久しぶりの街
ツミナは休暇をもらった。理由は不明。戦争のことかもしれない。
だが、いい機会だ。
(久しぶりに町まで降りよう)
ツミナは旅人の時の服に戻って、街へ行くことを決めた。
1
「騎士様?」
王城を出るとき、声をかけられた。
不審人物と間違われると困るのでフードはかぶっていないから、顔がばれたのか。
「ナツナさん」
振り返るとナツナが。
「その服装は・・・?」
「ああ、陛下に休暇をもらったんです。せっかくなので街に行こうと」
説明すると、ナツナは少し考える素振りをしてから。
「私もついていってはいけませんか?」
と言った。
2
「お待たせしました」
王城の入口付近で兵と話しながらナツナを待っていたツミナ。
ナツナが来たので兵に別れを言ってツミナは街に向かった。
「結構にぎわっていますね」
「観光には向いているようなので」
ナツナが早くも興味を示している。
「ナツナさんはこの国の出身ではないのですか?」
「私はこの国の者です。ですが、・・・生まれたのは、スラムだったので・・・」
スラム。どこにでもあるであろうそれは、貧しい者たちが集まる貧民街だ。
「そうでしたか」
「いえ。・・・騎士様は驚かないんですね」
ナツナが驚かれなかったことに驚いていた。
「ええ。私も、生まれはスラムでしたから」
「そうなのですか!?」
ツミナも生まれはスラム。
裕福、と言っていいのかはわからないが、王城で暮らし始めたのは勇者と発覚してからだ。
「途中で孤児院に引き取られましたがね」
「そうだったんですか・・・」
お世話になった人々の顔が浮かんでくる。
「ところで、ナツナさん」
「はい?」
「今は身分がばれると困るので、『騎士様』はやめませんか?」
「あっ」
街でカラーディナの騎士だとばれると大変なことになるのは目に見えていた。将軍の地位であるナツナもそうだ。
ツミナは顔がばれているのでフードを被り隠している。
「すみません」
「いいえ、大丈夫です。これからは「ツミナ」でいいですから」
「ツミナ、さん」
「はい」
にっこりとした雰囲気にのまれて少し頬を赤くするナツナ。
「ではどこから行きましょうか」
「あ、私、行きたいところが・・・」
歩き出したナツナにツミナはついていった。
3
キィィィ、と嫌な音を立てて扉が開く。ツミナがナツナに連れてこられらのは古びた家。
「ここは・・・?」
「私の恩人にして師匠である方が、私に買ってくれた家です」
家を買ってくれたとは、かなりの金持ちなのだろうと考えるツミナ。
「師匠、ということは、貴方に剣を教えた人、ということですか?」
「ええ、そうです」
大体予想がついてきた。恐らく彼女の師匠、というのは――
(サクラ、か)
《剣豪》サクラだろう。だから『連続剣』が使えた、と考えるのが妥当だ。
「その師匠という方は、さぞ強かったでしょうね」
ツミナが微笑んで呟く。
その言葉を聞き取ったナツナが明るい声を出す。
「はいっ! とても強くて、私、一度も勝てたことがなくて・・・憧れの人です!」
喜々として語る姿は生き生きとしていた。
「また、会える日が来ると良いのですが・・・」
そして一瞬寂しそうな顔をする。
「会えますよ」
ツミナがそこで言った。
「会えます。そのうちこの国にやってくるでしょう」
断言する。
なぜならツミナが来た場所を追ってきているのだ。必ず来るはずだ。
「ふふっ、ありがとうございます。そうですね」
信じてはいない様子だった。だが、励まされた、と感じているようだ。
「この家に、久しぶりに来たんです」
「住んでいたのではないのですか?」
ツミナが疑問を口にする。
「冒険者なので、依頼を受けていて・・・実は1か月ほど家を空けていたのです。そこへ将軍試験のことを知り、そのまま・・・」
「そうだったのですか。ちなみに、どうして試験を?」
ツミナが気になっていた点。ナツナは別に将軍、という物になりたかったわけではないと思うからだ。
「・・・あの人の弟子に見合う地位が欲しかったんです。将軍でなくとも、何か、それこそ、騎士など・・・」
確かに、《剣豪》サクラはこの世界最強の剣士だ(勇者を除く)。その弟子、となれば、周囲からはそれなりの地位が期待される。
「その方の名声が高いのなら、確かに地位は必要です。ですが、それだけに飲み込まれないようにしてください」
ようはプレッシャーに負けるな、ということだ。
「はい・・・それを師匠が望んでいないことは、わかっている、つもりです。それでも、私は――」
切羽詰まった様子になるナツナ。かなり追い込まれている。
「必要なんです。あの人の隣に立つにはっ!!」
声を荒げる。
「彼女はそんなことを願っていない」
「わかってる! そんなことは!」
頭を抱えるナツナ。
「でも、私は納得できない・・・私の問題なの・・・」
座り込んでしまったナツナに、ツミナはかがんで目線をあわせる。
「彼女は貴方のことを思っているはずだ。それを忘れてはいけない」
ツミナは、ナツナをなだめるように言った。
そして、ナツナの頭に手を置く。
「ここまで頑張ってきたんですね」
頭をなでる。
安心したように彼女は涙を流した。
そのまま、ナツナはツミナの胸で泣いた。
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