裏切りの騎士 2
ツミナはナツナとの試合が終わった後に、玉座の間に来ていた。
「ナツナと勝負したと聞いたぞ」
「お耳がお早いことで」
ついさっきのことを既に把握しているカラーディナ。
「それで、勿論其方が勝ったのだろうな」
「そうですね」
「そうだろうな」
確信していたようだ。誰かから報告されていたのか。
「で、だ。勇者・ツミナ。黙っていたとは心外だ」
王宮の中で〖聖剣〗を使う、というのはこういうことだ。素性は丸分かり。
「それは申し訳なかったと思っていますよ。カラーディナ陛下」
臣下の姿勢、つまり膝まづいていた姿勢から、許可もなく立ち上がるツミナ。
これが部下と勇者の違い。勇者は王と同じ立場と言っても過言ではない。
「勇者よ。改めて、礼を言う。戦争を止めたこと」
「私の責務を果たしただけですので」
周りにいる臣下たちはツミナが勇者ということに対して半信半疑らしい。2人が対等に話しているのを訝しんでみている。
「勇者。これからも我の騎士でいる気はあるのかな?」
「・・・申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます」
「まぁ、予想はしていた。それに、勇者だと判明したからには我の力は及ばない」
「案外楽しませてもらいました。貴方の人柄を知れて良かったと感じています」
微笑むツミナ。
「それぞれ、挨拶させて頂いてからここを去ろうと思います。・・・ありがとうございました」
玉座の間を去る。
こことももう、お別れだ。
2
玉座の間を出て、別れを言う人がたくさんいるなぁ、と考えながら歩く。
「ツミナさん!」
すると向こうから会いに来てくれた。1人目はナツナになりそうだ。
「体調はどうですか? ナツナさん」
「た、いちょうなんて、どうでもいい」
少し息が切れているようだ。走ってきたからか。
「でてくって、ほんと?」
「ルルーさんやヴァルさんあたりから聞きましたか? そうですね。ここともお別れです」
微笑んで見せるが、ナツナは逆に傷ついた顔をした。
「ど、して? ツミナさん、私に勝ったのに!?」
「勇者だとばれた時点で出ていくつもりでしたし、それにここにずっと留まる気もありませんでしたから」
勝負を受けると決めた時点で、ツミナは法国を出ていくつもりだったのだ。
「私の八つ当たりで・・・?」
「もともと出ていくつもりでしたよ」
「でもっ」
自分のせいだと言い張るナツナ。ツミナは話題を変える。
「それより、私はナツナさん、貴方に謝らないといけない」
申し訳なさそうな顔になったツミナに、ナツナが少したじろぐ。
「私も大人げなかった。サクラの弟子を侮辱して申し訳ありませんでした。貴方は真っ直ぐで良い人だ。これからも励んでください」
頭をなでて、その場を去った。次の別れへと向かうために。
ナツナはその場にへたり込んで、涙をこらえていた。
3
「あ、騎士さん」
「ツミナさん」
ナツナが休んでいた部屋に向かうと、ルルーとヴァルがいた。
「ナツナさんの調子、戻っていたようで安心しました。すみません、この場を任せてしまって」
「いや、別に大したことねぇ」
「そうですよ、気にしないでください」
「それより」とルルーが切り出す。
「本当に、法国を出ていかれるんですか」
「・・・ええ」
ルルーの表情が曇る。
「そうですか・・・最後に手合わせしていただきたかったですが」
「すみません。皆さんに別れを言ったらすぐに出ていくつもりなので」
「俺も戦いたかった」
ルルーとヴァルが残念そうに言う。
「ルルーさんとヴァルさんはいい剣士になりますよ。断言します」
「ありがとうございます! そう言ってもらえると嬉しいです」
「お、勇者様からのお墨付きをもらったな」
ルルーとヴァルが喜んでいる。ツミナもほほえましい気持ちでいた。
「最後まで君たちを見ていたかったのですが・・・残念です。いつかまた、お相手できることを期待しています」
ツミナが2人に向かって告げる。
最後の、最後だ。
「はい。次会うときにはツミナさんの相手に相応しいようになっているよう、頑張ります!」
「俺はあんたを越えるぜ。騎士さん」
宣戦布告ととれる2人の言葉に、ツミナも「負けませんよ」と返した。
4
荷物を整えようと王宮内の騎士の部屋に戻ったツミナ。
そこで待っていたのは。
「イルナー」
「待ちくたびれたぞ」
イルナーだった。カラーディナが気を利かせて休憩をとってくれたらしい。
「どうぞ、中で話そう」
ツミナはイルナーを部屋の中に入れる。
「あ、ちょっと準備してもいいか?」
「ふっ。まぁ、いいけどな」
ツミナのいつもと変わらない様子に笑うイルナー。
すぐに準備を終わらせたツミナはイルナーに向き直る。
「・・・随分と早い準備だな」
「予想は、してたんでね」
すぐに準備が終わったのは元々ある程度の準備はしていたからだ。
「そうか」
「ああ」
少し悲しい顔。去ることを、わかっていた。
「どうしても、去るのか」
「・・・ああ」
頷くツミナ。変えられないことなんて、イルナーもわかっていた。話す前から。
「というか、勇者だったなんて聞いてない。すごい失礼な態度とったじゃないか」
「あはは、今もね」
「もう変えたってしょうがないだろう」
肩をすくめるイルナー。
「イルナー。今までありがとう。君と会えて良かったと、心から思っているよ」
「なんだよ、改まって。・・・こっちもお前と会えて良かったよ。自分の考えが全てでないことも理解できたしな」
「出会いは最悪だったけどね」
「それをいうな、それを」
笑い合う2人。
「・・・じゃ、そろそろお別れだ」
「ああ。次戻ってきたら魔術だけでお前に勝ってやるよ」
「それは楽しみだ」
「絶対思ってないだろ」
戻ってくる、会えると言ってくれている友人に、嬉しさがこみ上げる。
「ありがとう、イルナー。俺の友人」
「ああ、またな。ツミナ。俺の友人」
2人とも素で話し合って、それが最後。
ツミナは王宮を去った。
昨日更新できずにすみません(-"-;A ...アセアセ
なので今日は2話は確実に投稿します! 3話以上になるかもしれませんが・・・




