裏切り者と言われた少女は死神になる
本当は誰だって、「自分」という存在の意味を探している。自分という存在がここにいるって証明したいって。そんな存在がいれば強くなれるって、信じてる。私はまだ、そんなことを知らない。自分が生まれた意味。自分がいまここにいる意味。そんなことはもうどうだっていい。私は今から死ににいくのだから‥。
ー10時間前ー
「ねぇ、この問題教えて!」
「うん、いいよ。」
私はそう言って、西野さんっていうクラスメイトに数学の課題を教えた。数学はあまり得意ではないが、その問題なら私でも教えれる。
「ありがとう、委員長!」
私は作り笑顔をし、手を振った。私たちの関係はこれくらい。ただ教えるだけ。
委員長の仕事は嫌いではないが、無理やりやらされたようなものだ。
「えーっ⁈委員長に教えてもらったの?」
「うん。だいたい分かったよ。」
あれは、西野さんと木野本さん?って、だいたいか‥。なんか傷つくな。
「委員長、ちょうど良かった。」
うわぁっ、先生!急に後ろに立たれたらびっくりするよ。
「何ですか?」
「ああ、今日転入生が来るんだ。そいつを職員室まで迎えに来て欲しい。俺は、これからそいつの親御さんのところに行かないといけないから、頼んだぞ。」
「はい、分かりました。」
私はうなづきながら言った。
転入生か、不思議だな。ちょっと楽しみかも?
そんな気持ちであふれていた私を10分いや、5分後に打ち砕かれた。
「失礼します。1-2の担任の松林先生に呼ばれて来ました。」
私は挨拶をし、職員室に入った。
「おー、こっちこっち、委員長。」
私は松林先生のもとに行き、その背後に誰かがいるのに気づいた。
「委員長、こいつは、スリップ・レシャード。今まで、外国に住んでいたそうだ。」
「初めまして、私は1-2の委員長です。よろしくね、スリップ・レシャード君。」
彼は、そっけなく言った。
「ああ、よろしく。俺のことは、「レヴェル」と呼んでくれ。」
「はい、分かりました。」
その、レヴェル君はとてもキレイな瞳をしていた。だけど、その奥には暗い影が見えたような気がした。
「それじゃよろしくな、委員長。レヴェルを頼んだぞ。」
「はい、分かりました先生。私が責任を持ってレヴェル君を学校へ案内します。レヴェル君、ついて来てください。」
私はレヴェル君と共に職員室を出た。
「なぁ委員長、いや「betrayer!」」
んっ⁈betrayer?裏切り者のこと‥?裏切り者⁈失礼な!
「裏切り者ってどうゆうことですか⁈」
「さっすが、betrayer。反応が早い。」
「質問に答えてください!」
「えっ?お前何も俺から感じないの?」
感じる、どうゆうこと?
レヴェルは私の顔を覗き込んだ。
わぁ!
つい思わず、レヴェルを押し倒してしまった。
「ごっ、ごめんなさい。っとゆうか、さっきの言葉の意味がよく分かりません。教えてください!」
うげっという顔をされた。
「あのさ、それが人に頼む態度か?」
はぁ⁇あったまきた!
「それはすみません。特に気にならないので、失礼します。」
「ちょっ、待てよ!教室どこだよ!」
もうしらない、あんなの。無視だ、無視!
でも、先生に言ったことを思い出してしまった。
『私が責任をもって、学校を案内します』
あんなこと言わなきゃ良かった。
方向を変え、レヴェルの方を向く。
「つ・い・て・く・れ・ば‼︎」
あー、ムカツク、ムカツク!
「ほらそこ、席につけ!」
チャイムと同時に松林先生が入り、クラスメイト達を注意している。
どうせ、レヴェルのこと話すんだろうなー!
「まぁ、おはよう。さっそくだが、転入生を紹介する。ほら、入ってこい。」
レヴェルは、教室に入り黒板の前に行ってから、言葉を発した。
「スリップ・レシャードです。レヴェルと呼んでください。先月まで外国暮らしなため、慣れない点もございますが、よろしくお願いいたします。」
うげっ!猫かぶってる!声のトーンが地味に高いし。
「えっと、席はー。」
お願いします、あいつとだけはー。
「浜下の横で。」
おっしゃー!思わず、ガッツポーズしそうになったけど、ガマン、ガマン!
