ツミナとイザベラ
シュイーツとイザベラが助かったのはイザベラの功績ということになった。ツミナがそうするようにいったのだ。ツミナは表にでることを嫌う。が、イザベラは納得していなかった。
「どうしてですか! 自分の功績を人に譲るなんて! 考えられないです!」
王宮のシュイーツといつも会っている部屋で、イザベラの不満がぶちまけられていた。
「えぇえ、目立ちたくないんだよ。面倒くさいし」
「そんなことで・・・それにどうして私がやったことに・・・」
「君しかその場にいなかったからね。殿下がやったことにするには無理があるし・・・」
まだ不満そうな顔のイザベラをおいてツミナはシュイーツに話しかける。
「それで、今日は何の話ですか?」
「近く、学園祭が催されます」
「学園祭、ですか」
また面倒な、というのがツミナの本心だ。
刺客がいるというのにおおっぴろに学園をあけて、狙ってくださいと言っているようなものだ。
「私は学園内にいますので、刺客が来た場合は退治してくださいね、身の安全はイザベラさんが守ってくれていますから」
「了解しました」
シュイーツの言葉にイザベラが少し反応する。
前回、イザベラは結局シュイーツを守れず、ツミナが来なかったら最悪の事態もあった。それを気に病んでいるのだ。
「ではまた学園で。シュイーツ殿下」
「ええ、ツミナさん」
ツミナは部屋を去った。
「で、殿下」
「ふふっ、いいですよ。いってらっしゃいな」
「あ、ありがとうございます」
ツミナを追いかけることを許可してもらったイザベラは、すぐに部屋を出ていった。
(あら、なんだか少し、心がすっきりしませんわ)
残されたシュイーツは一人、優雅に茶を楽しみながらそんなことを思っていた。
1
「ツミナさん!」
名を呼ばれ、立ち止まり振り返るツミナ。
「イザベラさん。どうしました?」
ツミナは追ってきたイザベラに話しかける。
「さっきの話、まだ終わってません」
「鉱石の話ですか?」
頷くイザベラにため息をつくツミナ。
「どういわれても私のやることは変わりません」
真剣に見返され少したじろぐイザベラ。
「で、でも、私だって、自分じゃない功績を受け取るつもりもありません」
ツミナは内心もう一度ため息をつく。
「どうしたら受け入れてもらえますか」
イザベラにツミナは聞く。
イザベラは少し黙ってから口を開いた。
「・・・明日1日、お暇ですか?」
はい? と首を傾げたツミナであった。
2
(少し早くついてしまったかもしれない・・・)
イザベラは噴水の前のベンチに腰を下ろす。
彼女の服装は白いブラウスに黒いリボンを結び、黒い膝下までのスカートをはいていた。いつもとは違うカジュアルな格好。
イザベラはツミナと待ち合わせているのだ。
(き、気合い入れてきたと思われないよねっ?)
自分の服装に自信があまりなくて何度も迷ってしまうイザベラ。
が、そこに人影が見えた。
「お待たせしました」
ツミナがにっこりほほ笑む。彼の格好はいつも通りだ。
「い、いえ」
「行きましょうか」
2人は屋台のほうへ歩き出した。
3
屋台の道を歩く中、畏アベラが満面の笑みでものほしそうな顔をしながらアイスクリーム屋を見つめている。
それに気づくツミナ。
「あれ、寄ってみますか」
「えっ」
進んでいくツミナに急いでついていくイザベラ。
「ん~、美味しいっ」
頬に手を当てて呟くイザベラ。それをみてツミナはにこにこと微笑んでいる。
「はっ」
ツミナにみられていることに気づいたイザベラが顔を赤らめる。
「おいしそうですね」
ふっと笑いながらツミナがイザベラに言う。
「お、美味しいですよっ。あ、一口いります?」
ずいっとアイスを差し出すイザベラ、するとまたはっとなって手を引っ込めようとするが、ツミナがその手を取ってアイスをかじる。
「ん、美味しいですね」
「え、えええええええええっ」
顔を真っ赤にしながら戸惑うイザベラ。
「あ、これもいります? 私はもういいので」
ツミナは自分の持っていたアイスを差し出す。とりあえず受け取るイザベラ。
「さ、あっちにも行ってみましょう!」
「え、あ、はい!」
慌ただしく移動する2人。イザベラの顔は満足そうだった。
4
2人はまた噴水のところへ戻ってベンチで休んでいた。
「お腹いっぱいです」
「あはは、そうですね」
2人がそんな会話をしている。
「・・・私、自分が情けなかったんです」
「・・・」
急に話を切り出したイザベラ。
ツミナは一瞬で話を理解して黙って話を聞いている。
「殿下の護衛に任命されて舞い上がっていたんです。結局使命を果たせず殿下を危険にさらして・・・」
イザベラが少しずつ話す。
「本当なら護衛の任をとかれるべきなんです。けど、殿下はお優しくて・・・私、どうしたらいいんでしょう」
イザベラが黙り込んでしまった。
ツミナはそこで口を開く。
「どうもこうも、殿下が任を解いていないなら、その責務を果たすのが貴方の仕事。前回できなかったなら次できればいい。そのチャンスを殿下は与えてくださったのではないのですか?」
ツミナは一旦そこで言葉をきる。
「・・・自分の殻はやぶってください。貴方が守るべきは殿下です。それくらいはわかっておいてください」
イザベラが顔を上げてツミナをみつめる。
ツミナは少し厳しい顔から優しい顔へと戻った。
「では、そろそろ日も暮れそうですし、帰りましょう。お送りしますよ」
さ、っとせかされて、イザベラは気持ちを新たに立ち上がった。




