刺客の少年
「見つけた――」
そんな子供の声。ツミナがはっとして振り返る。
今ここにはたくさんの人がいて、その声は小さなものだった。だが、ツミナには聞こえた。確信的にだ。
「シュイーツさん、イザベラさん! ここから早く非難してくださいっ!」
ツミナが2人の方を振り返ったその時。
「ツミナさん!」
「危ないっ」
悲鳴のような2人の声。ツミナ自身も何がいるかはわかっていた。
「ぐっ!」
肩に痛みが走る。
周囲の人々から悲鳴が上がる。
ツミナの肩にはナイフが突き刺さっていた。
ツミナは早急に肩にあるナイフを抜き取り、healingをかける。
「予想はしていたが、早かったな。《風の子》エツ」
フードの小さな少年に話しかける。
風で少年のフードがめくれる。
「覚えていたんだ」
少年の顔は、喜びに震えていた。
「私を狙ったのは少し予想外だったよ」
「俺はお前と殺り合いたい」
その言葉を聞いて、ツミナが戦闘に入る状態に変わる。
冷たい目だ。
「ならば早く終わらせよう」
「できるならば」
エツが短剣を抜く。彼の主流は短剣だ。
2人の間で、何かが鳴った。
ツミナが走り出す。ここは戦闘の棟なので、剣の切り合いの見世物も行っていた。剣の束が立てられている場所がある。
そこから剣を抜き取った瞬間、後ろから気配が濃く感じられた。
瞬時に振り向き剣を体の前へ。エツの剣が受け止められる。
2人の周りと民衆の間には大きな空間が開いていた。誰も近寄ろうとはしない。当たり前だが。
エツが次の攻撃に移る。回転してから剣をツミナの横腹に差し入れようとする。
ツミナが持っている剣で応戦する。
「お前は剣士の癖に剣を常備していないのか」
「・・・しているさ」
戦闘になると口数がへるツミナだが、そこは律儀に答えた。
「ならどうしてそれを使わない」
「ばれたら困るから」
何を、とは言わない。
「本気で戦え」
「本気で戦わせてくれ」
ツミナはいつにもなく好戦的だったかもしれない。
エツがツミナから距離をとり、片手に5本ずつ短剣を持つ。それをツミナに投げる。
ツミナは避けるが、その後の攻撃を防ぐために1本だけ顔をかすめる。
「ぐっ」
ツミナが声を漏らす。それはかすった時の痛みからではない。
耐えられずに膝をつき、そして、地面に手をつく。
「それは即効性のある毒が塗ってある。かすれば十分だ」
「・・・っ」
「お前ならよけないと思った。先を読むから」
エツに見透かされたことに少し情けなさを覚えるツミナ。
「早く処置しないと数十秒後にあんた、死ぬよ――」
その言葉に周囲の人たちが驚く。
悲鳴を上げたり逃げようとする人たちも。だが、押し寄せる人々の波に誰も逃げられない。
「せ、先生から離れて!」
するとそこに聞きなれた声がした。
「オスクーファ家の長女として、剣で貴方に、勝つ!」
イアリの声。すると、イアリ以外の子たちも前へ。剣術分野の子たちだ。
「そ、そうだ!」
「先生だけに任せてらんねぇ!」
「重症追ってるのに!」
周囲もそれを応援し始める。
(やめ、ろ・・・君たちじゃまだ、あいつにはかなわない・・・っ)
ツミナの目や、態度や、話し方が変わっても、まだ先生だと言って来る彼女ら。
どうして自分は倒れ、彼女らが前線にでるのをよしとしているのか。
「せっ、先生!?」
1人が声を上げる。全員がツミナの方を振り返った。
ツミナが立ち上がったのだ。
「ど、うして・・・毒は・・・!?」
エツが驚きに顔をゆがませている。
「毒が聞いていたら、俺は何千、何万回と死んでいたよ――」
ツミナが口を開く。
その手には、光る何かが出現した。
「さぁ、お前の言う本気、というやつで戦ってやろう。《風の子》エツ」
剣を構えた彼は、そう言い放った。




