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精霊戦記フルミニス  作者: 師走
第七章 救世主
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焦燥

 その頃、仁は藍川に連れられて、樫宮高校の地下を訪れていた。


「学校の下に、こんな場所があったんですね」

「生徒は原則立ち入り禁止の場所だからな。ただ、どうしても向こうさんがこの部屋を使いたいって言うもんでな」

「向こうっていうのは?」

「沖縄支部の人間だ。ほら、ついたぞ」


 そこは尋問室だった。

 薄暗い地下空間のせいだろう。簡素な金属の扉が妙な威圧感を与えてくる。その扉を藍川が三回ほどノックをして開ける。


「失礼します」


 中には机とそれを挟むパイプ椅子が二つあるのみ、そして対面に腰かける一人の男が仁を睨みつけるように見ている。織部色の軍服に身を包んでおり、背が高い。年は二十代後半ぐらいに見えるが、チラッと目に入ったバッチが階級の高さを示している。


「初めまして。沖縄支部の第三部隊隊長、影村朴下だ」

「は、初めまして、フルミニスのサブパイロットの切咲仁です」


 影村に挨拶されて、仁も慌てて返した。しばらく静寂と張り詰めた空気が狭い部屋の中を包む。


「え、えーっと、俺はこれで失礼します」


その空気に耐え切れなかったのか、藍川はそう言って逃げるように部屋を立ち去る。

藍川がいなくなった事で、緊迫した空気はさらに引き締められる。だが、無言で影村が座るように促すと、ようやく仁は「失礼します」と一言。そして影村の対面に腰を下ろした。


「呼び出して悪かったな」

「いえ、全然。その……今回はどういった……」


 恐る恐る尋ねてみると、影村は元々怖い顔をより一層引き締めて口を開く。


「単刀直入に聴こう。お前は異世界で何を見た?」


 仁は特に驚かなかった。彼も呼び出された時点で、それを聞かれることは覚悟していた。ただ、ここで本当の事を話すべきなのかどうか。仁は測りかねていた。


「報告した通りです。僕は異世界で廃墟、研究所だったであろう場所を見つけ、そこでスクリプトを名乗る精霊と……」

「人工精霊、だろう?」


 仁の言葉を遮って、影村は威圧する。


「お前はあれが人工精霊だと知っていた。にもかかわらず報告しなかった。あの霊子駆動についてもお前はほとんど何も話さなかった。何故情報を隠した?」

「……誤解ですよ。僕は知らなかっただけです」


 仁は無理に笑顔を作って見せる。


「スクリプトとは一時的に協力していただけで、風見ヶ原でも、偶然居合わせた彼女に僕が頼んだんです」

「偶然居合わせたか、無理のある言い訳だな」


 異世界で出会った精霊と、こちら側でたまたま居合わせた。確かに無理がある。だが、それでも仁は作り笑いを崩さない。


「それに、僕が嘘を吐くことに何のメリットがあるんですか?」

「それが分からないから聞いているんだがな」


 影村はお手上げと言わんばかりに、椅子の上でふんぞり返る。


「お話は以上ですか? でしたらこれで……」

「プリムス」

「!?」


 何の前ぶりもなく、影村はその単語を呟いた。あまりにも唐突だったため、仁の表情は崩れる。


「ラテン語で序数の一、そしてシルフィードの証言によると、スクリプトはあの人間型の喰精をプリムス・コアと呼んでいたそうだな。あれはどういう意味だ?」

「そ、それは……」

「加えて、同じく人間型の喰精、セグンドゥムも意味はラテン語で序数の二、こいつらはどういう関係がある?」

「……」


 答えられずに仁は黙り込んでしまう。


「なら聖別機とは何だ?」

「……あっちの世界に出没する無人兵器の事です」

「それだけか?」


 また仁は口を噤み、頑として話す気はないという姿勢を示す。


「はぁ、もういい」


 影村は投げやり気味にそう言うと、右手を払うような仕草で出ていけとアピールする。


「失礼します」


 仁は頭を下げて、そそくさと部屋を出て行った。


「思ったより早かったな」


 部屋から少し離れた場所で、藍川は仁を待っていた。


「何を話していたんだ?」

「大した事じゃありませんよ」


 影村に見せたような作り笑いを浮かべ、その場を流す。


「そうか……」


 何か言いたそうだったが、彼は追求を控えて仁を外まで案内することにした。

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