法国
パウラ法国。一言でいうと、黒い国だ。もちろん、外見が黒い、とかではない。中身が、だ。
「それで、のこのこ帰ってきたのか」
「・・・・・・」
甲高い女の声。豪華な椅子に座っている女だ。
対するは小さな子供。男の子だ。
「聞いているのか」
すると女は椅子から立ち上がり、男の子の髪をつかみ、上を向かせる。
「・・・」
対して男の子はただ黙って無機質な目を彼女に向けるだけ。
「ちっ。牢に彫り込んでおけ」
それに不快感を抱いたのか、彼女は隣にいた臣下と思われる男性にそう命じた。
「は」
おとなしく命令に従って、彼は男の子を連れていく。
男の子は特に何の抵抗もしないで歩く。
「クソ王女の護衛、ねぇ」
ドンっと壁をたたく彼女。
「さぁ、ゲームのは始まりだ。まっていろよ、クソ王女・・・!」
彼女はここにはいない、王国の王女に向けて、そう言い放った。
1
「法国、ですか?」
ツミナが少し驚いたような顔をする。
目の前にいるのはシュイーツだ。
「ええ、法国について何か知らないかしら。旅をしていたんでしょう」
苦々しい顔でシュイーツが再び尋ねる。
「多少知っていますが・・・国の情報機関を使えばどうですか? 私よりはるかに優秀ですよ」
ここは王宮。ツミナが最近出入りしているところだ。
「そういうのはいいから。教えてちょうだい」
シュイーツが少し顔をゆがませる。
ツミナが自分より他人を持ち上げて自分を下に見せるのが嫌いなのだ。
「私個人の意見では、あまり関わりたくない、ですね」
「やはりですよね!」
共感を表すシュイーツ。
「外見はいいので観光地としては人気がありますが、中身は腹黒いです。かなり、ね。相手を蹴落とすのがお得意の所ですから」
シュイーツ以外人がいないということをいいことに、法国の悪口を言いまくるツミナ。
「ですよね、ですよね」
シュイーツはそれをよいことのように聞いている。
「どうして急にそんなことを?」
ツミナがシュイーツに尋ねる。
「それなんですが、知っているでしょう。私が狙われているのを」
「あぁ」
それだけでツミナは理解する。刺客を送ってきているのは恐らく、否、十中八九法国であることを。
「なるほど。つまり《風の子》エツもそこから、ということでいいんですね?」
「ええ、そうなりますわ」
にっこりと会話をする2人。が、内容は全くよくない。
「こちらでも気をつけますが・・・それで、新しい護衛は決まったんですか?」
そこでツミナが切り出す。本題はそちらだ。
「ああ、そうでしたわね。入ってきて頂戴」
シュイーツがドアの外に声をかける。
がちゃ、とドアの開く音が。
「失礼します」
すると割と若い女の声が。女というか、シュイーツと同年代に見える。
「紹介しますわ。この子が私の新しい、付き添いの護衛。イザベラ・パプキーです」
紹介され、彼女は気をつけをする。
「ご紹介に預かりました、イザベラ・パプキーです」
端的に自己紹介を済ませた彼女は、ツミナを一瞥してから視線をシュイーツに戻す。
シュイーツがツミナの方をちらりと見たので、ツミナも自己紹介をする。
「初めまして。ツミナと言います。学園の教師をしながら殿下の護衛をさせていただいています。よろしく」
いつもの調子でにっこりほほ笑むと、なぜか逆に睨まれてしまった、ような気がする。
「さ、顔合わせが終わったことですし、これから3人でお茶でもどう?」
シュイーツが話題を変える。
「そんな、シュイーツ王女殿下とお茶だなんて! 恐れ多い・・・」
「すみません、私も用事がありまして・・・ここでお暇させていただきます。お茶はお二人でお楽しみください。では、失礼します」
イザベラが少し上機嫌になったのに対し、ツミナは誘いを断る。
そこでイザベラがツミナの方をキッ、と睨む。
やはり先ほどのことは気のせいではなかったようだ。
「そうですか。残念です。またいらしてくださいね」
「ええ」
そうしてツミナは城を去った。




