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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~学園の教師になってしまった元勇者~
21/89

護衛イザベラ 3

(くそっ、くそっ、くそっ!)


 垂れる汗を拭きとろうともしないで走り続けるイザベラ。


(どうしてあの時、目を離してしまったのだ!)


イザベラはシュイーツを探していた。

 だが、シュイーツの姿は一向に見当たらない。


(みつけ、られない。私では、無理だ)


イザベラは諦めた。探すことを? 否。彼女が諦めたのは、自分で探すのを、だ。

 彼女はまた駆け出した。先ほどとは逆の方向に――。



 バンっと教員室のドアが開かれ、教師たちがドアを振り返る。


「っ、助けてくれ! 殿下が!」


汗で濡れた額は、赤くも青くも見えた。


「私が目を離したのが悪かったんだ! お願いだ! 殿下をっ」

「私がどうかしましたか?」


え、と顔を上げると、イザベラの目に映ったのは先ほどから探していた主の姿。


「イザベラさん。ふふ、合格ですわ」


まだ頭の中で何が何だか処理が追いついていない彼女に、シュイーツは更に困惑する一言をかける。


「不合格だったら解雇にしようと思っていましたから、よかったですわ」


もう頭が真っ白なイザベラはきゅ~とその場で倒れてしまった。



 視界がぼんやりする。


(何をしていたっけ。走っていた。殿下を、探して――)


はっと起き上がる。


「目が覚めましたか?」


横を見ると、シュイーツが優雅に茶を飲んでいた。


「シュイーツ王女殿下・・・ど、どういう・・・」

「ふふ、今から説明しますわ」


イザベラはソファに寝そべっていたが、しっかりと座りなおす。

 すると、前の机にことりと冷えたお茶が置かれる。

 見上げると、ツミナが微笑んだ顔で立っていた。


「脱水症状を起こしかけています。それを飲んでください。話を聞きながら、ね」

「・・・はい」


思わず憎まれ口をたたこうとするがおとなしくする。

 ツミナはそれがほほえましかったのか笑みが深まった。


「あなたの注意をそらしたのは私自身です。そうですね?」

「はい・・・」

「つまり、どういうことかわかりますか?」

「・・・貴方は誘拐されたのではなく、自分からいなくなった。いえ、いなくなってなどいなかった」

「その通りです。理解が早い人は好きですよ」


横でツミナが苦笑しているのが見える。それはシュイーツに対してだとわかっていても、どうしても彼の笑みが、今のイザベラには気に入らなかった。


「私を、試したんですか?」

「はい、そうです」


ぐっと拳を握りしめるイザベラ。


「ですが、それなら私は不合格では?」

「普通ならそうですが、貴方は1人では私を見つけられないと判断し、彼に助けを求めた。それは貴方が私の身を素直に案じてくれたから。違いますか?」

「・・・」


返答はないが、話を続けるシュイーツ。


「私は貴方のその気持ちを信じたいと思います。貴方は、まだ私に仕える気がありますか?」


立ち上がり、手を差し伸べるシュイーツ。それを見あげるイザベラ。

 イザベラは立ち上がってからひざまずき、頭を垂れる。


「イエス、ユアハイネス。我が身は貴方のために」


シュイーツが微笑みながらうなずいた。

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