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精霊戦記フルミニス  作者: 師走
第七章 救世主
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対策会議

 数日後、作戦室には軍の上層部の人間と、コウ、瑞希、ウンディーネ、影村、シェイド、仁の六名を加えた計十名が集まっていた。


「観測班からの情報によると、フルミニスはこのポイントに潜伏しているらしい」


 壁にプロジェクターで投影された地図の一点を差す。


「高宕山の中腹ですか」


「そうだ。ここでフルミニス、もといセグンドゥムは沈黙している。ここ数日、一切の動きはないそうだ」

『そこで何をしているんですの?』

「それは不明だ。ただ、この山の付近の霊脈で妙な反応が検知されているらしい」


 司令官の言葉に合わせて、地図上に青いラインが引かれる。


「霊脈ってなんだ?」

「霊脈って言うのは、土地に流れている霊子、いわば天然の霊子回路ね」


 話の腰を折ろうとするコウに、瑞希が説明を入れる。


「その通り、おそらく霊脈を操作して何らかの魔法を起動するつもりなのだろう」


 霊脈を流れる霊子の情報は膨大だ。もしこれらを使って大規模な魔法を発動するつもりなら、それを止める必要がある。


『提案。であれば私達が向かいます』


 その発言をしたのはこの場にいた十名のうちの誰でもない。仁の持つエルフォンから発せられた声だった。


「……さっきから聞きたかったんだが、何でお前がここにいるんだ。スクリプト」


 影村に睨まれても、画面の向こうにいる人工精霊は顔色一つ変えない。ロボットのような血の通わない表情で、機械的に返す。


『回答。セグンドゥムの討伐は私達の目的の一つです』

「……だから俺は切咲を作戦に加えるのは反対だったんだ」


 会議直前、仁が自ら司令官に自分も会議に参加させるように進言したのだ。影村の取調にはどこかおかしな態度ではぐらかしていたにも関わらず、今回は自らブレイディオスに乗って戦いたいなどと言い出したのだ。


 元々不審な動きこそ見られたが、今まで自軍に不利益になる様なことはしていなかったので、司令官から会議への参加が許されたのだ。だが、


「スクリプトまで部屋に連れてくるのは聞いていなかったぞ」

「ブレイディオスを動かすのは彼女なので、一緒に聞いた方がいいかなと思いまして」


 へらへらと笑う仁に、影村はため息を吐いて話を戻す。


「それで、スクリプト。お前が先行してどうするんだ?」

『回答。皆さんは既にご存知のようですが、私の霊子駆動には魔法を無効にする能力があります。敵がどんな魔法を仕掛けていても私は打ち消すことができます』


 確かに彼女の言う通り、霊脈を使おうがそれが魔法であることには変わりない。どんな大規模魔法であろうとも、彼女には何の脅威にならないのだろう。


『追記。現在魔法の起動準備中であれば尚更私が先行すべきです。敵は霊脈の操作に集中して動けない今が好機』

「ん? ちょっと待……」

「スクリプト」


 影村が何か言いかけたところで、コウが横から口を挟んだ。


『なんでしょうか?』

「セグンドゥムに取り込まれているフルメルはどうするんだ?」


 コウにとってそれは最優先事項だ。敵を倒してフルメルが解放されるのなら簡単だが、そうでなければ倒す前にフルメルを助ける手段が必要になる。


『回答。現状、方法はありません。セグンドゥムの理性が崩壊していることから、意識統合はまだ完了していないようですがそれも時間の問題でしょう』

「だが……」

「落ち着け。今樟葉がフルメル救出の方法を探っている」


 明らかに動揺しているコウを、影村が静かに宥めた。


「それより、一つお前に聞きたいんだが、お前の魔法は本当に魔法の無効化なのか?」

『回答。はい。その通りです』


 予想していた質問なのか、淀みなく答える。その反応から何も読み取ることができず、影村は「そうか」と返す事しかできなかった。


「では、私から当日の作戦を通達する」


 そうして司令官から作戦を伝えられ、会議は終了した。





「コウさんコウさん、少しよろしいですか?」


 作戦室を出たコウを呼んだのは美音だった。彼女の隣には藍川先生もいる。


「美音、先生、どうしたんだ?」

「実はですね。フルメルさんを助ける方法が分かったかもしれないんですよ」

「本当か?」


 唐突に知らされた朗報に、コウは目を見開いて驚いた。


「はい。藍川先生のお陰で」

「俺じゃない。深雪の遺品が役に立っただけだ」


 藍川は頭を掻きながら否定する。いまいち状況の飲み込めていないコウは、二人の顔を交互に見つめて首を傾げる。


「まあとりあえず、ここじゃあれですし、私の研究室に来てください」

「分かった」

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