たちは帝国に今向かっています。皆さん、帝国出身の方でよろしいですか?」
少女たちはうなずいている。
「追手がやってくる可能性が低くはありません。なるべく、声を立てたりしないようにお願いします」
特に夜は声で居場所が分かるかもしれない。昼は馬車の音でわかるかもしれないが。
「では、また明日の朝出発します。それまで皆さんはお休みください」
ツミナはそれだけ言って、また見張りに戻った。
1
先ほど叫んでいた少女を思い出す。
(おびえるにしては異常だった)
他の人たちはそんなにうろたえていなかった。
もしかすると、だが、あの少女だけ、とらえ方がひどかったのかもしれない。
(もし追手が来たらパニックを起こすかもしれないな)
そして、追手が来た場合、追手はツミナによって確実に始末されることとなる。




