視察
会議から数日後、カラーディナはツミナとイルナーとその他近衛兵数名をつれ辺境の町に視察に来ていた。
今、辺境の町では税金が払えずさらには餓死という問題もおきかけている、ということだった。が、実際に行ってみるとそんなものではなかった。
民は道端で倒れ、作物は世話する人がいないのか痩せこけかれている。食べ物もろくにないようだった。民の人数もかなり減っているようだ。
「・・・」
ツミナはこの状況をみてただただ黙っていた。イルナーは戦争に対してツミナが良く思っていないことを知っているために少し様子を伺っていた。
「私はこの国の王、カラーディナ・エル・パウラだ! 町長はいるか!?」
するとカラーディナが大きな声で叫んだ。
だが、勿論返事は帰ってこない。皆、話せる状況ではないのだから。
「これでは町長がどこにいるかわからん。それに誰が生きているのか死んでいるのかさえ・・・」
カラーディナぽつりと言葉をこぼす。
「陛下、後は私たちで探します。こんなところにいて病気がうつっては大変です。お下がりを」
近衛兵がカラーディナに声をかける。
「だが・・・」
カラーディナはそれをしぶる。それもそうだろうが。
「さぁさぁ。・・・お前たち、町長を探しておけ」
そんなカラーディナをせかしてから他の近衛兵に指示をだす兵。責任者かなにかだろう。
カラーディナもそれに押されて渋々そこを離れた。
彼女の姿が見えなくなってから近衛兵が町長を探そうと動き出す。
だが、その様子はあってはならないものだった。
「おい、町長の居場所を教えろ」
倒れている民に話しかける兵。返事はない。
「ちっ」
すると兵はあろうことか民を蹴ったのだ。
餓鬼しかけな上に暴力をうけ、民は今にも死にそうだ。
(・・・・・・)
ツミナの心にふつふつと怒りがこみあげてくる。
「・・・イルナーさん、行かなくてよろしいのですか」
ツミナは怒りを抑えてこの場にとどまるイルナーに問う。できれば、この場を離れてほしかった。
「いや、私も町長を探す。それに、このままでは兵の行いが・・・」
悪化する、といいたいようだ。が、悪化しなくてもこの状態はおかしいのだ。
「そうですか」
ツミナはそれだけ言って先ほど民を蹴った兵の方へ向かう。
「・・・? なんだ?」
近衛兵は急に近寄ってきたツミナを訝しみ聞いた。
その答えは、言葉では帰ってこなかった。
「がっ!」
近衛兵が吹っ飛ぶ。ツミナに腹を蹴られて。
「ぐっ、げっほ、げっほ。なっ、何をする!」
せき込んだあとに兵が怒りをみせる。
ツミナは兵に近寄って彼の胸倉を掴み上げた。
「お前こそ・・・何をしている!! 民を救うために兵になったのではないのか!? 民を傷つけて、自分より弱いものを傷つけ、何をしているのだ!! 救いを求める民に暴力を振るうとは・・・っ」
怒りがこみ上げる。最後は言葉にならずに拳が出る。
がっと殴られた兵はぴくぴくと痙攣している。ツミナは力を制御するのを忘れている。勇者の力で殴ら手は普通の人間はすぐに死んでしまう。
使い物にならなくなったその兵を道に放り投げるツミナ。
そして民の方へ向かった。
「大丈夫ですか? 無礼を申し訳ありません。何か欲しいものは・・・?」
「・・・ぁ・・・ぃ、ず・・・み、ず・・・」
「水ですね」
ツミナは自分の持っていた水の入った水袋を民に渡し、飲ませる。
「あ、り、が・・・とう・・・」
少しましになった、と民は言った。だが、このままでは死ぬ。それは明らかだった。
「cure」
ツミナは小さくつぶやく。
「cure」。「healing」の上、中級魔法だ。効果は「healing」より上がる。
顔色が良くなり、呼吸も安定した民をその場に寝かせる。
そして他の民も同じように癒す。
「high heal」
ツミナは広範囲で行える上級治癒魔法を使う。
呼吸が安定した民たちをみてツミナは少しため息をついた。とりあえずこれで数日は持つ。
「上級魔法を、つかるのか・・・?」
効果の良さと簡単に魔法を使い疲労を見せないツミナをみて、イルナーが驚いた顔をしていた。だが、ツミナはそんなことはもう気にしていなかった。




