決闘 2
「決闘しませんか。私と、貴方で。もし私が負ければ、陛下に何を頼むも自由です。そして、貴方が負ければ、罪を認める。どうですか?」
カラーディナの騎士、ツミナが不敵に微笑んだ。
なっ、とイルナーが声を上げかける。カラーディナは驚きはしたものの、ツミナにこの場を任せている。
「決闘、だと? 剣術の達人ともいえる陛下の騎士と、剣術を少しかじっただけの私が? 非情に不公平だ」
「いえ、貴方自身と、とは言っておりません。代役を立てていただいて結構です。今回の為に腕利きの者を雇っていただいてもかまいません」
少し考えるオルガン。
「・・・だが私が負けた場合、私は潔白の身にも関わらず罪に問われるのでは?」
「そこは納得していただくしていただくしかありません。ですが、ここは血気盛んな若者も多い。法国は軍事国だ。力で全てが決まる」
そこでツミナが一旦言葉を切る。
「―――この国に似合ったやり方だ」
冷え切った眼が、彼――オルガンを襲った。ぞっと背を走る悪寒。従わないことを許さないような、絶対的王者の眼。
「わ、わかった。いいだろう」
「そうですか。では3日後、またお伺いします」
オルガンが了承した瞬間、けろっと空気が変わった。
「ああ。――ということなので、陛下。また後日、お越しいただけますかな」
まだ顔から青が抜けないオルガンがカラーディナに問う。
「承知した。3日後、また来る」
そう言って、カラーディナはツミナとイルナーを連れて屋敷を去った。
2
カラーディナが去った屋敷で、オルガンは執事を呼びつけていた。
「すぐにあいつを呼べ」
「かしこまりました」
執事が礼をして部屋を出ていく。
「くくく、これであの女も終わりだ。浅はかだった自分の騎士を責めることだ」
にやにやと笑みを浮かべたオルガンは、己の勝利を信じて疑わなかった。
3
「おい! なんてことを・・・」
屋敷を出てからイルナーに怒鳴られた。主人の前ということも忘れてツミナを注意している。
「もしお前が負けたら陛下の御身にかかわるんだぞ!!」
ただ、カラーディナのことを考えての発言の為、カラーディナは止めはするものの、咎めはしない。
「イルナー、良い。良いのだ。ツミナよ、どうするつもりか、聞かせよ」
カラーディナがツミナに向き直る。
「どうする、ですか? ただ決闘に勝つだけですが・・・」
当たり前のように答えるツミナ。
「なっ、勝つための備えは!?」
「備え? ないですよ。日ごろの訓練を続けるだけですが・・・」
イルナーに指摘されるが、ツミナは普通に答えた。
「しょ、勝算は?」
「今の所は99%、ですね」
100%、とは言い切らないが、それでも99%。
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ・・・」
イルナーが呆れた声を出す。
「そうか・・・まぁ、それに賭けるのも悪くない」
カラーディナが小さくほほ笑む。そしてまた歩みを進めた。
だが、ツミナは進まない。
「? どうした?」
カラーディナが問う。
ツミナは、少し間をおいて口を開いた。
「私は、最初、貴方に良い印象を抱いていなかった。平気で人を欺く奴だと思っていた」
本音をぽつぽつと語りだしたツミナ。
「お前!!」
イルナーがその言葉に反論しようとするが、カラーディナに手で制される。
「確かに、我はそうだ。リンデル王国で見た其方はそう思うであろう。当然だ」
カラーディナがツミナの言葉を肯定する。
「けれど、貴方がそれだけでないこともわかった。貴方はちゃんと、民のことを思って、考えていた。それが分かったから、私は、今回貴方の味方をする。そうなるからには――勝つ」
鋭い眼。
その眼が、今、カラーディナにはとても頼もしく見えた。




