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精霊戦記フルミニス  作者: 師走
第六章 加速する運命
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予感

 後日、風見ヶ原支部での事情聴取を終えて本部に戻った仁はフルメルから尋問を受けていた。


『どういう事? 何でまたあの機体に乗ってたの? ていうか何であれがこっちの世界にあるの?』

「えーっと……」


 怖い顔で詰め寄るフルメルに仁はただ視線を反らして苦笑いを浮かべるだけだ。


『誤魔化さないで。ちゃんと答えて! 私に何を隠してるの?』


 まるで浮気を問い詰める若妻のような形相で彼に迫る。それでも要領を得ない返答を繰り返す仁にフルメルの顔にしわが増える。


「まるで夫婦喧嘩ですね」


 その様子を遠巻きに見ていた美音はそんな感想を述べる。横にいるコウはその感想を聞いて少しだけ不満そうにする。


「嫉妬してるんですか?」

「よく分からない」

「そうですか」


 美音はそんな彼の様子を見ながら考える。


(あの後、仁さんのパラメーターを見ましたが、やはりコウさんのようなノイズは見つからなかった。つまりあの剣が原因ではないということ)


 ならば原因は何なのか。正直コウとの付き合いも別に長くない美音には分かりかねた。


「そういえば、風見ヶ原に出た人間型の喰精は、どうなったんだ?」

「ああ。あれは逃げたそうですよ。今のところセグンドゥムとの関係性は不明ですね。今回は人語を話さなかったそうですし」

「そもそも、喰精とのは何なんだ?」

「根源的な質問ですね。今のところ霊子の集合体、原始的な本能であらゆるものを憑依して喰らう存在、という事しか分かってませんね」

「そうか……」

「霊子の集合体という意味では、精霊と似たようなもんなんじゃないですか。まあ精霊の場合は「自我」の情報を持っているわけですが。ていうか、何でそんな事聞いたんですか?」

「何となく気になった」

「そうですか」


 視線を仁とフルメルの方に戻すと、フルメルはまだ説教を続けていた。


「そろそろ止めてあげたらどうですか?」

「俺が言って聞くような奴じゃない」

「さいですか」


 いい加減痴話喧嘩を見るのも飽きたのか、美音は挨拶もせずにその場を後にする。取り残されたコウは、複雑な心境で彼らのやり取りを見つめているだけだった。






 同刻、沖縄浦添市、米軍が放棄した基地を流用して建てられた日本軍沖縄支部では、風見ヶ原での戦闘の報告を受けた一人の男が難しい顔をしていた。


「この機体……」


 街の監視カメラより観測した映像には、銀色の霊子駆動、ブレイディオスの戦闘の様子が。敵の魔法を無効化し、不安定な軌道で飛び続ける謎の霊子駆動。その映像を真剣に検分する。


「フルミニス-アウィスと同じプラズマ飛行ユニットを搭載しているな。装備は見たところ近接のみか。そして無効化魔法。お前はどう思う?」


 誰もいない部屋の中で彼は声をかける。


『そうだな』


 すると、机の上に無造作に置かれていたエルフォンから返事が届く。


『俺の知る限り、こんな霊子駆動は知らない。その無効化ってやつもな』

「そうか」


 返答を返した相棒の方を一瞥もせず、映像に注視する。


「本部の報告によると、例の異世界、沖ノ鳥島の遺跡から行けるその場所で見つけた機体だったな」

『そう聞いてるぜ。ちなみに、その時本部の連中が持ち帰った霊子駆動の設計図があるとかなんとか』

「この機体の搭乗者も本部の人間だったな。なら」


 映像を閉じ、ノートパソコンの画面上に何かの書類を映す。


「こいつを片付けて、来週中には沖縄を発って本部に向かう」

『急だな。その間、こっちの守りはどうするんだ?』

「俺の機体(シャドールーツ)は置いてく。パイロットは代理を立てればいい。そのための用意もしてあるからな」

『てことは、自動的に俺も居残りか?』

「そういう事だ。留守は任せたぞ」

『へいへい』


 相棒の精霊は不満そうだったが、彼の頼みを引き受けた。


「これから、忙しくなりそうだ」


 彼、影村朴下はそう一言呟いて作業に戻るのだった。

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