「先生、浜下君の横は、藤原先生の席ですー!」
藤原先生?あっー、副担任の藤原先生か。ここ2ヶ月来ていなかったから、忘れていたな。
「そうかー。じゃあ、誰にしようかな?」
「まっちゃん!」
「んー、なんだ?」
まっちゃんというのは、松林先生のあだ名。まぁ、そのあだ名で呼ぶ人は男子しかいないんだけどね。
「委員長の横でよくね?ちょうど委員長の席ってさ窓際だし、委員長の横の列って誰もいないんだからさー。」
はっ?何言ってんの、山野君!
「お、そうだな。ちょうど、委員長がレヴェルの案内係だしな!」
お前も納得するなー!
「じゃあ、委員長よろしく。」
「はっ、はーい。任せてください。」
うげっ!レヴェルがこっちに来た!あーもやだ。早退したらダメかな?
と思いながらも、今日の授業は過ぎていきました。
はー。疲れた。多分周りからすれば、レヴェルは美形のほうだから。良いなーとか、思ってるんだろうな。
「ねぇ、この前の映画面白かったねー!」
「そうそう!あの時のシーンかっこよかったー!」
「うんうん!」
西野さんと、木野本さん。相変わらず、仲がいいな。私もあーなれば良いのにな。ああっ!ダメ、ダメ!暗い顔したら、幸せが逃げちゃう!まぁ、レヴェルに会った時点でもう逃げたも同然なんだけどね。立ち止まっちゃダメ!さっさと帰って今日、西野さんにうまく教えれなかったところをもう一度しよう!今度はちゃんと教えれるように!んっ?あれは‥。
その時、藤原先生の後ろにレヴェルが隠れてついて行っているのが、教室から見えた。
どうして、今日来たばかりのレヴェルがまだ顔も知らない藤原先生のことを追っているの⁈あー、気になる!ついて行ってやる!
あれは、空き家?って私まるでストーカーじゃない⁈今頃気づくなんて、バカバカバカー!ああっ、頭叩いたら余計バカになる!やめないと。
「はぁっ」
ため息をついた⁈こっちを向く⁇なにか、なにか隠れれるところ!
私は木の影に隠れた。
「もう分かっているから、おーい出てこいよ。betrayer!」
ムッカー!
「betrayerって言わないでください!」
「そこにいたか。」
ああっ!やっちゃった…。バカバカバカー!
「委員長?」
「藤原先生。」
見つかっちゃったよ。
「どうしてここに?」
「えっとー、あの今日転入してきたレヴェル君に町を案内していたのです。何しろ彼は先月まで外国暮らしだったそうですからー。」
少し無理があるかな、だからってそんな目で見るなー、そこのレヴェル君ー。
「そうなの?ここは危ないから、早く帰るのよ」
「はい、先生はどこに?」
「ちょっとね!恋人に会いにね。」
「たしか、先生の恋人って、亡くなってますよね?」
「たしかに亡くなってあるわよ。学校でも話したでしょう。」
えっ?お墓まいり?にしても、お線香もなにも持ってない、どうゆうこと?
「お墓まいりですか?」
「んっとね、違うかな?ちょっとあそこまでー。」
先生は空を指した。
まさかー!
私はすぐさまコンタクトをはずした。あっ、死の色が見える。
「先生まさか、死ぬ気ですか?」
先生は私を見て笑った。これが答えだった。
「そんな、やめてください、先生!思い直してください!」
「やめろ!」
レヴェルが、なぜか私を止めた。
「どうして!なんで止めるの、レヴェル!」
「俺の仕事をとるなっ!」
仕事?なんのこと?
「お前は黙って見とけ!」
レヴェルが、私を押しのけた。その時身体を打ったみたいで、動けない。私は黙って見ておくしかできなかった。
「先生ー、初めまして。俺はあなたを迎えに来た死神です。あなたを愛する人の元へ送って差し上げましょう。」
「死‥神?本当、送ってくれるの?ありがとう。お願いするわ。」
そして、その場が光に包まれ、レヴェルの手に黒いヤリがあった。レヴェルはそのヤリを藤原先生の前に持って行き言った。
『この世に未練なきものよ、お前が存在した意味。お前が生まれた意味を、それを理解しあの世へ旅立たんー行け。』
藤原先生はその場で倒れた。先生の息はもうなかった。
「なっにを、やったのですか?」
「あの世へ送っただけだ。」
死の国、そんな。
「なに泣いてんだよ。」
「うるさい!」
分かんないよね、レヴェルには。
「うるさいってなんだよ、お前も死神のくせに!」
はっ?
「俺の本当の名前は、スリップ・レシャード・デス・コウン、死の神だ。」
Death?死神ー?
