勇者のいない勇者パーティー
馬を引いた4人の女性が王国入口の列に並んでいた。
その身長や体形から女性だとはわかるが、フードを被っているために顔はわからない。
「ツミナさん・・・やっと会えますのね」
「本当。何にも言わずに聖国を出ていくから大変」
「私たちの苦労も知らないで」
《聖女》リア、《賢者》ユキネ、《剣豪》サクラの順に話す。
(どどどどうしよう・・・ついについちゃったよ~)
《神弓》ララだけが焦っていた。ツミナの協力者であったのにそれを裏切るような真似をしてしまったからだ。まぁ、仕方がなかったといえるが。
(どうか、どうかこの国を去っていますように)
コールを入れたから逃げているはずだ、と願っているララだった。
1
王国内に入ってからまずツミナにコールをかけることにした。
「んー、つながらないよー?」
「ツミナさん、コールに気づいてないのかな?」
「無視してる可能性あり」
不穏な空気が流れる。
ツミナがわざと無視しているのではないかと。
「まっさかぁ。ツミナに限ってそんなこと」
「ですわよね」
あははは、と笑う皆。
(あああああ、怖いってまじでぇ)
ララが一人頭を抱えている。
コールがなりまくっているツミナに対して少し同情したララだった。
2
頭に響く音。コールがなっている。
(3人一気にかけてこないでくれ・・・)
頭を支えるツミナ。
今は騎士の仕事の最中だ。
「どうした? ツミナ」
イルナーがツミナを見て声をかける。
「い、いや、ちょっと頭痛・・・」
コールを誤魔化す。コールは他の人にはわからない。たとえそれが優秀な魔術師でも。
「そうか、仕事ができないほどなら休めよ」
「ああ、大丈夫。少ししたら治る」
ため息をつく。
「ツミナ様、陛下がお呼びです」
玉座の門の前で仕事をしていたら中から呼ばれる。
「わかりました、すぐに」
憂鬱な足を踏み出して玉座の間に入った。
3
ツミナにいくらコールをかけてもでないので、リア、サクラ、ララ、ユキネは王国を観光していた。
「前に王国に来た時はもっと栄えていたと思うのですが・・・」
リアが感想をこぼす。
「そうだな」
サクラが答えた。
今でも王国は栄えている。前回よりは、と比較してそう言っているのだ。
「お待たせ」
すると屋台に食べ物を買いに行っていたユキネが戻ってきた。
「じゃぁ、行きましょうか」
ララが言って一行が進みだす。
「さっき、おばさんから聞いた」
「え、何を?」
ユキネの声に振り返る。
「近い内、法国と戦争になるって」
その一言で空気が変わる。
周囲も例外ではない。だが、周囲の人が、というより、4人の雰囲気にのまれて一般人が動けなくなった。
「・・・落ち着いて」
ユキネが静かに言った。
それで他3人が力を抜いた。
周囲の人もなんだなんだとなりながらも動きだす。
「すまん」
「つい、気が立ってしまいましたわ」
「私も。ごめん」
皆が謝る。
「戦争なんてくだらない単語を聞いてしまいましたわ」
リアがふふ、と微笑む。
内心はすごく不機嫌だ。
「お前たち! 止まれ!」
すると衛兵がやってきた。
「あら、なんの御用で?」
「貴様たち、何者だ!」
リアが静かに聞くが、衛兵は怒鳴る。
恐らく、先ほどの異様な空気を作ったのが4人な為、警戒されているのだろう。
「答えろ!」
衛兵が再び怒鳴る。
だが、答えた瞬間、この衛兵の首は不敬罪でとぶだろう。いくら原因が4人にあるとはいえ、勇者一行に怒鳴り散らせば。
「こ、答えなければ――」
恐怖からか衛兵が持っていた剣の柄の手をかける。
その時、ひゅっと男の喉がなった。
「それを抜くということは何をされても文句は言えないぞ」
衛兵に向かってサクラが告げる。サクラの剣が、鞘に収まったままだが男の首を仕留めている。寸止めで。
「あ、そ、そん、な・・・」
衛兵が剣から手を放す。
サクラも剣を腰に直す。
「サクラさん、あんまりいじめては可哀そうですよ」
リアがふふ、と笑う。
「リア・・・別に私はいじめている訳では・・・」
サクラが呆れ顔で話す。
「さ、皆、もう行こうか。衛兵さん、よろしいですね? ユキネ、行きますよー」
「ララさんも言うことですし、行きましょうか」
4人はその場を去る。
全員の名前を知り、衛兵が別の意味で震えている。
「ゆ、勇者、ご一行・・・」
小さくつぶやいた言葉は、幸い、誰にも届かなかった。




