裏切りの騎士
朝。法国軍は法国に帰った。勿論、王国もだ。
あの夜からツミナとナツナは話さないようになった。どちらかというと、ナツナがツミナを避けている。
「おい、騎士さん」
数日後、ヴァルがツミナに話しかけてきた。
「ヴァルさん、どうしました?」
「どうしたもこうしたもねぇっての。ナツナの様子がおかしい。何があったんだ?」
ヴァルはツミナと何かがあったと確信しているようだ。
「・・・どうして私に?」
「あいつ、騎士さんの話題を出すと機嫌悪くなるんだよ。その後すぐ落ち込むし。なんかあったって思うのが普通だろ」
ナツナは他人から見ても明らかに様子がおかしいようだ。
ちなみに将軍たちは今も王城にいる。カラーディナが手配したのだ。王城にいれるように。今の彼らの立場は近衛隊長と同等のものだ。
「しいていうなら喧嘩しました」
「はぁ? 喧嘩ぁ?」
ヴァルがはぁ、とため息をつく。
「喧嘩ごときでナツナはあの調子だってか。子供かよ」
肩をすくめてみせるツミナ。
「わりぃな。話はこれだけだ。・・・また訓練場にいるから、来てくれよな」
「ええ。勿論です」
1
「ナツナ、騎士さん、また来てくれるってよ」
ヴァルは訓練場に戻ってからナツナに声をかけた。
するとキッと睨まれる。
「ツミナさんの話はしないで」
ルルーと顔を見合わせて肩をすくめるヴァル。
「あっそ」
ヴァルは自分の訓練に戻った。
2
ツミナは約束通りに空いている時間にまた訓練場に向かった。
「お疲れ様です、皆さん」
顔を出すとルルーとヴァルが気づいて訓練を止めた。
「お、騎士さん。来てくれたんだな」
「約束は守りますよ」
「また手合わせしてくださるんですか?」
「ええ」
3人で少し話していると、ナツナがツミナの方に向かってきた。
「お疲れ様です、ナツナさん」
ツミナが微笑んで話しかける。
「私と決闘して。裏切りの騎士」
キッと睨まれたまま決闘を申し込まれる。
「ナツナっ、今の言い方はないよ」
「さすがに失礼だと思うが」
ルルーとヴァルがナツナをとがめる。
だが、ナツナはそれに反応しない。ツミナだけを見ている。
「いいですよ」
ツミナはあっさりと了承した。
「条件を付けたい」
「どうぞ」
ナツナが条件を付けると言い出す。
その条件とは。
「〖聖剣〗で戦って」
その言葉にルルーとヴァルが驚愕する。
「ちょ、ナツナ・・・〖聖剣〗って・・・」
「ナツナ、お前騎士さんが勇者だと言いてぇのか」
2人に言われて、ナツナが答える。
「そうよ。貴方は勇者、そうよね?」
ナツナがツミナに確認する。ナツナは確信している。なぜなら本人がそう言ったのだから。
「・・・」
ツミナは肯定もしないが、否定もしなかった。
「そして、私が勝ったら法国から出ていって。裏切者がここにいる資格はない」
「・・・わかりました。その2つの条件、のみましょう」
ツミナはそれさえも了承した。
「ツミナさん! 本当なんですか、今の話」
「ええ。負けたら出ていきますよ」
「そこじゃなくて・・・」
するとダンっとヴァルが地面を蹴った。
「はぐらかすな。あんたが勇者かって聞いてんだよ」
ヴァルが直球で聞いてきた。
「・・・そうです。まぁ、本物かどうかは戦いを見てから確かめていただいて結構です」
ツミナはストレッチを追え、立ち上がる。
訓練場から全ての人がどいていた。
ツミナとナツナの戦いを見るようだ。
ルルーが前にでる。合図をしてくれるようだ。
ナツナが剣を抜いた。
ツミナも、〖聖剣〗を出す。
「おぉぉ!」
「〖聖剣〗・・・」
「てことはあの時の勇者もツミナ殿・・・?」
騒めきが広がる。
「両者とも、準備はよろしいですか?」
ナツナが頷く。ツミナもだ。
「では・・・はじめ!!」
戦いが、始まった。
3
「はぁぁぁ!」
ツミナに突っ込んでいくナツナ。
キィン
ツミナは軽々とそれを受け止める。
ナツナは逆に吹き飛ばされた。
「っ!」
もう一度ぶつかっていく。
(悔しかった!)
歯を食いしばる。
(師匠をバカにされたと思った。でも実際バカにされたのは私っ。嫌だった!)
ツミナに貶された言葉がまたよみがえってくる。
「あああぁぁぁぁ!」
『連続剣』。サクラから教えてもらった技だ。
キンキンキン
それも、勿論ふさがれる。
「焦るな」
その時、ツミナが言った。
「焦っては正確な判断ができない。冷静になれ」
「っ!」
決闘をしているというのに、教えられているようだった。
余裕があると見せつけられたようで更にイラつく。
(もう一度!)
そしてもう一度、『連続剣』を使う。
それも全て防がれた。
それが、最後の記憶だった。
4
はっと目が覚めたとき、見えたのは天井。
むくりと起き上がる。そこはベッドだった。
「お、起きたか」
振り向くとヴァルがいた。
「ヴァル・・・勝負、は・・・」
結果は聞かなくてもわかっていた。
「お前の負け。技使った後にぶっ倒れたからな」
「ツミナさんが受け止めてなかったら頭打ってたよ」
そこへルルーが会話にはいってきた。元々部屋にいたようだ。
「技の連続行使は危険・・・」
「そこかよ」
ヴァルがナツナの発言に呆れている。どこまでいっても剣と戦いのことだ。ぶれないナツナに呆れているのだ。
「でも、私が負けたからには私が出ていかないとな・・・」
「は? お前そんなこと考えてたわけ?」
ナツナがこぼした言葉にヴァルがまた呆れる。
「心配しなくとも、騎士さんと王宮で鉢合わせして気まずい空気、とかないと思うぜ」
「そういうんじゃ・・・」
反論しようとしたナツナは、次のヴァルの言葉に固まる。
「騎士さん、法国から出てくらしいから」
目を丸くして固まるナツナ。
「今は陛下と挨拶行ってるとこ。そろそろ出てくるんじゃねーの」
バッとベッドから降りるナツナ。そのまま部屋の扉をあけっぱなしにして出ていった。
「こういう時しか素直になれねーのかよ」
「ヴァルも中々世話焼きだね」
「別に。その方が面白そうだったからな」
ルルーと顔を見合わせて肩をすくめるヴァルだった。




