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第3章-1 アイドルとしての日常

「メリアスさん! ずっとファンでした!」

 ぶんぶん…………。

「メリアスちゃん! これコンガリという有名な焼き菓子店のクッキーです。甘いもの好きでしたよね?」

 ぶんぶん…………。

「メリアスちゃん! 生まれた時から好きでした! これが僕の気持ちです!」

 ……………………。


 〝拝啓 父上、母上へ

 知らない人から何でも貰ってはいけないと言うルールは、この世界には通用しないそうです〟


「はい、は~い。これはこっちで預かっておくかんな。はい次~」

 また一人知らない男子が去っていくと、隣でディーナさんが身体計測の先生よろしく、最後尾が見えない列の人たちを順繰りに前へと送る。

 今やっているのは握手会と呼ばれるもので、普段投写水晶やステージ上でしか見られないアイドルと接点を作る大きな機会となるイベントらしい。そもそも私はアイドルになって一日目なのでそのようなことをやった覚えなどあるわけもない。

 なのにこの集まりである。正直裏がありそうで怖い。

 どこかの教室から掻っ攫ってきた机越しに、椅子に座った私がひたすら立って待たされている人――大半、いやほぼ、いや全員男――にひたすら握手をし続けて早30分近く。もちろん授業中にできる訳もなく、先日と同じく本日も遅刻せずという偉業を成し遂げ、朝早くに登校した。勿論眠い。

「おー! 初日にも関わらず五十人越えやで! よっしゃ! ここからはうちが許す限りの追加オプ注文もOKにするで! 追加料金は頂くけどな」

「何だって! 俺何してもらお」

「嘘だろ! 早く並べたと思ったのに……」

「こうなったらもう一回並び直すぞ!」

 ディーナさんが余計なことを言ったせいで、先ほど手紙を押し付けてきた男子が、列の最後尾に向かって駆け出す。どれだけ走らされるのだろう。

 しかし、ディーナさんが許す限りとはいえ、何を要求されるのか不安で仕方がない。なんせ審判がディーナさんである。大金を積まれればどこまで許すのだろう。キスを強制させられたりしないだろうか。

 こんな場所で操を失うことになるのであれば父上と母上に合わせる顔がない。その域に達したなら自決するしかない。晴れて冥界の配下たちのところへお仲間入りだ。

「メリアスちゃん。は、初めまして。こ、これほんの気持ちで……」

 そして五十一人目に来たのが鼻息の荒い小太りな男。うわ~。貰った菓子箱の包装が既に汗まみれでしわしわを超えてべとべとである。

「え、えっと。つ、追加料金。払ってもいいかな?」

「内容次第やで? とりあえず基本金1000マニーからや」

 小太りの男が財布から1000マニー札を出す。これだけで一日分の食費が賄えるというのに、一体何を注文する気なのだろうか。

「で、あのね。メリアスちゃん」

 小太りの男が何かを決心したように息をのむ。それに呼応するかのように私も息を飲んだ。

「僕に……『この豚野郎!』って言ってくれませんか?」

 ………………は?

 何言ってるのこの人。確かに体格は豚に近い。しかし、太っている人に豚と言うのは世間一般的に侮辱を表す言葉である。それをわざわざ言われたい、それもお金を払ってまでというのは異常としか思えない。

