護衛イザベラ 3
(くそっ、くそっ、くそっ!)
垂れる汗を拭きとろうともしないで走り続けるイザベラ。
(どうしてあの時、目を離してしまったのだ!)
イザベラはシュイーツを探していた。
だが、シュイーツの姿は一向に見当たらない。
(みつけ、られない。私では、無理だ)
イザベラは諦めた。探すことを? 否。彼女が諦めたのは、自分で探すのを、だ。
彼女はまた駆け出した。先ほどとは逆の方向に――。
5
バンっと教員室のドアが開かれ、教師たちがドアを振り返る。
「っ、助けてくれ! 殿下が!」
汗で濡れた額は、赤くも青くも見えた。
「私が目を離したのが悪かったんだ! お願いだ! 殿下をっ」
「私がどうかしましたか?」
え、と顔を上げると、イザベラの目に映ったのは先ほどから探していた主の姿。
「イザベラさん。ふふ、合格ですわ」
まだ頭の中で何が何だか処理が追いついていない彼女に、シュイーツは更に困惑する一言をかける。
「不合格だったら解雇にしようと思っていましたから、よかったですわ」
もう頭が真っ白なイザベラはきゅ~とその場で倒れてしまった。
6
視界がぼんやりする。
(何をしていたっけ。走っていた。殿下を、探して――)
はっと起き上がる。
「目が覚めましたか?」
横を見ると、シュイーツが優雅に茶を飲んでいた。
「シュイーツ王女殿下・・・ど、どういう・・・」
「ふふ、今から説明しますわ」
イザベラはソファに寝そべっていたが、しっかりと座りなおす。
すると、前の机にことりと冷えたお茶が置かれる。
見上げると、ツミナが微笑んだ顔で立っていた。
「脱水症状を起こしかけています。それを飲んでください。話を聞きながら、ね」
「・・・はい」
思わず憎まれ口をたたこうとするがおとなしくする。
ツミナはそれがほほえましかったのか笑みが深まった。
「あなたの注意をそらしたのは私自身です。そうですね?」
「はい・・・」
「つまり、どういうことかわかりますか?」
「・・・貴方は誘拐されたのではなく、自分からいなくなった。いえ、いなくなってなどいなかった」
「その通りです。理解が早い人は好きですよ」
横でツミナが苦笑しているのが見える。それはシュイーツに対してだとわかっていても、どうしても彼の笑みが、今のイザベラには気に入らなかった。
「私を、試したんですか?」
「はい、そうです」
ぐっと拳を握りしめるイザベラ。
「ですが、それなら私は不合格では?」
「普通ならそうですが、貴方は1人では私を見つけられないと判断し、彼に助けを求めた。それは貴方が私の身を素直に案じてくれたから。違いますか?」
「・・・」
返答はないが、話を続けるシュイーツ。
「私は貴方のその気持ちを信じたいと思います。貴方は、まだ私に仕える気がありますか?」
立ち上がり、手を差し伸べるシュイーツ。それを見あげるイザベラ。
イザベラは立ち上がってからひざまずき、頭を垂れる。
「イエス、ユアハイネス。我が身は貴方のために」
シュイーツが微笑みながらうなずいた。




