腕前 3
先ほどの敵を一掃し、一人の男を追う。おそらく、そいつが行く場所が地下の2人がとらわれている場所だ。
男は一つの扉の前で立ち止まって扉を開けた。
「ダンさん! 侵入者がっぁっ・・・」
ツミナのけりによって男が白目をむいて倒れる。
「「ツミナさん!」」
2人が叫ぶ。
中にいた男が振り返った。
ツミナは2人を一瞥しただけで何もいらない。
「誰だ? お前。どうやって入ってきた」
「正面からだ。それと、もういいか」
剣に滴る血をみて、それは男もわかっていたはずだ。
「ふっ。まぁいい。俺は《剛腕》ダンだ。あんたはこの姫さんの護衛か」
「そんなところだ」
ツミナが端的に答える。
ダンが名乗ったのに対してツミナは名乗らない。
「礼儀くらいは守ってくれよ、にいちゃん」
「礼儀? 殺し合いに礼儀は必要ない」
「はっ、そういう考えの奴か」
舌打ちが聞こえる。
ツミナは一向に気にしないでダンがかかってくるのを待っている。
ダンはそれがわかったとともに地面をけって移動した。
ツミナに襲い掛かる。
「はぁ!!」
ダンが腕を振るう。ツミナが腕の腹で拳を受け止める。が、件にひびが入る。
「あぁあぁ、剣が壊れちまったぜ。にいちゃん、これで俺の勝ちは決定した」
「どうしてそう思う?」
パラパラと剣のかけらが地面に落ちた。
「ああ? 剣士は剣がなけりゃ戦えねぇ。そうだろ?」
「そうとも限らない」
ツミナは構えをとる。
「はっ。体術か? それが専門の俺に? なめてかかると、死んじまうぞ!」
ばっと飛び出るダン。
ツミナは冷静にそれを見つめてから判断する。
右ストレートがツミナに迫る。ツミナは左によけ、そのまま膝蹴りを入れようとするが、ダンはそれを防がなかった。
そのまま肘鉄をツミナに食らわせる。
「っ・・・」
あくまでも声は出さないツミナ。ダメージはまぁまぁだ。
対してダンはさほど厳しい顔つきはしていない。ツミナのけりの位置をずらし、急所を外したのだ。
「おいおい、ひょろっちいけりだな」
「・・・」
ツミナは黙って今度は先に仕掛ける。
ダンの方に跳躍したツミナは顔に拳を入れる。だがダンはツミナの拳を受け止めぐっと力を受け取る。
ミシミシと音を立て始めるツミナの拳。
ツミナはすぐにダンから離れる。
「おいおい、これでお前の片手、使えなくなっちまったぜ」
「healing。これで元通りだ」
ツミナは治癒魔法で自分の拳を戻す。
「お前・・・剣に武術に魔術って、反則じゃねぇか」
ダンが初めて余裕を崩した。
攻撃手段が多すぎて、ダンでは反撃できるかどうか、まず防げるかもわからない。ツミナが治癒魔法以外の魔術をつかえたら、の話だが。
「さっさと、終わらせてもらうぜ!」
嫌な予感がして、ダンはツミナへ襲い掛かった。
ツミナは迎え撃つように構えた。
1
シュイーツとイザベラは何もできずにただ2人の戦いを見ていた。
「ツミナさん・・・思った以上の強さですわ」
「え、ええ・・・」
シュイーツもはっきりとツミナの実力を見たことはないので驚いていたが、イザベラの驚きはもっとだ。自分ではきっとダンにはかなわないだろう。称号を持っている時点で相当強いはずだ。だが、ツミナは普通に渡り合っている。
(一体、何者なんだ・・・ツミナさんは)
2
(そろそろ終わらせないとな)
ツミナもダンと同じことを考えていた。これ以上シュイーツとイザベラを放置しておくのは苦しい。
(ばれないように、仕留める――)
丁度、ダンが懐に自分から入ってきた。
ツミナは〖聖剣〗を一瞬だけ召喚し、ダンの心臓を一突き。
「ぐ、はっ」
ダンが声を漏らす。
そしてツミナは〖聖剣〗をしまう。
ずる、とツミナ法へもたれかかってかた地面に滑り落ちる。
「・・・」
ツミナは最後まで静かだった。
「おわ、ったんですか?」
イザベラの声が聞こえる。
ツミナの目が優しいものに戻る。
「ええ、今しがた。お二人とも、怪我はありませんか?」
微笑みかけられて安心したようにため息をもらす二人。緊迫したような冷たい目のツミナと話す自信は二人にはない。
「殿下があの男に暴力を・・・」
「別にどうということはありませんわ。傷もかすり傷ですし」
拘束していた縄を解いてもらった二人はそう言った。
ツミナはシュイーツの手をとりhealingをかける。頬などについていた傷が消える。
「ありがとうございます」
「なるべく傷をつくらないように」
ツミナはにっこりと微笑んだ。




