プロローグ
森の静かな空気に、邪悪な動きが混ざっている。
少し不愉快な雰囲気だ。
森の中で野宿をしていた青年はそれを感じ取り、自分が狙われていることも含めて理解した。盗賊だ。
後ろから盛大に大きな葉が揺れる音。すると四方八方から同じような音が聞こえた。
「野郎ども! 今日の獲物だぁ!!」
大きな声で怒鳴った奴は盗賊団の頭だったのだろう。
十数名の人が一気に青年を襲ってきた。
青年の目は、冷たく非情に満ちていた。
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「す、す、すいやせんでしたぁ!」
「「「すいやせん!」」」
頭を筆頭に謝る盗賊団。
それを見下ろすのは1人の青年。
彼の目がスッと冷たい目から慈愛に満ちた優しい目に変わった。
「盗賊行為をやめろとは言いませんが、私を狙うのは金輪際、やめてくださいね」
にっこりと微笑む青年に震えあがる盗賊団。
「は、はいぃ! 勿論です!」
「そうですか。では、「healing」」
了承をもらった青年は、盗賊団にhealingをかけた。
盗賊団は縄などかけられていなかった。ではなぜ逃げなかったのかというと、全員、足に怪我を負っていたからだ。足のすねが切られている。逃げようとしても逃げられなかったのだ。
「さようなら」
青年のその言葉を聞いて、盗賊団は一目散に逃げ出した。
ふぅ、と息をついた青年は、地面に腰を下ろす。
(とられる物も持っていないのだが、な)
――法国魔で、あと少しだ。




