腕前
今までは平和だった、気がする。そんなものを吹き飛ばすように襲って来る危険は、一体だれを狙ったものだ。そんなこと、わかりきっていた。
さぁ、ゲームへの扉は開いている。
1
目が覚めたシュイーツはメイドに着替えを手伝われながら済ませ、部屋をでる。
「おはようございます」
「おはようございます、イザベラさん」
イザベラと合流し、学園に向かう。
馬車に揺られながら、シュイーツはほおづえをつき、カーテンの隙間から外をみる。
(このあたりだったわね。私が路地に迷い込んだのは)
ツミナと会う直前に迷い込んだ路地。そこからあった彼との出会い。幸運だったのか不運だったのかわからない。
その時、ガタンっと馬車が揺れる。
中に座っていたイザベラが椅子から腰を浮かせ、いつでも飛び出せるように構えをとる。
シュイーツに目配せをし、合図をもらってから勢いよくドアを開けるイザベラ。
そして投げ込まれる催眠ガスの玉。一気に馬車内に充満するガス。
「っ!」
「くっ」
外に出るまもなくガスにやられてその場に崩れ落ちる2人。
中に入ってきた口元を布で覆った男たち。彼らに連れ去られた2人は、どこかへ連れていかれた――。
2
ツミナが王女と護衛が連れていかれたという報告を受けたのは、先ほどの出来事から数十分後だった。
「誘拐・・・? 街中で・・・?」
「住民たちも数人被害にあっている。不幸中の幸いか、死人はいないが」
学園長から話を受けたツミナは立ち上がる。
「今日は休みということで」
「だ、だが、どうやって・・・?」
「裏技ですよ」
不敵に笑って学園を去った彼は、冷たい目をしていた――。
3
ツミナはフード付きのローブを身にまとって、路地裏の中にある、とある店を訪れていた。
カラン、と音を立てて中に入る。中にいる人たちは全員顔が見えない。
「情報をもらいたい」
「金は?」
受付の男が無機質な目でツミナに所持金を問う。
ツミナはずっしりとしたきんちゃく袋をカウンターにおく。
中身を確認した男が驚く。
「ついてきてくれ」
そして個室に案内される。ツミナは彼についていった。
中には肉付きの良い男が座っていた。
「ここは完全防音だ。安心してくれ。欲しい情報は?」
「王女誘拐について。誘拐犯のアジト」
ここは情報屋。金のある人には情報を渡す。誰であろうが、だ。
ただ、知っていても渡せない情報もある。口止めされていたり、などだ。
「悪いがそれは言えない」
「追加の金を渡す」
「それでもだ」
情報がもらえないということだ。
ツミナは黙って目をつむる。
そして、次に目を開いたとき、前にいる男の目を見つめる。
「・・・っ!」
冷たい目。ツミナの威圧に負け、圧倒された男が口を開く。
「百イーム追加だ」
「・・・」
ツミナは黙って金を出す。
「王都は南端の建物の地下」
「・・・感謝する」
情報が手に入り、ツミナは店を去る。
部屋にいた受付の男が問う。
「いいんですか? 命にかかわりますぜ?」
「今あいつに逆らっていたら店ごと俺らの命もぱぁだ。ありゃぁ無理だ」
「・・・そうですか」
ツミナの力量をみて判断したこの店は、ある意味賢明だったといえるだろう。




