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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~裏切りの騎士~
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オーク討伐の依頼 2

「見苦しい姿を見せてしまって申し訳ない!」


 ファラがツミナに向かって深く頭を下げる。


「いえ、何もなくてよかったです」

「・・・実は私は朝に弱くてな」


その言葉にツミナが首をかしげる。


「昨日は早かったですよね」

「ああ、あれは王都に借りている部屋の同室の子におこしてもらっていて・・・」


少し顔を赤らめるファラ。かなり恥ずかしかったのだろう。


「あ、それで今日のことですが・・・」


ぐぅぅぅぅ


そこでファラの腹の虫が鳴る。

 ツミナが目を点にしてから少し笑った。

 ファラは真っ赤になってうつむいている。


「ファラさんは朝食、まだでしたね。話は下でしましょうか」

「そうしてくれると、助かる」


 そして二人で食堂へ行き、今日の話をしたのだった。



 ツミナとファラは朝食を食べた後、準備をしてすぐにオーク集団を討伐すべく森へ出かけた。

 ツミナは法国に入ってから購入した安物の剣を腰に下げている。


「ツミナ殿はオーク集団に討伐は初めてか?」

「はい、実はまだ冒険者の依頼を受けたことはあまりなくて・・・」


ツミナは勇者としての仕事をしていたので、冒険者になったのは最近だ。更にリンデル国王では王女の護衛をしていたので冒険者の依頼はやっていない。


「そ、そうなのか!? それでオークの討伐を受けるとは・・・相当腕に自信がないとできないぞ」


一応いうと、ツミナは冒険者を始めたばかりなのでツミナのランクは一番下。

 冒険者は数字でランク分けされ、それぞれ5段階ある。ランクによって受けられる依頼が指定されているものと指定されていないものがあり、そして5級が一番下のランク、1級が一番高ランクだ。5級が駆け出し、4級が森の探索、ゴブリンなどの弱い魔物の討伐が基本だ。3級になると、オーク討伐などの中級魔物の討伐。2級になるとベテラン冒険者といわれ、護衛の仕事などになる。1級は勇者パーティーレベルだと言われている。

 ちなみに《剣豪》サクラは1級冒険者だ。

 ファラは3級。


「あはは、ファラさんの足は引っ張らないので安心してください」


笑いながら言うツミナに少し不安を覚えるファラだが、オークと戦うその時、そのフランは杞憂だったと思い知らされることになる。



 ツミナ達は森の中の洞窟に来ていた。

 オークやゴブリンたちも同様だが、洞窟などを巣にすることが多い。

 そこで2人は見つけた洞窟を手当たり次第に当たっていたのだ。


≪ツミナ殿、いたぞ≫


ファラが小声でツミナに知らせる。

 ツミナは小さく頷いて影からオークたちの姿を伺う。


≪どうします? 正面から行きますか? それとも目くらましをいれますか?≫

≪いや・・・あの数なら正面からでも行けるだろう。それに、私が目くらましにかかりそうだ≫


ということで正面からの突撃になった。


≪あと5秒でいく。合図を出すから私に続いてくれ≫


こくりと頷いたツミナはファラの様子を伺う。ファラは手で秒数を数える。

 そして、それが1になって――


 だっと走り出した2人。ファラの後にツミナが続く。

 そこからのファラの動きは確かに見事なものだった。

 剣を抜いたファラはそこからオークたちに襲い掛かる。剣で敵の急所、心臓をついていく。多少の工房の後は必ずファラが心臓を剣でついていた。

 ツミナも初めて使う剣を抜き、オークの首を次々とはねる。ツミナはほぼ攻防もなく首をはねている。

 ファラはその様子を戦いながら横目で伺う。


(オークと戦うのは初めてだと言っていたが、中々の腕前だ。ひょっとすると私より強い可能性も・・・)


ファラはツミナが中々できることを確認すると安心し、ツミナのことを頭から振り返ってオークに集中する。


「はぁぁ!」


ファラがペースを上げる。ツミナはそれを見ながらもそのままのペースでどんどんオークの首をはねている。


(このままファラさんに任せるか。私はできるだけ倒す、だけでいいだろう。あまり疑われても困る)


ツミナの目はいつもの戦闘時になる冷たい目ではなく、いつもの目だった。

 これはツミナが本気を出してない、否、戦いだとすら思っていないからだ。オークの首、魔物と言えど生き物の命をとることにためらいを抱かず、戦いだとすらおもっていない。

 これは少し、どうかしているのではないか、とツミナのことを知った人なら思うであろう。

 そこで大半のオークが倒される。


「これで、最期、っだ!」


ファラがこの場にいるオークの最後の一匹の首をはねる。


「ツミナ殿、無事か?」

「ええ、ファラさんこそ、その血は?」

「これは全て返り血だ。私に負傷はない」


服にべったりとつく血は、全てオークの血だ。少し罪悪感の残る苦笑をするファラ。

 そこで、きらっと何か光るものを視界の隅でとらえるツミナ。

 気づいた時――


「ファラさんッ、危ない!」


手を伸ばす。だが、間に合わない――。

 ツミナは伸ばした手に銃を出す。


パァン!


銃声。

 その後に地面を転がる短剣の音。

 ツミナがファラに向かって飛んできた剣を、〖聖弾〗を出してはじいたのだ。

 ツミナの手には既に〖聖弾〗の姿はない。


「大丈夫ですか?」


ツミナがファラに問う。


「あ、ああ。ありがとう」


ファラは一瞬何が起こったか理解できなかった。

 すると短剣が飛んできた方からぞろぞろとゴブリンと数体のオークが。


「オークに、ゴブリン・・・!?」


ファラはオークがゴブリンと手を組んでいたことに少し驚く。


「集団・・・この数は・・・きついぞ。ツミナ殿、撤退しよう」


ツミナに撤退を促すファラ。

 だが、ツミナは撤退する気はなかった。

 オークたちが、ツミナ達を逃す気がないからだ。


「つ、ツミナ殿っ? 早くしなければ――」


じろ、とツミナがファラの方を目だけで一瞥する。

 ツミナの冷たい目だ。ファラは委縮する。


「ここは俺だけで十分だ。外に出ていろ。邪魔だ」


ツミナに冷たく言い放たれて、ファラはどうしたものかと一瞬迷う。

 が、もうツミナはファラを見ていない。問おうとしても声が出ない。「邪魔」と言われたことを思い出す。ファラは大人しく出口に向かって走った。

 それを見届けたツミナは、オークたちにむかって口を開く。


「さぁ、お前たちはどれだけ俺を楽しませてくれるのかな」


唇の両端を釣り上げた彼は、魔物たちが一瞬んで金縛りにあうような、異様な恐怖を植え付けるものだった。



 ファラは洞窟から出た、日の当たる場所でツミナの無事を祈って彼を待ち続けた。

 だが、ツミナは案外早く戻ってきた。


「お待たせしました、ファラさん」

「ツミナ殿っ」


ファラがほっとした表情を見せる。


「ご心配おかけして申し訳ありませんでした。それと、言葉遣いが荒くなってひどい言葉を浴びせたこと、お詫びします」


頭を下げられてファラが慌てる。


「つ、ツミナ殿っ、私が邪魔だったのは確かだ。あの数の魔物を倒せるツミナ殿は間違いなく私より強い。足手まといだったのは私だ。・・・魔物を倒してくれてありがとう」


最後には微笑んでお礼を言われたツミナ。

 つくづく優しい人のようだ、とツミナは心の中で微笑みながら思ったのだった。

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