王都にやってきた男
「歩行者の方は馬車や荷台に気をつけて並んでくださーい!」
兵のような格好した男が大声で注意を呼びかける。
大きな壁の門の前にできる長蛇の列。そんな列の中に、彼もまた並んでいた。
ここは王都に入るための審査を受ける入門所。身分証明書を差し出し、移住、もしくは滞在の為の説明を受ける。
「ちょいちょい、お兄さん」
と、そこで彼は後ろにいた荷台の運転手から声をかけられる。荷台、というのは馬に台となる車輪をつけた木に広い布をつけた簡易なものだ。
「どうも」
にへら、とだらしなく笑う彼。年は見た目でいると20代くらいに見える。優男、という感じか。
二大の運転手のおじさんはそんな彼に話しかける。
「あんた、どっから来たんだい? おれぁ、商売をするために荷物持って人口の多い王都にきたんだが・・・」
王都は人口がおおいとされているが、王国の都市部なので勿論盛んに商売もやっている。市場の開催がおおいのもここだ。商売をするにはうってつけの所だろう。
「私は旅をしているものでして・・・ここに来る前までは聖国にいました」
彼は旅人らしい。確かに身に付け入るフード付きの白いローブは土やら泥やらで汚れているし、荷物はかけひも一つのナップサックのようなもの一つである。
「へぇ、そうなのかい。それにしても、旅もしやすくなったんじゃねぇのか? 最近は勇者様が現れて魔王を退治してくれたから平和だしなぁ」
おじさんがふと漏らした言葉。
「勇者」。そう。この世界に現れた勇者がいるのだ。二年前、教会の神託で勇者が聖国で生まれた。魔王が生まれてから魔物がどんどん生まれてきて人に害をなすようになった。一時、魔王の性格によって協定を結んだことも多々あったが、魔王は100年に一度生まれ変わる。今回の生まれ変わりで魔王との協定は破壊された。魔族との全面戦争になり、平和は失われた。が、なんと一年という短い期間で、終戦が訪れた。勇者のおかげだ。神託で選ばれた勇者のおかげで魔族は全滅。勿論、100年くらいでまた生まれるのだが、今は平和そのものだ。勇者の力が大きかったのが一番の原因といえるだろう。その他勇者パーティーのメンバーの実力も大きい。
《聖女》リア。教会から派遣されてきた修道女で、中でも民衆から聖女と呼ばれるほどの人格と力を持っている。癒しの力と浄化の力。この二つは魔王討伐には欠かせないものだった。
《剣豪》サクラ。細い長剣を扱う女剣士。世界最強の剣士だと言われ、その技は目にも留まらぬ速さ。敵を圧倒するパワーも持ち合わせている最強剣士。
《神弓》ララ。打った矢は百発百中の確率であたり、敵の急所へ一撃で仕留めるという神の矢を打つ弓使いといわれる女性。
《賢者》ユキネ。多彩な魔法を操り、敵を殲滅する。彼女の前に立ちはだかったものはその後姿を見ることはないらしい。それまでの実力を持つ魔術師だ。
そして――――
「俺はキリー。よろしくな。市場で店だすつもりだから来てくれよ」
「ええ。よろしく。私は、」
魔族を殲滅し、人々の希望。その姿を人々が見たことはなく、性別も不明。だが、その実力は平和の象徴となり、世界最強の実力者。その名を、《勇者》―――
「ツミナ――――」




