護衛イザベラ 2
イザベラはシュイーツのななめ後ろを歩きながらふとツミナの姿を探していた。
(あいつ、本当に護衛の仕事をこなしているんだろうな)
だが、近くにツミナの姿はない。
「ツミナ先生を探しているのですか?」
その時、シュイーツに内心を言いあてされてイザベラが少しわたわたとする。
「そそ、そんなことは。・・・ただ、護衛の任を果たしているのかと」
イザベラは最後正直に答える。彼女は主に忠実だ。嘘はつけない、正直な子なのだ。
「大丈夫です。彼は近くにいなくても仕事を果たしていますよ」
にっこりと主に言われて、イザベラは恐縮する。
そこであることに気づく。
「つまり、彼は魔術師なのですか?」
魔術師ならば遠距離からの攻撃も可能だ。
だが、そこでイザベラははっと気づく。護衛ごときが主に質問をしては失礼だと。
「し、失礼しました!」
「いいえ、彼は剣術を教える教師ですよ?」
「え?」
そこでまたイザベラは惚ける。
武道家なのに遠くにいるのか? と。
イザベラも剣術使いなのでいつでもシュイーツの近くにいて、敵が来た時に応戦するスタイルだ。
「つまり、それは・・・?」
「ふふふ。どういうことなんでしょうね」
(まぁ、彼が勇者だという可能性も、捨てきれない、というわけですわ)
まだツミナが勇者かもしれないと疑うシュイーツであった。
1
ツミナが講義を行う最中。黒板に文字が並べられる。一応講義なので説明も必要らしい。実践が一番楽なのだが。
護衛なのでイザベラはシュイーツに椅子に座るように言われたが立っている。
ツミナは勿論講義を行っているのだから前で説明している、が・・・
(イザベラさんの視線が痛い・・・)
敵意むき出しのイザベラの視線に、ツミナは内心苦笑する。もしかしたら彼女経由でツミナがシュイーツの護衛なのがばれるかも、と一瞬思うがさすがにそれはないか、と思い直す。
「・・・で、――となります」
と、そこでチャイムがなる、
「以上で講義は終わりです。次の講義はこの続きをしますのでよろしくお願いします。では」
終わるとツミナはすぐさま講義室を去ってしまった。
そこからわらわらと他の生徒たちも帰っていく。
(剣術の心得はあるようだが・・・殿下のいう意味がわからない・・・)
シュイーツの何気ない言葉に、イザベラは延々と悩んでいた。
「さ、行きましょうか。イザベラさん」
シュイーツはそんな彼女に微笑みながら講義室をでた。
2
「今日は街を歩きたい気分です。馬車は帰ってもらいましょう」
「えっ」
「何か不満が?」
「い、いえ」
歩き出すシュイーツについていくイザベラ。相変わらずマイペースなお姫様は、狙われているというのに外を歩き、自らの身が危険にさらされるのをいとわない。まぁ、このお姫様が何の目的もなくわが身を危険にさらすとも思えないが。
「あ、こんなのおいしそうですよ。ね? イザベラさん」
「は、はい、そうですね」
キョロキョロとあたりを見回し、いかにも警戒してますという態度をとっているイザベラ。本人は無自覚だろうが、それは護衛対象がここにいますと言っているようなものだ。
シュイーツはそれでも何も言わないが、それを楽しむように彼女に語り掛けて注意をそらす。
「これ、2つ」
「30イームになりやす」
シュイーツは物を受け取り満足そうにしている。
「イザベラさん。1つどうぞ」
「ええ!? そんな! いただくわけには・・・」
「そうですか・・・食べ物を粗末にするのは本意ではないのですが、食べきれないので・・・」
しゅんとした顔で視線を下に落とすシュイーツ。イザベラはわたわたとして慌ててそれを受け取る。
シュイーツはにっこりと笑い、美味しいですねと感想を述べる。
「あ、あちらにあんなものが!」
「へ?」
シュイーツが声を上げて指をさす。イザベラは自然とそちらを向く。
「あっちには何も・・・」
そしてイザベラが振り返った時には、彼女の姿はなかった――。




