勇者降臨
そこにいた全員の顔が恐怖から驚きに変わる。
ツミナが持っていた剣は、靄がかかったような透明な状態から、一瞬光を放ち、姿をあらわにした。
「あ、あれは――」
ざわざわと周囲がざわめく。
ツミナの持っている剣は、金色に輝き神々しさを保っている。そして、そこには魔術式が剣の金色に混ざり浮き出ている。
「聖剣――!?」
誰かが声に出したことで、周囲の人々が更に実感を表す。
そして聖剣には毒に対しての耐性がある。だからツミナは立ち上がれた。
「あれを扱うってことは、あのお方は――」
『勇者』
誰もの思考が一致した。
「まさか――勇者だったなんて」
エツが顔を上げる。
「最高だっ、あんた!」
獰猛にゆがんだ唇は、歓喜に打ち震えているように見えた。
エツが飛び込んでくる。ツミナは聖剣を片手で構えた。
迫ってきた短剣を聖剣で受け止める。もう片方の短剣は銃で破壊する。
〖聖弾〗。勇者にだけ使える武器の1つだ。これを食らった魔物は一瞬で消滅し、悪魔は深手を負う。が、人間にはただの銃と変わりない。
そしてツミナがエツにけりを入れる。が、エツはそれを腕で受け止める。大人のけりをやすやすと受け止めるエツは只者ではない。
するとそこで気配を感じ、ツミナは片手でぱしっと何かをつかんだ。エツも同様で何かを蹴り飛ばす。
短剣だ。が、勿論エツのものではない。
その時、ぞろぞろと黒いフードを被った者たちが出てきた。
「お前たちを、排除する」
1番前にいた者が一言話した。
「俺も道連れ、か」
エツが小さくつぶやいた。
それを見て、ツミナが聖剣をしまった。
戦闘状態の様子も解いたようだ。目が優しくなる。
「ここは一時休戦ということでいかがですか?」
「・・・」
エツが小さく頷く。
「では、清掃の時間です」
にっこりと笑った彼の顔は、冷たい目よりも恐怖の対象だった。




