エピローグ
〝拝啓 父上、母上へ
先日は始めて島に行くために船に乗りました。実際は初めてではないはずなのですが、物心つく前の出来事で全く覚えておりません。そこでは色んな体験をしました。色んな……。中でも死霊の親子との出会いは特別で、改めて今自分がいる状況を認識させられました。今後は父上、母上にできる限り今まで通りのように手紙が送れるようにディーナさんにお願いしすることにしました。仕事内容はだいぶ変わりましたが、仕事、学園生活共に頑張っていきますので、温かく見守っていてください。
それと――いつもありがとう〟
「ふぅ」
普段より落ち着いて手紙を書くことができた。今まではこれが普通だったのにね……。
「島でそのような親子に出会うとは、メリアスお嬢様は何かしらの運命に導かれたのでしょうか」
「……それ即ち私がアイドルになることもこの伏線だったことになるんだけど」
「さて、どうでしょうかね」
新しいコーヒーを持ってきたブラムハムが私をからかう。私がクリスを助けると言って以降、逃げることに執着しなくなった。てか、寧ろ楽しんでいるし。
「てか何よこれ! 何でこんなの選んできたわけ⁉ 島出る前に免税店でいい品見つけてきてよ!」
そうしてこちらも楽しんでいる――はずが今は喚いている一人。
最後の最後でそういえば家の暑がりが何か言ってたなと思って物色したけど、最終的にこれが綺麗でいいんじゃないかとカトリナに薦められた珊瑚をお土産に持ってきた。もちろんカトリナが選んだことは内緒である。
「メリアスお嬢様が持ってきた物に文句を言うんではない」
「でもこれはないよ! 菓子箱頂戴よ! 缶詰頂戴よ! ご当地産トーテム頂戴よ!」
「無人島だから菓子箱も缶詰もないの。それとトーテムって何よ」
「南方の国にそのような木の彫刻があると聞きましたような……」
流石元流通関連に仕えていた身。海外情勢は詳しい。
「もういいよ。次にどこ行くかディーナちゃんに聞いてるし」
「次あるの⁉」
「だってもうすぐ夏休みじゃん! ウィー、ラブ、ロングヴァッケーショーン‼」
「あぁ……」
そういえば昨年は毎日お昼寝月間があった。もちろん真夜中はテリトリーで仕事をしていたからこの期間は怒られることも面倒事も無かったので嬉しかったのを覚えている。
しかし今年は違う。ディーナも流石に授業を無視することはなかったがその期間は授業が無くなる。障害が無くなれば後はディーナの独壇場。一体どんな企画が飛び出すのか心配で仕方がない。
「今度はどこかな。海なら山? もういっそのこと公共会館、スタジアム、ドームにひとっ飛び出しちゃう⁉」
その心配をよそにはしゃぐフロース。
「これもまた青春の楽しみ方です。危なくなったら私も何らかの対策をしておきますので、心置きなく楽しんでください」
ブラムハムもそこまで心配してくれず寧ろ後押しをしてくる。
「……あぁ……今年の夏休みはどうなっちゃうんだ……」
〝先行きが不安です〟
無意識のうちに手紙にこの文章が追加された。




