護衛イザベラ
ツミナが次の日、学園に行くとシュイーツの護衛の話は既に出回っていた。
「あ、おはようございます。ツミナ先生」
最近、まぁもとよりだが、女子生徒から話しかけられることが多くなったツミナ。
「おはようございます」
ツミナは相変わらずの笑顔で彼女たちに挨拶をかえす。
女子生徒たちから黄色い声があがる。
ここまでくるともはやアイドルだ。
「おっはよー、ツミナせーんせ!」
そこへツミナの腕に手をからませてくるスキンシップ多めの女子生徒がやってきた。
彼女は魔術の勉強に励むこの国の、いわゆる貴族階級にいるものだ。名はキャミラ・オスクーファという。オスクーファ。どこかにいた名だ、と思うのは当然である。なぜなら彼女は――
「キャミラ!? こんなところで何してるの!?」
丁度そこにやってきたのはイアリ・オスクーファ。キャミラの姉である。つまり、2人は姉妹なのだ。ちなみにキャミラは寮の方にすんでいるので、前回の火事事件には巻き込まれていない。
姉が剣術をやっている分、妹は魔術分野に飛び込んでいる。
「ここは戦闘分野のテリトリーよ。魔術分野の貴方は棟が違うでしょ」
今更説明するが、ここには3つの棟があり、前に説明した戦闘、魔術、学問の3つにそれぞれ分かれている。
「えー、いいじゃん。ツミナ先生は私の目の保養だし、こないといきてけない~」
なら今までどうやって生きてきたのかと問いたくなる話だが、そこは置いておこう。
「おはようございます。お二人とも。それでキャミラさん。今日はどうなさいましたか?」
一応言っておくが、話がある時しかキャミラは話しかけてこない。横から眺めているだけとかがおおい(それもどうかと思うが)。
「あ、そうそう、せんせーは知ってた? 王女殿下様に護衛が付いたって」
「ええ、今日来た時にね。中々若い方で驚きましたが」
「あー、せんせー、浮気反対!」
「浮気など。そういう驚いたじゃありませんよ」
というかまず付き合ってないのに浮気とはどうなものか。
「ちょ、じゃなくて先生、そろそろ返事を」
「え? なんのですか?」
「え? じゃなくて、弟子の件です!」
イアリが今度はツミナに話しかけるが、ツミナはとぼけている。
「そんなことありましたっけー」
「棒読み杉です、先生。答えを!」
「でははっきり言います。お断りします」
「そんな! そこをなんとか!」
こうなるからさけてきたのだ。こういう子は案外諦めが悪い。
「無理です。弟子をとる気はありません」
「そんなぁ」
イアリが崩れ落ちる。そこまでのことか? と内心焦りながらツミナはイアリに手を差し伸べる。
「弟子にはできませんが、講義はなるべく意義のある時間にしたいと思っていますから、これからもよろしくお願いします、イアリさん」
「そ、そんな顔で言われたら・・・」
イアリがツミナの笑顔に顔を赤くしながら渋々了承する。
「では、そろそろ講義の時間ですので」
立ち上がったイアリの手を放し、キャミラの手をほどいてからすんなりと講義室へと向かうツミナ。
うまく逃げられた彼女たちははっと気が付いてすぐに彼のあとを追うのだった。




