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勇者の称号を得た者が役目を終えてからのお話  作者: AMITOA
~学園の教師になってしまった元勇者~
12/89

《風の子》エツ

 ツミナは今、王城をきていた。

 昨日きた刺客、《風の子》エツのことで、だ。


「今回来た刺客は、《風の子》エツ。本人はそう言っていました」

「《風の子》エツ、ですが・・・」


シュイーツがその名に聞き覚えがない、というように首をかしげる。


「調べておいて」


そして隣にいた侍女に調査を命じる。


「実力はどのくらいでしたの?」


すると今度は意地悪く聞いてきたシュイーツ。

 ツミナは何でもないというように答えた。


「中々の者だったと思いますよ。追い返すのが精いっぱいだったので」


微笑みながら言われた言葉なので真偽はわからない。

 勿論嘘なのだが、それを図るすべをシュイーツは今持ち合わせていない。

 だが、中々の者、というのは本当だ。勇者の力を出していないとは家、ツミナと戦う、ということができるのは実力者だけのはずだ。


「そうですか」

「他の護衛連れている方がいいと思いますよ」

「・・・それはどういう意味ですか?」


シュイーツの顔が少し動く。

 機嫌を損ねたように見えた。


「常に一緒に行動できる護衛をつけておくのが賢明だということです。私は学園内でないと護衛できません。他の行動も可能な護衛もご自身につけてください」


その言葉を聞いて少し安心するシュイーツ。

 ツミナはその反応に内心首をかしげるが、今日の所はその場を去った。


                          1


(私ったら、みっともない)


 シュイーツは自室に戻ってきてベッドに飛び込んだ。別に誰が見ているわけでもないのでそこは心配ない。


(表情を崩してしまったわ。ツミナさんが、どこかに行ってしまうような発言に惑わされるなんて・・・私、どうしてしまったのかしら)


ツミナが他の護衛、といった時、ツミナが護衛の任を降りるといったかと思えたのだ。その後、誤解は解けたが。


(ツミナさんがいるだけで、何か大きな安心感があるのは気のせいではないはず。私のなかで、彼は必要なようね)


そして考えがまとまったところでまた過去のことを思い出す。


(「シュイーツ!」)


ツミナの声を脳内再生するシュイーツ。刺客が襲ってきたときに言ったツミナの言葉だ。


(家族以外で呼び捨てにされたのは初めてですもの。なんだか、ふわふわした感覚ですわ)


にやけながら枕を抱きしめる彼女は、まだその感情の名を知らない――。


                         2


 森の中を移動する影。

 視認できない速さで移動しているため、その姿はわからない。


(あの兄さん、強かった)


そこで影が停止する。

 彼の姿が現れた。

 《風の子》エツだ。


(何者だろうか。俺の相手ができるって、中々だ)


子供らしかぬ言葉遣い。そして、年齢にあない暗殺の仕事。想像力が働いた人はこの子の境遇が不運だったことをご想像できたであろう。


(いつも切るだけ。つまらなかった。今回は楽しめそう)


 彼のそんな思考が誰かに伝わることはなかった。

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