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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~裏切りの騎士~
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刻まれた隙間

「「ここに、戦争開始を宣言する!」」


 両国の王が、戦争することを宣言した。

 平野の端にいた両国兵士たちが真ん中へと走っていく。

 それを、ツミナはワーナー平野を一目で見渡せる、崖から見下ろしていた。



 両国の王が宣言し合っている所を、ツミナは聞きながら森の中を歩いていた。


(少し急ぐか)


ツミナは一度歩みを止め、馴染みのある、()()()()を呼ぶ。


「〖聖鎧(せいがい)〗」


すると、ツミナの体が一瞬にして、鎧で覆われた。シンプルな銀色が主な色だが、綺麗な彩色が施されている。


「久しぶりだな」


鎧とセットの顔を覆う兜も装着されている。勇者時代は、顔がばれないようにするため外に出るときは必ず着用していた。


「さ、行くか」


そして、そのまま一度地面を蹴って崖のところまで移動した。



「この戦争に、異議申し立てる!!」


 戦場に似つかわしくない、凛とした綺麗な声が通った。

 その声は、平野にいる皆の耳に届いた。皆は声の主を振り返る。


「あれは・・・」

「どうしてこのような場に――」


ざわざわと騒めきが起こる。

 振り返った主は、崖の上いる。

 その鎧と風格を見れば、誰であるかは一目瞭然だった。


「勇者よ!! 何故この戦争に異議を申す!?」


そしてその彼に反論するものも、確かいる。カラーディナだ。彼女はこの戦争を待ち望んでいたのだから。


「戦争など下らない殺し合いにすぎぬ! 魔王という脅威が去った中、何故人間同士で戦うのだ! 私が戦った意味とは何なのだ!!」


勇者としては当たり前の主張だ。勇者は魔物、魔王という脅威があるため、戦っていた。そうすれば世界が平和になるのだからと。そう言われ続けて。だが、人間同士が戦争を続けていたら、それは平和とは言わない。結局、平和の為に戦った勇者、自分は何なのだと。


「っ、これは法国と王国の問題だ! 勇者が口を挟むでない!」


そう言われては反論できないカラーディナだったが、勇者は関係ない、と苦し紛れの言い訳を言い放つ。


「法国と王国? 何を言っている! これは法国の女王、貴方自身の問題でしかない! 国を巻き込んだだけだろう! 一個人の問題をな!」


どこかでそうだとわかっていたカラーディナ。言葉に詰まる。

 そしてもう勇者に構う時間はない、と勇者の主張を無視した。


「兵士たちよ! 早くいかぬか! 王国を滅ぼすのだ!」


自身の兵たちに語り掛ける。

 だが、法国の兵も戸惑う。勇者とは王と同等、いや、下手をするとそれ以上に大きな存在だ。


「っ、何をしている!」


だが、王に逆らう訳にもいかない。


「う、うおおおお!」


一人の兵士が声を上げて走り出す。他の者もそれに続いた。


(チッ、最終手段だ!)


 話して通じなかった場合も、一応は考えてあった。一番使いたくない手だが。


「そちらが話に応じないのなら、こちらも力づくで止めさせてもらう!!」


そう叫んで、手を伸ばす。


「〖聖剣〗!」


〖聖剣〗を呼び出す。

 綺麗な金色を煌めかせ、浮かび上がっている魔術式。

 誰もが驚きを隠せない。


「勇者よっ、それを人に使うのか!?」


〖聖剣〗の威力は果てしない。人など一瞬にして消え去ってしまう。

 皆が恐怖する。


「我に力を、力は我に。『(Heaven)』」


〖聖剣〗だけが扱うことができる技。『天』。

 聖剣から出た光は空、天さえも越えて、真っすぐ伸びている。そして、〖聖剣〗を振りかざすと、そのまま光の線はついてきて。地面を、2つに割いた。


「え・・・」

「じ、地面が・・・」

「真っ二つに・・・」


皆が驚いて騒ぎ出す。


「これを越えて見せるというものはどうぞ、戦争を始めてくれて構わない。越えられるのなら、ね」


ツミナが皆に言い放つ。

 当然ながらこの谷となったところを越えられるわけがない。飛び越えられる距離ではないし、落ちたら命はないだろう。


「これにて、戦争を中止する。延期するのではない。中止する!」


すると口を開いた人物がいた。

 王国の王・ベールドだ。


「ご理解、感謝する」


ツミナはそれだけ言って、森へと消えていった。



「認めぬ!!」


 法国のテントに戻ると、カラーディナの怒鳴り声が聞こえた。


「失礼します」


ツミナはそれを気にも留めずにテント内に入った。

 中にはカラーディナとイルナー、それに3人の将軍たち、ルルー、ヴァル、ナツナがいた。


「あ、ツミナさん」


ルルーが気づき声をかけてくる。

 カラーディナもツミナの存在に気づく。


「ツミナよ、これで満足か? お前は戦争を嫌がっていたからな。なくなって清々したか!?」


誰がどうみても八つ当たりだった。

 だが確かに、戦争を止めたのはツミナ、勇者だった。


「ええ、勿論です」


そしてツミナはカラーディナの怒りという油に火を注いだ。


「ツミナっ!」


イルナーがツミナをとがめる。


「これまで準備してきたのだ! ずっとだ! 父を失ったあの日から!」


とがめたところでもう遅い。カラーディナの怒り、憎悪はツミナに向いてゆく。


「其方だろう!? 勇者を呼んだのはっ」


何の根拠もないでたらめだった。


「陛下っ、そのようなことは・・・」

「そうです、ツミナさんは何も」

「言いがかりにもほどがあるぞ」

「言い過ぎです」


そしてその場にいる全員からとがめられるカラーディナ。


「その通りですよ、陛下。勇者があの場にいたのは私の差し金です」


ツミナの一言で状況は更に悪化する。

 イルナーやルルー、ヴァル、ナツナももうかばいきれない。


「つ、ツミナ? はったり、だよな?」


イルナーがツミナに聞く。嘘であってほしい、と願っているのだ。


「いや。本当だ」


ツミナはそんなイルナーの期待を裏切る。


「ツミナぁっ!!!」


そこまで黙っていたカラーディナがツミナに襲い掛かる。

 皆が止める間もなく。


ガツッ


拳の音が鳴る。

 ツミナは殴られていた。おとなしく。

 カラーディナは逆に防がれなかったことに驚いている。


「殴ればいい。貴方のほとぼりが冷めるまで」


ツミナがカラーディナに言った。それは、とても優しい眼だった。


「っ・・・」


カラーディナの瞳から涙が落ちた。

 そのまま、崩れ落ちるカラーディナ。


「我は、ただ、復讐したかった。父を奪ったものに。全てを持っているものに。悔しかった。誰も悪くないと、わかっていた。しいて言うなら、父本人が悪かったのだ」


自分でもわかっていた。納得できなかっただけで。そう、カラーディナはこぼす。


「でも、誰かにその悔しさを向けないと、私は生きていけなかった。辛かった」


王としての立場をすて、死んだ父の娘として語るカラーディナ。


「そして、それに他人を巻き込んだ。勇者の言う通りだ」


泣きながら話す。

 地面に手をついて。


「ツミナよ、悪かった。怪我を、させた」


涙をぬぐって立ち上がる。

 そしてツミナの頬に手を伸ばす。


「大丈夫です。healing」


ツミナは自分にhealingをかける。


「これから、やり直す時間はいくらでもある」

 ここまでこの作品を読んでくださってありがとうございます!


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 これから更新する際の励みになりますので、お願いしますm(__)m!

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