プロローグ
プロローグ
「ふぁぁ〜よく寝た〜」
白い陽光に照らされ、白いベッドで眠っていた長い金髪の少女は目を覚ます。
「さぁ〜て、今日も頑張るぞ〜」
少女は大きく背伸びをした後、棚から私服を取り出しパジャマから着替えた後、朝食の準備を始めた。
「あ、そろそろ食材が無くなりそう…しょうがない朝ご飯はパンとミルクで我慢して食べ終わったら買いに行こうっと!」
そう言って、少女は朝食の準備を終えパンを食べ始めた。
彼女の名前はエリナ・アルシア。この世界で上位の存在『天使』でありながら地上で生活している少女。普通、天使は『天界』と呼ばれる場所で生活するもので地上に降りてくることなど滅多にないのだが、エリナは地上で暮らす人間に興味が湧き、大天使達や両親の反対を振り切って一人で地上に降り立ち、生活を始めた。もちろん、エリナが天使であることを街の住人達は知っている。
「ご馳走様でした!よし、それじゃあ行こっか!」
朝食を終えたエリナは、護身用の剣を腰に携え財布を持ち、家を飛び出した。
☆☆☆
「買いすぎちゃったかな?」
ただいま、エリナの両手には食材がぎゅうぎゅうに詰め込まれた袋が握られていた。
「あ〜やばい…手が痺れてきた…」
エリナは手をプルプルさせながら、自宅へ続く道を歩いて行く。その時、
「お嬢さん…ちょっと…」
「はい?」
突然、茶色いローブに身を包んだ男性に声を掛けられ戸惑うエリナ。
「あの、どうしたんですか?」
「ちょっと私の店に寄って行きませんか?あ、別にやましいことはありませんからね」
完全に怪しさ全開なのだが、エリナは少し考える素振りをしてから、「わかりました」っと答え、ローブの男性が経営しているという店の中に入っていった。そこで、エリナが見たものは…
「さぁ!それでは、奴隷のオークションを始めたいと思います。まずは、エルフの里から連れてきました女性のエルフ!このエルフなんと回復魔法に長けており、怪我の治療などに役立つこと間違いなしでございます!それでは、10万ゴルドから始めましょう!どなたか買う人はおりませんか?」
「えっ⁉︎…あの…これって…」
「はい…見てのとおり奴隷のオークションです…」
「!!…私、帰ります!」
そう言って、エリナが店を飛び出そうとした時、数人の男が現れ入り口を塞いだ。
「なっ⁉︎」
「困りますよ…お客さん…何も買わずに帰られては…」
「くっ!」
男は唇を噛むエリナを見つめニヤリと笑った。そう、この男は最初からエリナに奴隷を買わせるつもりで声をかけたのだ。
「どうしても、どいてもらうことは出来ないんですか?」
「はい…お客さんがうちの商品を買ってくれるまでは…」
「あなた!」
エリナは人を物扱いする男の言葉に我慢できなかったのか、男に腰の剣を抜こうとしたその時…
「おい!待て!くそガキ!」
「ん?」
声のした方をエリナが向くと、数人のガタイのいい男達がボロい服を着て、手に白いオカリナを持った黒髪の幼い少年を追いかけていた。
「はぁ…はぁ…」
少年は人ごみを掻き分けながら、なんとか男達から逃げようとする。だが、疲れたのか走る速さが徐々に落ちていった。その間に男達は少年に追いつき少年の腕を掴んだ。
「へへっ…やっと捕まえたぜ…全く手間かけさせやがって、さぁ行くぞ…」
男は少年の腕を引きながら元来た道を戻って行く。
「嫌だ…誰か、助けて…」
少年は涙を流しながら連れて行こうとする男に抵抗する。それを見ていたエリナは男に抜きかけていた剣を収め、その少年のところに走って向かった。
「ちょっとすいません!」
「あ、なんだ?嬢ちゃん?」
「その子、嫌がってますよね?離してやってくれませんか?」
「悪いが、こいつはうちの商品なんだ…離すわけにはいかねぇ」
「そうですか…ならその子、私が買います!」
「えっ?」
エリナの言葉に男だけでなく、少年も驚いた顔をする。そして、周りの視線がエリナ達に集まる。
「嬢ちゃん…本気で言ってんのかい?」
「本気です…私、嘘は嫌いなので…で、この子はいくらですか?まさか、お前には売らないなんて言わないですよね?この子を商品と言ったのは、あなたです。なら私には買う権利があります。それに、私…」
すると、エリナの背中が輝き白い翼が現れる。それを見た男は目を見開き、周りにいた客達と共に、床に手をつき深々と土下座す
る。
「まさか、天使様だったとは…舐めた態度取ってしまい申し訳ございません…」
「あーそういうの良いですから…もう一度言います。その子はいくらですか?」
「あ、はい!2万ゴルドでございます!」
男はさっきの態度とは裏腹に敬語を使う。エリナは、自分の財布から代金を男に渡し、代金を受け取った男は少年をエリナの元へ行くように指示する。エリナは、少年を出来るだけ怖がらせないよう笑顔をつくり、こっちへ来るよう手招きする。すると、少年はオドオドしながらも少しずつエリナへ近づいて行く。そして、エリナの元へたどり着いた少年はすぐさまエリナの背中に隠れた。その姿を見たエリナは苦笑した。
「あの…これ、契約書です。ここにサインをお願いします」
そう言って、男は一枚の紙とペンをエリナに渡す。それを受け取ったエリナは紙にサインし、男に渡す。
「はい。ご確認致しました。エリナ・アルシア様。その奴隷はもうあなた様の物です」
「そうですか…では…」
エリナは、男に少し会釈し少年の手を引いてて出口へ向かった。
次回 少年の名前と与えられた仕事