決着
「こんなことは認められない!!」
怒鳴るオルガンの声。
「これは、堂々とした剣での戦いだっ! それを、それを蹴りで相手を負かすなど・・・言語道断だ!」
誰が聞いても苦し紛れの言い訳だ。
「オルガンよ」
「は、はっ!」
オルガンがカラーディナの声に改まった返事を返す。
「其方はどうしたいというのだ」
「わ、私は・・・も、もう一度、勝負を・・・」
もう一度勝負をやり直してほしい、とオルガンが懇願するのを、オスタルが止めた。
「いえ、その必要はありません。何度やっても、結果は同じです」
「なっ、お前!」
オスタルの言葉にオルガンが更に焦る。
「陛下っ、そんなことはありません! 実際、いい勝負だったではありませんか!」
オルガンの弁解を聞いて、カラーディナが静かに言った。
「其方、まさか我の騎士が本気で戦ったとでも思っているのか?」
「へっ?」
カラーディナの言葉にオルガンが腑抜けた声を出す。
「まさかそこらの剣士と一緒にされては困る。此奴の腕前は確かだ。この国でかなう者はいるかどうかわからない」
「そ、そんな・・・」
今更、無謀だったことに気づくオルガン。
そんなオルガンを、カラーディナは嘲笑う。
「これも民をの声を無下にしたお前の罪だ。潔く諦めよ、オルガン。見苦しいぞ」
オルガンがうつむいて拳を握りしめる。力尽きて諦めるかと、やっとかと周りの誰もが思った。
「・・・この国は、お前のような女に任せて良い訳がない!!」
だっとカラーディナに向かって足を踏み出すオルガン。懐から差し出された短剣。
カラーディナは咄嗟に後ろによける。が、来ていた服と、肌を刃がかする。
「陛下!」
イルナーが叫んだ時には既に終わっていた。ツミナの手によって。
「ぐぅ・・・」
うつ伏せになってツミナに抑えられているオルガン。
「お前は、自分の罪を理解していない」
ツミナの声。反論するようにオルガンが声を上げる。
「当たりまえだ! 私は罪など犯していないのだからな!! 民? 私は貴族だ! 愚民は私に従うべきなのだ!」
わめくオルガン。
ツミナの抑える力が強くなる。
「――黙れ」
腹の底から出されたような低い声。威圧感のある言葉。
震えるオルガン。
「お前は彼らを愚民と言う。だが、お前は彼らの何を見た。働く彼らの姿なんて、見たこともないくせに」
どんどん低くなる声。そして、威圧感が――殺気に変わる。
「お前たちはいつもそうだ。自分のことばかり。俺たち民のことは道端の小石のように扱う。その傲慢さこそがお前の罪だ」
「だ、だ、が・・・」
重力に押されているような感覚。それに抗ってまだ反論しようとしたオルガン。
「――これ以上俺を不快にさせるな」
ツミナがその言葉を発した瞬間、オルガンは身動きしなくなった。
何故って?
気絶したからだ。
ツミナの殺気に負けて。
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「ふ、ふ、ふふ、はははははっ!!」
玉座。そこに座ったカラーディナとその後ろに備える2人の騎士と魔術師。ツミナとイルナー。
「あれは傑作だった。まさか気絶するとは!」
オルガンのことだ。
「そうですね。私も抑えたつもりだったのですが・・・」
「あれで!?」
ツミナの言葉にイルナーが突っ込む。
「確かにな。我も体が震えたわ」
身震いを見せる。フリをしているとわかっているので苦笑いをするツミナ。
「お前、二重人格か、ってくらい性格変わり過ぎだろ!」
「あはは」
「それは我も思ったぞ。いや、確信した。二重人格だ、こやつは」
「陛下も何気に失礼ですね。違いますよ。本当の性格を隠すでしょう。それと同じです」
そのとたん、カラーディナには爆笑され、イルナーには不審げな目で見られた。
ツミナも少しつられて笑う。イルナーもだ。
これでいいと思った。最初は疑っていたが、カラーディナも悪い奴ではなかった。イルナーも面白い奴だった。
これで、これで――
――王国との戦争がなければ。
平和な世界を見れたかもしれない。
楽しいままで、入れたかもしれない。
だが、どうしても戦争は、避けられなかった――。




