表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊戦記フルミニス  作者: 師走
第四章 あるべきカタチ
PR
21/59

戦いの後/始まりの気配

 二ヶ月後、退院した仁は寮を訪れていた。


「久々に戻ってきたな」


 懐かしむようにキョロキョロしながら寮の階段を昇る。かなりの間、入院生活が続いたので、自室の場所が曖昧なのだ。ようやく自分の部屋に辿り着いた。


 一呼吸おいてから、扉を勢い良く押し開ける。

パァンッと乾いた音が響いたと思うと、光る紙片が仁の頭に降り注いだ。


『退院おめでとう』

「おめでとう」


 フルメルのおめでとうコールに、遅れてコウが棒読みでボソッと言う。


『ちょっとコウ。誠意が籠ってないわよ』

「俺は言われたとおりにやったぞ」


 フルメルとコウの相変わらずなやり取りに仁は苦笑する。


「ありがとう。二人とも」

『当然よ。私はあなたのパートナーで、彼はあなたの親友でしょ』

「元パートナーだろ」


 コウが少し嫉妬したように、やや感情を込めて呟く。


「フルメル。僕が戻ってくるまで、コウは部屋ではどんな感じだった? 散らかしたりしてなかった?」

『こいつはそもそもあんまり物を出さないから散らかりようがなかったわ』

「そっか」

「フルメル。他のやつはまだなのか?」

『もうそろそろじゃないかしら』

「他?」


 この二人以外にも誰か来るのだろうかと、仁が首を傾げると、下のほうから足音が伝わってきた。


『ほら、噂をすれば』

「あ、もう来てたの?」


 部屋の扉が勢いよく開け放たれると、瑞希、ウンディーネ、藍川の三人がスーパーの袋を持って入ってきた。


「皆、どうして」

「フルメルに呼ばれてな。こいつらと一緒に買い出しを頼まれていたんだが、思ってたより戻ってくるのが早かったな」

「全部先生の驕りよ」

『私は先に行っててもよかったんじゃないかしら。どうせ持てないのだから』

『来たところで準備できないでしょうが』

「早く食べたい」

 皆が騒ぎ始めた頃、コウが瑞希の袋の中にあるオードブルを見つめながらボソッと呟いた。

「そうね。じゃあ皆、さっさと支度しましょう」


 ◆


 夜も深け、仁の退院パーティーをお開きした後、コウは一人ベランダで空をボーっと眺めていた。


『何たそがれてるの?』


 すると、フルメルが彼の前に出現した。彼女の存在に気付いてそちらを向くと、能面のまま口を開いた。


「……食べ過ぎてお腹が痛い」

『何よそれ』


 無表情のままそんな事を言い出すので、彼女は呆れかえる。しかし、直後彼女は笑う。


『でも、少しは人間らしくなったんじゃない?』

「そうなのか?」

『そうよ』


 その後、二人の間に会話はなくなった。

 ただ二人で、まっすぐ、同じ方向を見上げていた。


 ◆


 同刻、太平洋。

 海の真ん中にポツンと配置された島とも言い難い岩、穏やかなはずのその周囲に突然荒波が起こる。

 それは岩を中心とした渦を巻き、やがて中心の岩を飲み込んで海に穴を開ける。

 ゴォォォッと轟音を響かせ、穴の中から塔が出現した。

 五百メートルはゆうに超える高さの石の塔、先程まで海上にはもちろん、海の中にも存在しなかったそれは独りでにその姿を現したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