女王の騎士選抜
その日、国中にビラが貼りだされた。
【法国の住民、および滞在中の物に命令する。
〇月☓日にカラーディナ・エル・パウラ女王様の騎士選抜試験を行う。
男は成人を遂げているものなら誰でも関係なく参加。あんなは冒険者の物だけの参加とする。尚、実行日までこの国からの外出を禁ずる。参加しなかった場合は刑罰が下る。】
そんな内容のあとに、場所などの細かい事が記入された。
ツミナはそれを見て内心とても苦い気持ちになった。
冒険者ギルドでそれを見つけて呼んでいたツミナは、後ろから声をかけられる。
「やぁ、ツミナ殿」
「ああ、ファラさん。こんにちは」
「何をみていたんだい?」
ファラがツミナの見ていたビラを見る。
「ああ、これか。ツミナ殿も参加するのだろう?」
「参加するっていうか、しなきゃいけないといいますか・・・」
苦笑いしか浮かべられないツミナに対し、ファラも気の毒だ、というように苦笑する。
「まぁ、でも、ツミナ殿の実力ならいいところまで行けるだろう。もしかしたら騎士もあり得るかもな」
「いやいや、そんなまさか。私がそんな大役を仰せつかるほどの力を持っているわけでもあるまいし・・・」
ははは、と笑ってごまかすツミナ。
ツミナの実力なら必ず騎士になるだろう。今、ツミナに、いや、勇者にかなう相手などいないのだから。本気を出せば、の話だが。
「ふぅん、そうか」
ファラは疑うような眼でツミナを見る。
「あはは、」
ツミナはそれに苦笑いしかできず、そして、その騎士選抜に備えることしかできなかった。
1
ツミナは指定された場所に、指定された時間に到着した。すっぽかす手もあったのだが、刑罰は面倒なので適当にごまかして帰ろうと思っているのだ。
そこではすでに人だかりができていた。
こんな大勢からどうやって選ぶのだ、と思いながらもその集団の中に紛れ込む。
そして、時間ぴったりになったところでざわざわと騒ぎになる。
見てみると、女王だ。女王本人が皆の前に立っている。
「皆の者、よく集まった。今日は我、カラーディナ・エル・パウラの騎士選抜を行う。ルールは簡単だ。2人組になって試合をしてもらう。怪我をさせても許す。死者も想定済みだ。負けた者は即刻帰れ。最後の一人まで勝ち残った者が我の護衛だ」
わぁぁぁぁっと歓声が上がる。
そして女王、カラーディナは観客席のようなものが用意されている場所へ戻った。
すると皆が早速2人組を組み始める。
「おい、俺とやろーぜ」
「ああ、いいぜ」
「俺とやらないか?」
などなど。ツミナは少しの間ボーとしていたが、誰かから声をかけられる。
「あのぉ、」
「はい?」
ツミナが振り返ると、男性はびくっとした。
「ぼ、ぼくと戦っていただけませんか?」
「・・・ええ、いいですよ」
ツミナはそれを承諾した。
が、相手は見るからに弱そうな男。猫背で剣など握ったことがなさそうだ。
一応剣を腰にさしているが、新品のようだ。今回の選抜の為に買ったのだろう。
ツミナもまだ1度しか使っていない剣だが、さすがに冒険者がこの男に負けるのは危険だ。あやしまれる。それに、ここにはファラもいるはずだ。
双方が剣を構えたところでツミナが開いてに言う。
「どうぞ、かかってきてください」
すると男は少し戸惑ってからツミナの方に向かってきた。
「や、やぁぁぁぁ!」
そして、ひ弱の声と共に剣を振り上げる。隙が多すぎる。
ツミナは反射的に素早く胴を切り裂こうとしたが、とどまる。
男の剣を一旦受け止めてから距離をとる。それからツミナは男の方へ走っていく。
剣をスローモーションで振り上げる。それを受け止めた男は後方へ転んだ。
ツミナが剣を首もとに突き付ける。
「ま、参りました・・・」
男は真っ青な顔になって降参した。
「ありがとうございました」
ツミナはにっこり笑ってお辞儀した。最初から同じ、優しい目だ。
相手もお辞儀をしてから去っていった。
(はぁ、面倒くさい)
ツミナは心の中で毒づく。
「兄ちゃん、終わったなら俺とやろうぜ」
すると下品な笑い方をするがたいのいい男が近寄ってきた。
ツミナは小さくため息をついたのだった。