「私が死神とはどうゆうこと‥もしかして、」
「思い当たる事があるんだな、その目。それは死神の目だ。」
「死神の‥目?たしかに死にちかい者は見えますが。でもっ!私がどうして死神って決めつけるの?」
「はぁー。お前本当になにも知らないんだな。もういいよ、教えてやる。」
私は息を飲んで聞いた。
「普通は死神の子供は人間と同じように、死神の母のお腹で育つ。だが、ときどきいるんだよ。自分の子供を捨てる死神が。子供を捨てる、つまり人間の母のお腹に生み落すんだ。もともといた子供を追い出してー。」
「ちょっと、待って!じゃあ、私はその‥私の人間のお母さんのもともといた子供をおしのけて、生まれたって事?」
「そうだ。」
そ、んな。
「生み落とされた子供は普通、死神の力をもたないんだ。もし死神の力をもって生まれたなら、生まれ瞬間死神が来て死産となるはずなんだ。だから、お前の場合は生まれたこと自体がおかしんだ。」
「じゃあ、私は生まれた意味がないのですか?」
「それは知らない。話を戻すぞ。死神が産み落とした子供を死神の間でbetrayerという。」
「そうですか‥。だから、私のことを裏切り者といったのですね。」
「しっかし、なぜお前は生きてる?」
「なぜって、私にも分かりません。」
私はコンタクトをした。
「おい!それはなんだ?」
それって?コンタクトのこと?
「これは私が‥何歳かな?小さい時にある男の人が泣いていた私にくれたものです。私、みんなから気味悪がられていましたから。その目を隠しなさって。」
「それか!」
えっ?
「そいつは、多分死神だ。でないとおかしい。コンタクトなんて、5年も10年も使えるもんじゃないからな。もしかしたら、そいつはお前の本当の父親かもな。お前が生まれてこれたのはそれが理由だろうな。見て見ぬふりでもしたのだろう。」
「じゃあどうして、私を父は産み落としたのですか?もうっ、何がなんだかわからない!」
「そんなのは別にどうだっていい。大変なのは、お前が「生きている」という事実だ。お前は、今ここで死んでもらう。」
‥‥うん。涙がでて、止まらないよ。もういいよ、私が生きてる意味なんてなかった。それなら、今ここで死んだほうがずっと‥。あぁ、私の本当の両親に会いたかったなぁ。
私は目を閉じた。
私は今から死ぬ。
「っと言ったかが、まだお前の本当の名前を聞いてなかったな。「委員長」って名前じゃないんだろう。お前の名前は?覚えといてやるよ。」
どうして私の名前を聞くの?どうでもいいじゃん。でも、嬉しい自分もいる。なんか、悔しい。
私はレヴェルの耳元で囁やいた。
「私の名前はー。」
「ぶっは!あはははぁ」
ムッカー!
「失礼な!」
「いや、キレーな名前じゃん。まぁ、死神の子供にしちゃ全然似合ってないけどな。」
私は思わずほっぺたを膨らましてしまった。
「なんだよその顔、おもしれー。そうだお前のあだ名、「betrayer」×「death」で「レス」って呼ぼう。」
レスって私の名前と全然違う。でも、なぜかそんなに嫌じゃない。
「ほら、レス!ここにいれば危険だ、ついて来い。」
「へっ?ちょっと待って、藤原先生はどうなるのですか?」
「心配するな、その藤原先生は今頃もう転生しているだろう。もう魂はここにない。もともとあの先生は、死んでいる。あの時はもう、死後1.2時間たっているぞ。魂だけが死神を探して人の形をしていただけだ。それを安らかにおくるのが俺たち死神の仕事だ。」
「そうなんだ‥。じゃあ先生、恋人に会えたのかな?良かった。」
んっ?なにか忘れているような、
「あー。お前をあの世へおくる件だが、」
レヴェルは、その途端また黒いヤリをたじて、私へとそのヤリをむけた。
「んっ!」
「はぁー。やっぱりダメだ。死神はこの世に未練がない者しか送れないんだ。」
未練。もしかして、父親と会いたいって思ったから?
「じゃあ、私は死ねないのですか?」
「そうだ。だが、お前をのばなしにするわけにはいかない。もう、父親かもななんて言うんじゃなかった。仕方ない、お前、俺とペアになり一緒に死神の仕事をしろ!」
「はぃ?」
こうして私とレヴェルの死神の仕事が始まったのです。
「私は了承してないですからね!」