通りすがりの旅人
「おいっ! そいつを放せ!」
女の子の声。まだ18歳程度だろうか。
「商品はおとなしく黙ってろ!」
男が声を荒げて言う。その声に、男に捕まれている方の女の子が震える。
ここにいる全ての少女たちは手足に枷をつけられ、動けないようにされている。
ふつふつと怒りがこみあげてくる。
「言い残すことはないか」
男に銃を向けて、ツミナは静かに言った。
1
法国を出た後、向かう国を決めぬまま西へと向かったツミナ。ここ最近、ずっと森の中だ。
森の中、というだけあって、獣や山賊が襲って来るが、ツミナは難なく撃退していた。
ガラガラガラ
すると森に似合わず荷台が通る音。
反対側からきた荷台の人に、この先に何があるのか聞こうとツミナは荷台に近寄ろうとする。
その時、会話が聞こえた。
「今回は数が多いな。金は儲かるが・・・国に睨まれるぞ」
「大丈夫だろ。もうあの国では稼がねぇよ」
「つっても俺たちこの仕事のおかげで大儲けだよな」
「ああ。若い女集めるだけで1000イームだ」
「それに質が良けりゃもっと貰える。奴隷は質で決まるからな」
奴隷。本来、それは各国で禁止されている商売だ。今や奴隷の売買を行った場合、死刑だ。
「すみません」
馬車が止まる。
「なんだてめぇ! 邪魔す――ぐぁっ」
御者をしていた男を殴る。すぐに隣にいた男も剣でさした。〖聖剣〗だ。ツミナは〖聖剣〗で人を指すことをいとわない。
それを見て、その後ろに立っていた数人が動き出す。ツミナはそれをも全て斬った。すると1人とり逃した男が荷台に走っていく。
「ちっ」
ツミナは小さく舌打ちして後を追う。
男が荷台の中に入ったのだろう。ツミナは荷台に張ってあった布を切り裂いた。
中が見渡せるようになる。
「おいっ! そいつを放せ!」
「商品はおとなしく黙ってろ!」
男に腕をつかまれ、短剣を喉に充てられている少女と、それを止めようとしている少女が目に入る。
そして、ツミナは商品、という言葉に対して、怒りが湧いてくる。
(人を、人だと思っていない・・・)
怒りの根源はそこだ。
「言い残すことはないか」
男に銃を向け、ツミナは静かに言った。
「何言ってんだてめぇ。今撃ったらこいつも巻き添えだぞ?」
銃は〖聖弾〗だが、〖聖弾〗はあまり世間に知られていないのでツミナが何者かはばれていない。
男は少女に当てている短剣をツミナに見せつけるように動かす。
(あの少女には悪いが・・・)
ツミナは引き金を引く。
「っくそ!」
弾が男の頭に飛んでいき、的中した。
その前に、男は少女の喉元を短剣で切り裂いたが。
男は即死。少女はその場に倒れこむ。
「cure」
ツミナはすぐに少女に駆け寄り治癒魔法をかける。
「う、うう・・・」
少女の傷が治り、うっすらと目が開く。
「あんた、何してんだよ・・・」
すると背後からどすの聞いた声が。
「人質がいんのに銃ぶっぱなすとか、あり得ないだろ!? 治癒魔法が遅れてたらどうするつもりだったんだ!」
男を止めようとしていた少女だ。
「本当に申し訳ありません。ですが、男に逃げられた場合、彼女も連れていかれるかと・・・」
ツミナが言い訳のように聞こえるが事実を述べる。
文句を言った少女は言葉に詰まる。
「とはいえ、命を危険にさらしたことには変わりません。申し訳ありませんでした」
ツミナが深々と2人に対して頭を下げる。
倒れていた少女も上体を起こして座っている。
「そんな、助けていただいたのですから・・・」
「私も悪かったよ。あんたの言ってる事は正しいしな」
そういってくれて助かります、とツミナが頭を上げる。
「それで、あんた、何者なんだ?」
そして少女に聞かれる。
「私はツミナと言います。旅をしている者です」
これが、3人の出会いだった。