「う~ん。もうちょい上乗せしてもらいたいとこやけど……今回はサービスや! 1000マニーで許したるわ!」

「まだ取る気だったんですか⁉」

 侮辱されるために払ったお金を更に上乗せさせようという魂胆は、もはや人の考えではなかった。ドワーフへの偏見が悪方向へ急下降。

「んじゃ取引成立と。ほい、はよいわんと後つっかえてるで?」

「え……でも……初対面の人にいきなりそれは」

「そういう性癖の奴らはいくらでもおるんや。そんなんかまっとったらキリがないで?」

 目線をもう一度前に戻す。そこには先ほど同様息の荒い――というか更に勢い増している豚、違う! 小太りな男子がいる。

 こういう性癖の人はいくらでもいるとディーナさんは言ったが、生まれて早十六年、このような性癖の人物を見たのは初めてである。どう対処していいのかももちろん知らない。

「はぁ……」

 戸惑う私にじれったくなったのか。ディーナさんが溜息をついて私に人差し指を突きつけた。

「それならうちが見本見せたるわ! こういう業種にもうちは精通しとるからな」

 こういう業種ってどういう業種ですか。人を侮辱し続けるお仕事は本当に需要があるのですか? そう考えているのも束の間、ディーナさんは小太りの男子に面と向かう。

「どうして私の気持ちがわかんないのよ! この豚野郎!」

 ……………なにこれ。ディーナさんが突然変異。

 怒りっぽい部分はそのままだけど何だか萎ゆ萎ゆしい。仕草が女の子――元から女の子だけど――っぽくてなんだか先ほどとは違うじれったさを帯びている。口で言っていることと体で表現していることにギャップがあるが、要するにこうすればいいと言うことなのだろうか?

 このようにすれば小太りな男子も嬉しがる、はずなのだが、その男子の雲息が怪しい。

 そして開口一言。

「ガキに言われても、何とも思わないんだけどな……若干むかつくし」

 ブチィ!

 とんでもない破砕音が間近で聞こえた気がした。

「誰が餓鬼じゃこりゃ!」

 どこから取り出したのか、ディーナさんは闘技大会でも見たどでかハンマーを振りかぶり小太りな男子に襲い掛かった。

 突然の出来事に列をなしていた男子たちが一斉に退き、小太りな男子も逃げようとした。けど、見た目通り――基、運動神経が悪かったみたいでディーナさんの追撃を避けることはできず、あっという間に襟元を掴まれた。そしてハンマーを一振り、その腹に太鼓、或いは餅の如く打ち付けられた。

「うちはドワーフの中でも結構イケてる方じゃい! そりゃもうボインボインのバインバインの部類や!」

 ドワーフの価値観がまたブレ、少しばかし哀愁が漂った。直滑降をぎりぎり止めた丘陵が上位クラスなら平均、果てはキリなどどうなるのだろうか。マイナスという人智を超えた域に達しているのだろうか?

 ってそんなこと考えている場合ではなかった! 小太りの男子がみるみる潰れ、スリムを超えて煎餅みたいになっている!

「わー! ディーナさんやりすぎです! わかりましたから! 言いますから!」

「今はそれどころじゃないねん! これは女としての決着や!」

 頭に血が大沸騰。全く取り合ってくれない。こうなったらあれしかないか。

 自分の小銭入れから100マニー硬貨を取り出す。そして遠くに、

 チャリーン

「お金⁉」

 音速の最大速度で届いた音を感知し、ディーナは先ほどの出来事など忘れ、床を這いずり探しまくる。可愛らしいパンツが丸見えなのだがいいのか?

「あ、あの。大丈夫ですか?」

 ディーナさんが遠ざかった後、私は煎餅男子となった小太りな男子に声をかける。

「お、お願いします……豚野……豚野郎って……」

 無理がある。今の状況からしても、見た目からしても。

 どこから声が、空気が出ているのか、吐息か鼻息かわからない呼吸音が聞こえる。

 逝き行く危険に苛まれた男子の願い、手向けという言葉はネクロマンサーに似合わないが、せめてもの思い出に私は今までに唱えたことの無い禁忌を言い放つ。

「わ、わかりました。…………この煎べ、基! この豚野郎がー‼」

 ポーンッ!

 その一言が何の力になったのか、煎餅男子は風船のごとく膨らみ、小太りを軽々高跳びし風船男子になった。

「ありがとぉぉぉぉぉー! ござぁぁぁぁぁいましたぁぁぁぁぁー!」


 〝拝啓 父上、母上へ

 空飛ぶ人間が本当にいました。投げるとか、飛ばされるとかそんな次元ではない人間が〟


 風船男子はそのまま窓から外へと飛び出し、宙へと舞い上がっていった。

「いやぁ。あんさんやっぱすごいわ。まさか一人の男子を救済してまうとはなー」

「暢気なこと言わないで下さいよ! レスキュー! レスキュー!」

「大丈夫や。彼は夢を叶えたんや。未練を残していた彼は今、舞い上がるプシュケへと変わりつつあるんや」

「勝手に殺さないでください!」

 窓から顔をだし、既に点になりつつある風船男子を見上げて囁くディーナのカタルシス的な表現にツッコむ。

「ディーナ。贈り物を入れる段ボールいっぱいだ」

 そこに現れたのは私やディーナさんとは対照的な高身長でモデル体型のエルフ。制服姿でもその凛々しさは変わらない。

「もうかいな。んじゃ新しい段ボール調達してくれへんか?」

「わかった」

「アーチェさんまで働かせているんですか……」

 昨日の闘技大会にも参戦していたアーチェさんであるが、今回は荷物の整理に精を出している。もしや私と同じで不平等条約を締結されているのだろうか?

「給料が出るから働いている」

「……そうですか」

 契約済みでした。

 話しが途切れたことを察し、アーチェさんは何かを探しに廊下をすたすた歩いて行った。

 それを見送っていると、アーチェさんとは真逆、こちらに走ってくる人物が一名。遠くから見てもわかる忌々しき修道着。金の長髪、ついでに修道着胸部に描かれた十字架の内側にある物も大きく揺らして駆け寄ってくるのはカトリナさんである。

「ディーナさんどういうわけですか!」

 カトリナさんは着くや否や大声で怒鳴った。

「どうも何もってアイドル活動の初歩、握手会に決まっとるやろ?」

「そういうことじゃありません! なぜメリアスさんがアイドル活動しているのかと聞いているのです! 朝のお勤めから戻ってきてみたら玄関口の掲示板にメリアスさんの可愛らしいポスターが出ていてびっくりしましたよ!」

 そのポスターは朝一番にディーナさんが手配したものらしく、つまりこのイベントは偶発的なイベントである。それにも関わらずこれだけの人数が集まったのだからこの学園の男子たち――恐らく美少女部の人たち――は異常としか思えない。

「全く! メリアスさんも断っていいのですよ? クリスさんやディーナさんは融通が利かないところがあります。もし断りきれなかったら教師や王宮審問官に話してもいいのですから」

 確かにそうである。出すとこに出せば私立ナンデモ学園、学園法第一条。『己のやるべき道を突き進め』など問答無用で押し通して止めることができるだろう。だが、

「残念やけど、今回のことは既に調印済みやからな。ほれ、これが契約書や」

 ディーナさんが鞄から出して見せたのは紛れもない契約書であった。そこには私の直筆サインと右人差し指の指紋が残されている。つまりは相互同意なのだ。表向きは。

 そこがクリスさんとは違う点である。そういえば今日はクリスさんの姿が見えないが、一体どこにいるのだろうか?

「それでもディーナさんのことなら何か割の悪い条件を突き付けられた可能性だってあります! 一度洗いざらい調べさせてもらいましょうか?」

 ディーナさんの負をとことんついて、私のために真摯に働いてくれるカトリナさん。その姿がとても嬉しかった。でも聖職者なんだよね。

「なぁ、カトリナはんは確か歌上手やったな? 聖歌隊でもかなりの実力持ち見たいやったからな」

 それを聞いたディーナさんは怒ることもなく、別の話をしだした。

「話を反らさないでください!」

「反らしてなんかないで。ただ単にボイストレーナーが必要だったなって話や。そいでカトリナはんならうってつけやないかと思ってな」

 ボイストレーナー? 聞きなれない単語に戸惑う。

「ボイストレーナー? 歌の先生ですか?」

 それをカトリナがわかりやすく聞き直してくれた。

「なんか幼児に教えるみたいやけど……まぁそれでも変わらんか」

「馬鹿にしましたね」

「アイドルになるからには歌は必須やからな。とはいえメリアスはんがどこまで歌えるかわからんからな。できれば上手い人に付いて貰ったほうがええからな」

 私の反論は無視された。

「ちょっと待ってください! 私はまだメリアスさんのアイドル活動に賛成したわけではありません! なのに話を先に進ませないでください!」

「ふ~ん。ええんかな? 絶好の機会やで?」

 ディーナさんが不敵な笑みを浮かべる。何か考え付いたのか、元々その考えだったのか。

「ボイストレーナーになればつまりアイドルとマンツーマンや。歌いやすいように体操着に着替えたアイドルが必至に汗流して頑張っている姿を時に褒め、時に怒り、飴と鞭を使い分けともに喜びを分かち合う特等席や!」

「分かち合う……メリアスさんと……」

 困惑の声をあげるカトリナさんであるが、その眼だけは私を直視し爛々と光っている。怖い。相性云々とか関係なしに、ただただ単純に怖い。

「歌が上達すれば、次はダンスやな。ぎこちなくも必死に頑張るアイドルと一緒に踊り、時には手を差し伸べ教えてやるんや。まさに手取り足取りや!」

 ディーナさんがきめの一押しとばかりに語尾を強める。そして、

「ブーッ!」

「わぁー! カトリナさん鼻血! 鼻血がすごいことに!」

 突如カトリナさんの鼻から鼻血大噴射。廊下に倒れこんだカトリナさんだったけどその顔は苦しむどころか、至福の時を迎えたかのような顔をしている。

「手、取り、足……取り。メリアスさんと……フフ……フフフ」

「やばいよ! この状況やばいよ! 衛生兵! えいせいへーい!」

 すぐさまカトリナさんの横に駆けつけるが、私にできることはネクロマンシー位であり、カトリナさんはまだ死んでいない。固まることを知らず、次々と小川のように流れ出る鼻血は止まらず、首のラインから廊下に垂れていく。もうこのまま出血多量で命落とすのではないかと思った。

「はっ!」

「ひっ!」

 突然起き上がったことに死者が起き上がることにも恐れない私が恐怖した。

「こうしてはいられませんは……。今すぐダンスのレッスンを受けなければ……メリアスさんに手取り足取り出来るまでに……ふふふ」

 未だに流れる鼻血のことなどお構いなしに、来た道を血の線を描きながら歩いて行った。

「……ここまで来ると流石いうか引くわ……。あんさんが来てくれてよかったわ。そうやなかったら何かの因果でうちがターゲットにされてたかもしれんからな」

「あれは一体何なんですか?」

「今は知らんほうがええかもな……まぁ百合とだけ教えておくわ」

「ユリ……ですか?」

 白い綺麗な花だということは知っているが、それがカトリナさん、鼻血と何の結びつきがあるのか私には理解できなかった。

「あのー。そろそろ僕の番進めてもらってもいいですか?」

 そこへ最前列にいた男子生徒が尋ねた。豚から始まり餓鬼、煎餅、風船、段ボール、聖職者、鼻血、百合と訳のわからない連鎖ですっかり忘れていたが、まだ握手会は五十一人しか終わっていない。いや、結構終わったほうなのか?

「お~、すまへんすまへん。んじゃ続きはやめにいくで」

 そういって急かすように私を椅子に座らせ、前の少し痩せた――いや、これが普通なのだろうか? とりあえず男子と握手する。そして男子はすぐさま1000マニー札を出した。この行動。すなわち何かのオプションを要求することである。

 先ほどは異常な行動で私を困惑に貶めたが、次は一体何を要求されるのか。下世話なことでなければいいけど。

「時間無いからはよう済むことでな?」

「わかっています。僕を――ぶん殴ってください!」


 〝拝啓 父上、母上へ

 後で知ったことなのですが、この世界にはMという新人種がいるそうです〟


「もうちょい追加必要やな? 2000マニー位でどうや?」

「増やさないでください! て、すぐさま出さないでください!」

 明らかに損な役割なのに、ディーナさんは更にお金を要求し、男子はそれにすぐさま応えた。

「おーい! お前たち何してるんだ! HR始まるんだぞ! 各自の教室に戻れ!」

 そこに大きな怒声。いつの間にかHRの時間が来ていたようだ。

「うへ! もうかいな! 流石に授業中の行為はご法度やから戻らなあかへん! 解散! 今朝の部はこれで解散や! 後のことは追って報告す!」

「えー」「登校してすぐ並んだのに」など、愚痴が飛び交う中で、ディーナさんは机と椅子を廊下の片隅に通行の邪魔にならないように除け、プレゼント類でいっぱいになった段ボールをそれなりの重量があるはずなのに軽々と持ち上げる。ちゃっかり未使用の2000マニーも回収済み。

「そいじゃ昼になったらまた行くな! 流石に休み時間じゃ短すぎるしいな」

 そう言い残し、ディーナさんはすさまじい勢いで去って行った。

 列を成していた男子たちもそれぞれの教室へ向かって散っていく。

 一時間近い戦いが終わった。

「あのぉー」

 そう思っていたとき1人の男子が話しかけてきた。

「昼にまたやるみたいに言っていましたけど、僕、昼に用事があるんですよ。なので、もしよろしければ、握手してもらえませんか?」

 真面目そうな感じの人で、一言断りを入れてから私に相談を持ちかけてきた。

「あ、そうだったんですか……。それくらいなら」

 と私は握手をすると「ありがとうございます!」と一礼して去って行った。礼儀正しく、一般的な人もいるのだと思った。

「あ! いいな! 俺もお願いします!」

「え、あ」

 それを見ていたほかの男子が強引に手を掴み握手をしてきた。強引な人だな。

「あ。俺も、俺も」

 馴れ馴れしく手を掴んで握手された。もちろん顔見知りではない。

「ぼ、僕もうえほうえっほ!」

 完全に病気ですよねこの人! そんな状況で並ばないで保健室に行ってください! かわいそうなので握手をしてあげた。病気移らなければいいな。

「メリアスちゃん」

「はい……。もうすぐHR始まるから手早く――」

「おっぱい揉ませてー!」

「ひぃぃー!」

 出た下世話人間! しかもいきなり飛びかかって、いやぁぁぁぁぁー!

「んげふっ!」

 私の胸部までもうすぐといったところで男が呻き声をあげ、垂直落下。その頭部には大剣の鞘が。

「この学園は変質者の温床というのは、あながち間違ってないかもしれないわね……」

 溜息を吐いてそう答えたのは私が今恐らく頼れる存在。

「クリスさ~ん!」

 私は泣きながら大剣の持ち主クリスさんの胸に飛び込んだ。

「はぁ……本当にごめんね。まさかこんな状況になるとは」

 クリスさんが私の頭を撫でる。あぁ、今じゃ味方はこの人だけかもしれない。

「おーい! そこの数人早く教室に入れ!」

「うわ、時間取っちゃったかな。それじゃあたしもいくね。後――本当にごめん!」

 もう一度謝ってクリスさんは去って行った。

「ほらそこの紫色の髪の女子! ――君は、えっと……」

「す、すみません! 今行きます!」

 昨日の事件があったにも関わらず、私の名前を出しかねる教師。教師陣にもばれていないのか、それともディーナさんが言っていた何らかの策で上からの圧がかかっているのか? その理由はわからない。

 今私が考えるべきことはHRの言い訳だけだった。


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