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精霊戦記フルミニス  作者: 師走
第七章 救世主
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離れていく心

 その頃、シミュレーターでの訓練を行っていた仁とフルメルは、


『はぁぁぁっ!』


 絶叫と共に最後の喰精を切り伏せる。

 そこでシミュレートは終了し、フルミニスの周囲の風景は市街地から、元の霊子駆動格納庫へと戻る。


『そろそろ終わりにしましょうか?』

「そうだね」


 荒い呼吸を整えながら頷く。


「でも……後もう一セットだけやりたいんだけど」

『……仁』


 すると、画面の中のフルメルが仁に訝しげな眼を向ける。


「な、なに?」


 いつものように困った顔をする仁だが、普段の彼にある余裕を、この表情からは感じられなかった。


『何かあったの?』

「なんでもないよ。ほら、休んでた分取り戻さないと……」

『そうじゃなくて、あなた、この前からおかしいわよ』

「そうかな?」

『本当の事教えて。向こうで何を見たの?』

「……」


 やはり彼は口を閉ざす。


 以前にも彼女は、仁にそれとなく聞いてみたことがあった。しかし、結果はいつもこれだ。何も言わず、何でもないよと言って笑う。フルメルにはそれが辛くて堪らない。


『私はあなたのパートナーよ。だから……』

「君のパートナーはコウだろ?」


 笑顔でそう口にする仁。その言葉が彼女の胸を締め付ける。

 フルメルはコウの事をパートナーとして認めていない訳ではない。むしろ今ではよき相棒だと思っている。しかし、それとこれとは別だ。仁もまた彼女にとっては大切なパートナーなのだ。なのに、今の彼は悩みを打ち明けないどころか、突き放すような態度を取っている。


『私にとっては、あなたも……』

「ありがとう」


 謝辞が反論を遮る。


「僕は大丈夫だから、だから、」


 ありがとう。再度口にされた彼からの礼。

 その一言に込められた意思を汲み取ることができず、フルメルは先の言葉を失った。


「じゃあ気を取り直して、もうワンセット、お願いするよ」

『……分かった』


 何も言えないまま、彼女の瞳に映る景色は再び仮想の戦場へと変わる。


 そこから言葉を交わさず、一方通行の掛け声すらないまま黙々と敵を刈り続ける。パートナーの事を想いながら、彼から何も聞き出せない、何の力にもなれない苛立ちをぶつけるように、虚構の敵を屠るのだった。

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