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第3章-4 アイドルの父会合

 そして空腹は満たされ、希望は断たれた。

「結論、戻ることになりましたね」

「しゃあないやろ。野宿するわけにはいかんしな」

「むぅ……それについては誠に申し訳なかった」

「全くだ! だからネクロマンサーは!」

「確かにこれは儂の責ではあるが、ネクロマンサーに対する悪態は許容できんな」

「ひっ! 近寄るな! 近寄らないでください! サボりませんごめんなさい!」

 アグロスの軍曹恐怖症は相当なようで、父上が少しばかし凄むと一気に劣勢に追い込まれる。

「でも、最悪今後食事が出なかったとしてもしばらく分の食糧は手に入ったからよかったじゃないか」

「そうですね。義父様には感謝ですね」

 言い方が微妙に違っていたのは気のせいだろうか?

「所で父上はどうする気なのですか?」

 これから行く先はナンデモ学園が合宿先として選んだ宿。ぼろさのわりに規模は大きく、部屋数は多いと思われるがナンデモ学園のパーティーメンバーと教師陣はかなりの人数がいる。部屋は残っているのだろうか?

「行ってみなければわからん最悪野宿じゃな」

「そ、そんなことをしてまで何なら私が」

「お前が変わったら姫様たちとネクロマンサーが一緒に寝ることになるだろ?」

「何を言ってますの! あなたたち私と一緒な部屋で寝るおつもりですか⁉」

「あ、いや、と言うかそれどうするんですかアグロス様」

「え、あ、そ、それは」

 食事問題がされば今度は宿泊先問題。父上の泊まり先が決まらなければ、イシュタル王女のパーティーの部屋割りもここに来て難儀を示す。そもそもゼノ一人であの部屋満室になりそうなんですけど。

「そこについてはエドさんに聞いてみるしかないわね。流石にこれは合宿の範疇外になるから教師陣も対応してくれないわ」

「どうあれまずは帰るしかなさそうやな。アーチェはん、こっちでええんか?」

「夕陽の位置からしてこっちで当たっているな。夜になる前に戻ろう」

 流石はエルフ。自然に対する知識は豊富で迷いが無く、何事もなく宿泊先に着くことができた。

「このような場所に旅館があるとはな! しかし、古きと言うには些かな物があるがな……」

 似たような感想が父上から漏れる。思想が同じ方角に傾いているのかと億劫になる。

「もう休みますわよ! 私は足が痛いのですわ! アグロス! マッサージを手配しますわ」

「えっ⁉ ここでですか⁉」

 何日後になることやら。

 そんな王女みたいな無茶ぶりはしないけど、流石に私も疲れた。

 アイドル活動の為に体力づくりはしていたけど、これだけ歩いた――それも真夏の炎天下――のはいつぶりだろう。

 さっきはすぐに遮られたが、畳の上に転がったりお布団の上で自由に動けまわれるなんていつぶりだろうか。

「うん? 何か騒がしくないか?」

「騒がしい? 宿の方か?」

「あ、確かに何か聞こえてきますね」

 耳を澄ませると何か言い合っている声が合宿先の方から聞こえる。

「何かまた問題が起きてるんじゃない?」

「これ以上何が起こるねんあの合宿先!」

「まさか寝る場所すらないとか?」

 いやいや、そんなまさか。部屋もちゃんとあったし。

「沈んだか?」

 私の心の声が聞こえたのか、はたまた誰でも辿り着きそうな答えに辿り着いたのか。

「そんなの関係ありませんわ! 私は休みますからね!」

 お構いなしと言わんばかりにイシュタル王女は合宿先の扉を開ける。

「見たんですよ! 本当に見たんです!」

「素直に言ってください! これが狙いだったんですよね⁉」

「皆さん落ち着いてください。本当に来ていませんから落ち着いてください」

 一国の王女の凱旋、のはずなのに誰もそのことには気づかず教師陣に言葉を投げかける。

「一体何があったねん」

「何か出たみたいだけど」

「猛獣か?」

「幽霊とか」

「止めなさい」

 止めます。人生を止める気はさらさらないので。

「あ、クリスさん! クリスさんはこのこと知っていたんですか! 生徒会関係者は事前に話を聞いていたりしませんか⁉」

「え? え? 何が?」

 アレクサンダー家の令嬢であり生徒会関係者でもあるクリスに生徒たちが群がる。肩書もあれど、彼女自身が持つ人望あってこその光景なのだろうけど、クリス自身もこの状況に一切の覚えがないらしく困惑している。

「なんじゃ。困りごとか?」

 前が詰まることによって中に入ることができない父上が私に問いかける。

「何かが出たみたいですね」

「ふむ。何かではわからぬな。じっくり話を聞かねば何も解決はせぬぞ」

 出番とばかりに私たちよりも頭一、ニ個分上の父上が件の騒動の場を見渡す。

「何事だ。何が出てきたという」

 その問いに帰ってきた答えは簡潔だった。


「「「「「軍曹だぁー‼‼‼‼‼」」」」」


「あ、あぁ……」

「そういうことね」

「む。待たれよ! そもそもその軍曹とは?」

 返事はない。皆散り散りになり、そこには逃げはせずとも驚嘆する教師陣のみが残っていた。

 その後父上が軍曹で無いことを説明するのにかなりの時間がかかったことは言うまでもない。


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