将軍任命試合 2
時間は意外と早く、今日は将軍任命試合の日だ。
試合会場となる王城の外の広間には予選を突破してきた者たちが集まっている。
「皆の者、よく集まった。今日は王国との戦争で将軍として戦う者を選ぶ為、我の騎士・ツミナと戦ってもらう。勝ったもの、もしくは認められた者を将軍の地位に任命する」
カラーディナが宣言した後、用意された豪華な椅子に腰かける。
その後ろではイルナーが控えている。
「どうした? 誰からでも良いぞ」
カラーディナが付け足すが、誰も顔を見あわせて動こうとしない。
ツミナはその様子をみてため息をつく。
「・・・誰も戦う気がないのなら私は別の仕事に移りますが」
呆れた、というように言った。軽い挑発だ。
「そこまで言われて黙ってるわけにはいかねぇ。俺が最初に行かせてもらうぜ」
その軽い挑発に乗ったのはがたいの良い男。
(挑発に乗る時点でアウトだ。戦争では使い物にならない)
一応真面目に考えるツミナ。
「どうぞ。いつでもいいですよ。かかってきてください」
ツミナが剣を抜かずに構えもとらないまま男にそう告げる。
「っ、てめぇ、なめてんじゃ、ねぇ!」
男が叫びながら飛び出してきて、そのままツミナに切りかかる。
が、その剣がツミナにとどくことはなく、男は倒れた。
ツミナが男の背後に回り、手刀をくらわせたのだ。
「はぁ、すぐに終わらせたいのでさっさと他の人もかかってきてくれますか?」
ツミナはわざと挑発するように続ける。半分本音だが。
こうして、将軍任命試合は幕を開けた。
1
「ツミナよ、もっと面白い試合をせい! なんでも一撃で終わらせては芸がないではないか!」
試合途中、カラーディナから不満が出た。
ツミナが誰でもかまわず手刀だけで終わらせるからだ。
「・・・陛下、こうなること、予想していたのではないですか」
「イルナー・・・だが・・・これでは全く持って面白くない・・・」
少しなだめられるカラーディナ。イルナーも正直頬を引きつっている。
ツミナは今に至るまで一度も剣を抜いていない。
(せめてサクラくらい連れてきてくれれば試合になるのですが・・・)
ツミナ自身も試合に対して興ざめしていた。《剣豪》サクラのレベルの剣士を連れて来いと考えるがそれは本人以外無理である。
「残り3人ですか」
朝から開始され、まだ昼にも達していないというのに既に残り人数は3人。
「次は僕とお相手いただけますか?」
先に出てきたのは微笑みながら出てきた容姿の整った青年。女性が騒ぎそうな類の男だ。
「ええ、構いません。それに、貴方となら少しは楽しめそうだ」
ツミナもほほ笑んで返す。
だが、その言葉に青年がぴくっと眉を動かす。ツミナとしてはこれでも評価したつもりだ。ただ、試合になるか、と聞かれると、ならない。
「では、行きます」
スッと剣を構えた青年は、流れるようなスムーズな動きでツミナに迫る。
が、ツミナは剣を抜きもせずに剣を止めた。
その場にいた全員が騒然となる。剣を素手で止めるなど前代未聞のことだった。
ただ、ツミナは剣の腹を手で触り、力を加えて剣の動きを止めている。
「なっ・・・」
青年も驚いている。
「ああ、すみません。つい」
ツミナは何でもないと笑って見せる。
青年は悔しそうしながらに後方に一旦下がる。
「エンチャント・祝福」
すると青年が何事かを呟く。
その言葉を聞き届けたように、青年の剣が光り出す。
どこにでもある普通の剣だったその剣は、光が収まった後、柄が金色に光り、刃が銀色のように煌めいている。それはまるで――
「勇者の、〖聖剣〗・・・!?」
周囲がざわめく。さすがに誰でも〖聖剣〗のことは知っている。知識として。
青年が持っている剣をそれと認識するのは当然のことと思えた。
2
「はっ、はっ、っ、はぁっ・・・」
数十分後、青年が地面に大の字になって寝そべっていた。
女王の前だとかそんなことは言ってられないほど疲労しているのだ。
「ま、さか・・・アレを、使ってまで、っ、まけ、るとは・・・思わなかった、な・・・」
途切れ途切れに青年が話す。
「私も驚きましたよ。まさか〖聖剣〗(もどき)を出してこられるとは」
会話の中に本音が混じっているが、そこは置いておこう。
ツミナがもどき、と考えた、それは事実。青年のあの剣は、〖聖剣〗ではない。
「い、いえ、あれは・・・〖聖剣〗では、ありません・・・」
心の中でそうでしょうね、と思うツミナだが、勿論、口には出さない。
「ある言葉を呟くと、一時的に、ああなるんです」
少し息が整ってきた青年が上半身を起こす。
(一時的・・・ある言葉、とは先ほど呟いていた言葉か・・・)
ツミナは悟られないように始終微笑んでいた。
(この青年、先代勇者と関係があるのかもしれないな・・・)




