腕前 2
ツミナは建物の屋上を飛び移り移動する。
先ほど得た情報では南端、といっていた。中々距離がある。おそらく計画され、用意されていたのだろう。馬車などが。
(無事、ではあるだろうが、国外に逃げられると厄介だ。早めに始末しておきたい)
何も移さない瞳は、彼の思考そのものを映していたのかもしれない。
ツミナは更に速度を加速させた。
1
シュイーツとイザベラは腕を縛られた状態で目を覚ました。
「お目覚めか。王女様」
すると声がした。男。視線を向けた先にはどっかり椅子に座る男が。シュイーツが考えを巡らせていると、もう一度男から声が発せられた。
「護衛ってもんをつれているから少し警戒したが、案外楽なもんだったなぁ!」
イザベラを見下しケラケラと笑う男。
イザベラは何も言い返せないで唇をかむ。
「あなたたちの目的はなんですか?」
シュイーツが男を睨みつけて問う。
「あ? 誰がしゃべっていいっていった?」
男が立ち上がり、シュイーツのほうへよる。それを殊勝に見上げていたシュイーツだったが、次の瞬間、後ろに倒れる。
「がっ」
苦しみにあえぐシュイーツ。みぞおちを男にけられたのだ。
「殿下!!」
イザベラが悲鳴のように叫ぶ。
「どうだ? 主が目の前で傷つけられているのに何もできない自分を見ているのは。なぁ」
男はイザベラに問いかける。
どうして自分はあの時間間違った行動をとったんだ。あの時どうしてドアを開けた。彼女を抱えて逃げるべきではなかったのか。
攻め続けて思考が飛んでいきそうだ。理解が追いつかない。シュイーツが傷つけられている。どうして、どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうして――
「私は大丈夫ですわ。イザベラさん」
するとシュイーツが起き上がった。
「落ち着いて。貴方は間違っていない。あの判断はあっていた。そう思っていいのですよ」
「ちっ」
起き上がってイザベラを慰めるシュイーツの顔を蹴り上げる男。
「っ・・・」
シュイーツの顔が地面に触れる。
だが、シュイーツは声を上げないで我慢する。
イザベラを不安にさせないためだ。
「・・・」
男は忌々しそうにシュイーツをみる。
その時、ばんっとドアが開いた。
「ダンさん! 侵入者がっぁっ・・・」
入ってきた男が白目をむいて崩れ落ちる。そこには――
2
ツミナは南東につき、ある建物を他の建物の屋上から眺める。
この町は至って普通だ。王都の中心と何も変わらない。どうして、シュイーツたちがいる建物が分かったのか。ツミナは出入りする人を見ていた。性別は。恰好は。体格は。それを見ていれば自ずとわかるであろう。どこが怪しいかなど。
(地下、か。入口から入った方が早いな)
ツミナは屋上から飛び降りる。風魔術で補助をして着地する。
そして堂々と正面入り口から入った。
「ん? 誰だ・・・」
スパンっと首がはねる。
声もなかった。
人を切ってもツミナには何の感情も湧き出てこなかった。そういう意味ではツミナは勇者として異端だと思う。
横にいた他の男が反応して銃をツミナに向かう。
だが、打った弾はツミナの持っている剣によって斬られる。
「なっ」
銃を撃った男が驚く。それは、弾をきられたことに対してと、ツミナの持っている剣に対してだ。
剣が、そこにあるはずの剣が、見えない。
(この剣を使うのは都合が悪いか。聖剣だとばれたらシュイーツ殿下がややこしいからな)
そう、見えない剣は〖聖剣〗であった。勇者だけが使える剣である。他にも勇者専用の武器はあるのだが・・・それはまた後にしよう。
一瞬で跳躍して男の前に現れたツミナはけりをかまして相手の意識を切り取る。
そして男の腰に下げていた剣を抜き取る。
(これを使うか)
鞘をぬきすて前へ進むツミナ。
そこへダダダっと敵の応援が来る。
「殺せぇ!」
リーダー格のような男が怒鳴る。
――これで、お前たちのことを殺す理由は十分だ。
ツミナが動き出した。




