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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~学園の教師になってしまった元勇者~
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学園祭

 いつもよりにぎやかな学園内を歩くツミナは、生徒の生き生きとした顔を見ながら、少し満足げだった。

 ツミナには学園に通った経験がない。勇者として鍛えていたため、学園の勉強などは必要なかった。勇者とではレベルが違い過ぎるのだ。代わりに、ツミナには優秀な師がつけられていた。


「あ、ツミナ先生! 今試食できますよ!」


するとある女生徒に話しかけられた。


「本当ですか? 興味がありますね」


ツミナはニコニコしながら呼ばれた方へと向かった。



 学園祭となれば忙しいのは生徒たちだけではない。教師たちも同様だ。特に管理が難しくなり忙しさが増す。更には学園祭の費用をすべて学園が出し、物品も学園が用意しているので慌ただしさは尋常ではない。


「これどこから請求来てましたっけ!?」

「それは学問分野のダンムくんから――」

「商会から取り寄せた者ですが請求書が来てます! 学園長、許可を!」

「まて、こっちも今は手が離せない!」


ツミナが教員室に入るとこの慌ただしい会話。耳がキーンとなりそうだ。


「あ、ツミナ先生! 荷物、届いてましたか?」

「ええ。準備室まで運んでおきました」

「ありがとうございます。それで、こっちの資料なんですが・・・」


ツミナもあわただしさの渦に巻かれて、宿に帰る時間はなかった。



 学園祭当日は、思ったよりも早く感じられた。


「い、いよいよですよ・・・」

「はい、そうですね。忙しさの本番です・・・」


学園の門が開かれる直前、他の教師らがそんな話をしている。

 そして開かれる門――。

 王都の人々が押し寄せてくる、学園きっての忙しさになりそうだ。



 シュイーツは特にやることもなく学園の屋台を見て回っていた。やることがない、というか、見て回るのがシュイーツの仕事なのだが。


「にぎやかですね。ふふ、毎年のことですが」

「そうなんですね」


シュイーツの言葉にイザベラが返事をする。


「イザベラさんは学園祭、初めてですか?」

「はい。この学園に来たこと自体初めてだったので」


イザベラは王都ではなく普通の学園に通っていた。普通、といってもやっていることは変わらない。王都のこの学園の方が幾分か設備の良いだけだ。


「私は小さい頃から来ていましたね。私の楽しみの一つです」


にこやかに微笑みながら視線を左右にさまよわせるシュイーツ。イザベラは主がそんなことをいうのは珍しいので、学園祭に少し興味がわいてきた。



 ツミナは自分の仕事が終わったので学園祭を見て回っていた。トラブルを抑える意味もあるのだが。他の教師は仕事中。ツミナのやることなすことが早すぎるのだ。


(まさか学園祭をみることになるとは思いませんでした)


まず王都にここまでとどまる気がなかったのだが、シュイーツの護衛をやることになって見れたものもたくさんある。


(この点は殿下に感謝ですね)


少し笑みがこぼれるツミナ。

 今ツミナがいるのは魔術棟のあたりだ。普段来ることも少ない所だが、知り合いは一応いる、というか知り合いでなくてもツミナは有名なので顔は知れている。


「あ、せんせー!」


 するとそこへ、ツミナの近くに走り寄ってくる人影が。


「こんにちは、キャミラさん」


イアリの妹、キャミラである。


「やっほー。今日は会えないかと思ってたけど、こっち来てたんだ、先生」

「ええ。興味があったのでよってみました」

「あ、うちの店こっちだよ。きてよー、せんせー」

「ぜひ」


にこにこと会話をする2人。

 そしてツミナはキャミラに連れられて、彼女らが行う屋台の方へと向かった。



 こそこそと会話がなされる。


「あれって剣術分野のツミナ先生じゃない?」

「えっ、なんでこっちに!?」

「ラッキーじゃない? あー、話しかけたいけど・・・」


そんな会話。なぜ彼女らがツミナに話しかけないかというと・・・


「ね? すごいでしょ。うちの店」

「ええ。とてもにぎやかですし、おいしそうですね」


ツミナの横にキャミラがいるからだ。一応彼女らは平民の為、貴族のキャミラには気を使わないといけない。


「あ、エナちゃん! こっちこっち!」


その時、誰かを見つけたキャミラが人を呼ぶ。

 そしてキャミラは近づいてきた人を紹介する。


「せんせ、この子は友達のエナちゃん。魔術分野の子だよ」

「エナさん、ですか。こんにちは」


近づいてきた彼女の顔を見て、ツミナは王都へ来た直後のことを思い出す。


「こ、こんにちはっ。あ、あの、エナです。・・・以前、お会いしたの、覚えて、いますか・・・?」


そこの言葉でツミナは確信を持つ。


「勿論。確か、ここの入学式の日にお会いしたかたですよね」

「はっ、はい! 覚えていてくださったんですね」


ほっとした顔をするエナ。


「あれ、知り合い?」


キャミラが話に入ってくる。


「うん、入学式の時に道に迷ってたところを助けてもらったの」


エナがキャミラに説明する。


「そうなんだ」

「まさかあの時は先生だとは思わずに・・・」


その後教師になると決まったからなぁ、とのんきに思うツミナだった。

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