救世主ツミナ(?)
「んん、・・・」
目が覚めると、そこは少し固めのベッド。
半身を起こすと知らない部屋。
「え、ここ、どこ?」
彼女は、イアリ・オスクーファ。
1
ざわざわと騒がしい火事場の近く。
「あの兄ちゃん、大丈夫か!?」
「火の中に一人で・・・」
「中にいる子を助けに行ったみたいだが、」
ツミナが単独で火がめぐる建物に入っていったことがすでに多くの人に知れ渡っていた。
がたっ
「ん・・・?おい、あれ!」
火の中でした音に気づいた一人の野次馬。
全員の目が建物に注がれる。
そして、がた、バンッ!という音と共に、一人の男が。
「あれって・・・」
その男が先ほど中に入っていったツミナだと気づいたことには・・・
「おおおおー!」
「すげーぞ!」
ツミナを称える声が。
そして、ツミナの周りには消火を行っていた住民たちが。
ツミナが抱えていた少女たちを預かってくれる。
「ありがとうございます」
ツミナがいつものように笑う。
「ありがとよ、にいちゃん。あんたのおかげだ」
住民の皆からも感謝を表される。
「いえ」
ツミナは一瞬影の残る表情ののち、すぐに明るい顔へと戻った。
「この子たちはこっちであずかるよ」
「あ、私はそこのミガルネ学園の教師をしています、ツミナです。その子たちは学園の生徒たちですので、明日、またお伺いします」
「ああ、よろしく頼むよ」
住所の控えを預かり、ツミナはその場を去った。
既にそこには魔法しが来て、水魔法で消火を終わらせていた。
2
「――というわけです」
にっこりと説明をしていたツミナが口をつぐむ。
その前には少し惚け顔のイアリ。
「はい・・・」
捕まえようと思っていたツミナが目の前にいることでイアリは逆に困惑しておとなしい。
「体調に異常はありませんか?」
「はい、大丈夫です」
淡々と答える。
起きた後ベッドから出る間もなくツミナが部屋に入ってきたのだ。
ここは宿のようで、今回は火事が原因だったので泊まるのは無料でいいそうだ。
「今日の講義は出れそうですか?」
(あの時来たのは、やっぱり先生だったんだ)
「イアリさん?」
「えっ、あっ、はい! だ、大丈夫です」
「そうですか」とツミナは答えて立ち上がる。
「私は学園のほうにいますので、何かあれば来てください。では」
バタン、と戸が閉まる。
(先生が来なかったら、あたし・・・)
イアリは一人そんなことを思う。
(それに、なんか先生のこと考えてた時に先生が現れて・・・幻覚かと思っちゃった)
ふふっとほほ笑むイアリ。
そこでようやく自分の姿が寝間着だと気づき、一人もだえるイアリであった。
3
町ではこんな話が話題になっていた。
「昨日の火事、大変だったみたいじゃねぇか」
「そうなのよ、なかなか消えなくてね。魔術師の人に来てもらう羽目になって・・・」
「しかも学生が取り残されたとか」
火事の話が出回っているのだ。
そしてここからが話題の中心だ。
「で、若いにいちゃんが飛び込んだんだって?」
「そうそう。学園の教師さんだってさ。かっこいいわねぇ」
「それが「救世主」ってやつか?」
「救世主」と呼ばれ始めているのはまだおばさま方のほうだけでだが、明日にはもうこの近く一帯はその話が出回っているだろう。
「はぁぁ。会ってみたいね」
「だなぁ」
どこへ行っても、人助けをやめられないツミナであった。




